それでもアスラン愛してる!!?     Happy Birthday Athrun 2009企画様献上SS

サプライズは、お好き?



<第2話 アスラン・ザラの場合>

 人生何事もなく至極無難に過ごしてきた彼にとって、その日の出来事は思わず記念日として手帳に書き留めるぐらい、青天の霹靂だった。無難とはいっても、世間の目から見ればやっぱりアスランは羨望の人生ではあるのだが。世間の視線と本人の思いは相反する、なんてことはどこにでも転がっている事実。


 その日の夜、彼は初めてキュンキュンして眠れない夜を経験した。眠ろうと瞳を閉じても脳裏に浮かぶのは歩道を歩く一人の女性の姿。背中まで伸びた髪はうなじ当たりで一括りにされている。色は微かにくすんだ栗色。
 時々その人がオフィスの部屋から見下ろすバス停で、バス待ちをしているのは知っていた。高層ビルの上階からではあまりよく見えなかったから、気にも止めていなかったのだが。







 ただその日だけは違った。外出からの帰り際、運転手にありがとうと返事をしてビルの正面玄関の前に降り立った。なんとなく振り向いたのは本当に偶然だった。

 いつもバスを待っている会社帰りのOL風の女性が目にとまる。その彼女はため息をついて、髪をくくっていた黒いシュシュを外した。わずかに括り跡の付いた栗色の髪がやわらかに背中にかかる。
 可愛い人だなと思い、歩きながら視線が釘付けになっていると、ほんのりぷくっとしたリスのような整った小顔に、澄んだ紫色の瞳が彼の心を一瞬にして占領したのだった。



(チョ〜〜〜〜〜可愛い!!!なんてこったい!俺の好みにストライクフリーダムではないか!!!)



 今までどおりとにかく無難な道を選ぶなら、一目惚れでどうこうということは論外だ。その日産まれて初めて暴風のような感情に振り回され、アスランからたがが外れた。








 そして、春先のいい時期から、慎重には慎重を期して彼女に接近し(怪しまれてはいないと思う)、デートを重ね(てきたと思う)(めでたく)両想いになれたと確信した(計画は完璧のハズだ)


「ヤマトさん。やっぱり俺はあなたが好きです。だから、俺と付き合って欲しい」

 言葉に出すと、それはひどくアスランに自信を持たせ、彼女を愛しいと思う気持ちがますます増す(たぶん錯覚ではない)

「今、他にお付き合いされてる方は?(居たらぶっ飛ばしてやるけど)
「いませんよ」

(いぃぃいやっったぁぁぁぁああぁぁぁぁあああああッ!!!!!)



 ハッキリとした否定の言葉を聞いて、心の中でガッツポーズをした(ここで小躍りでもしたら怪しい人扱いされるくらいは判ってる)。交際を申し込むと彼女はうつむきながら(これがまた可愛いんだ!バシバシバシ!!!)OKしてくれた。



 そして、アスランの計画通り交際は始まった。自宅に帰り「ヒャッホゥ〜!」と身体をクネクネさせて乱舞したことは、内緒の事実だ。








 付き合うにつれて、彼女の可愛い部分しかとにかく目に入らなくて(周囲の人々を気味悪がらせた)。キラさえいればアスランは幸せだった。



 ところがだ。彼女との会社帰りデート(その実半分は思い込み)を重ねていたまさに(アスランだけ)充実した時期だ。(年齢を考えると当たり前の話なのだが)見合い話がどうのという悪い雲行きになったのは。


 アスランは焦った。


 父の持ってくる話なぞ、どうせへのへのもへじの顔をしたとりたてて記憶にも残らない一応性別が女性(偏見)に違いないと(釣書を見もせずに思い込む)





「くそぅ!時間がない。どうすれば良いんだぁ………」

 バインダーをパタパタさせながらしばらく考え。


「ここは……………先手必勝で行くしかない!」

 訳の判らない結論を出し(て一人で悦に入ってい)た。





「……………。ナニやってんだキサマ………」



 にやけ顔に不格好なガッツポーズをしたまま固まっているアスランに、偶然部屋に入ってきたイザークがひたすら目を細めたまま呆れ果てていた。非常に当たり前の感情だ。



「ああやっぱり好きだ」

 ところが(絶賛一人劇場中の)アスランはちっとも気付かない。



「勘弁してくれ!俺は嫌いだ」

 そんなアスランの個人的事情など露ほども知らないイザーク。いや、いかにも変質者みたいなアスランを見て誰が知ろうとするのか、いやいない(反語)



「やっぱり諦めきれない。君の為ならすべてを捨ててもいいッ」
「捨てるのはゴミと、お前の腐れた脳みそだけにしてくれ」


「笑うと花のようだ………」
「花は嫌いではないが、挙動不審の貴様は気持ち悪いだけだ」

 ついでに説明すると、会話は全く噛み合っていない。



「もういっそ俺の全てを明かしてしまいたい…」

 アスランはまだクネクネと悶絶している。
「これ以上知りたくもないわ!気色悪い」



「優しくするから!絶対幸せにするからっっ」



 アラートワードを聞いたイザークは、その場で携帯電話でディアッカを呼び出し、アスランの頭上からバケツの水をひっくり返させた。驚愕してその場にしりもちをつき、怒り出すアスランにディアッカが肩をすくめ、イザークは冷たく言葉を浴びせる。


「どうにもならん火事を消しただけだろうが」

「火事!!?」



「キサマだ!バキャモンがぁあああッッッ!!!!!」





 そしてアスランの奇行と、イザークに殴り飛ばされるセットの光景はだんだん頻繁に見られるようになった。



 ちなみに後でディアッカに「さすがに可哀想だからアスランの寝言に付き合ってやるなよ」と、哀れむように言われた。


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