What are you doing that place!
〜あなたは、オーブで何をしてるんですかッ〜
前編
おぼろげにでも感じられた春も過ぎ、オーブは本格的に暑さの気になる季節に入ろうとしていた。雨季を過ぎてしまえば、この地帯は雨の降らない真夏のような暑さになる。 「しかし…暑いわねぇ。ねぇえ、わざわざこんな時期じゃなくっても、もっと早く来られなかったの?シン」 「仕方ないだろ!プラントだって、戦後処理で大変で…俺たちなんかが簡単にシャトルの予約を取れる状況じゃなかったんだから」 確かに、シャトルの利用に関してはかなり制限が敷かれていた。どうしても国のトップなど政治交渉目的の利用が優先され、民間人の利用やシンのような軍人でも観光目的の利用などは、必然的に後回しにされていた。 シンたちだって、予約して何ヶ月も待って、やっと許可が下りたのだ。実際、乗れるだけありがたい。 「でもぉ!ジュール隊長やエルスマン先輩なんかは、もう何度も地球に行ってるじゃない!」 「ジュール隊長やエルスマン先輩は、政治交渉目的で行ってるんだから、俺たちなんかとは違うだろ!それに、議長が亡くなられて、あのときの最高評議会の人たちはみんな更迭されてて、新体制になったばっかだし。俺たちだって、いろいろ駆け回らされて忙しかったじゃないか」 「いいわよねぇ〜〜〜、大戦の英雄は!」 ルナマリアは口を尖らす。実際に駆けずり回らされた彼女たちには、どうしてもイザークたちが楽をしているように見えるのだ。そんなこと言ったら、ディアッカなどに張り飛ばされていただろうが。 「大戦の英雄だからって、特別待遇されてるわけじゃないじゃないか。現にアスランさんなんて…もう、二度とプラントには戻れないだろうし」 「ま…確かにそれはそうだけどー」 先の大戦の戦犯を被疑者死亡のまま、全て当時のザラ議長に押し付けてしまってるプラントへは、政治的な理由でアスランは二度と戻ることはできない。たとえそこが彼の生誕地であろうが、だ。 現に、相続した全ての財産を持って彼は再び、オーブへ亡命していた。今も、政治の表舞台には出ずにひっそりと隠棲していると聞く。シンには…もう以前のように考えなしに彼を罵倒することはできなかった。 What are you doing that place!! 「〜〜〜!とにかく!俺はもう一度あの人に会わなくちゃならないんだから。ルナはどうする?会いたくなきゃ別にいいけ……」 言い終える前にシンは固まっていた。市内のなんと言うことはないよくあるショッピング・モールの一角に、異常な人だかりができている。 「なんだ?ありゃ…」 「有名人でも来てるのかしら?そういえばラクスさんもオーブに亡命してるって話よね」 「まさか!ラクスさんって事はないと…思うけど…?」 そう言いながら近づいていくと、ビシッバシッと妙な音が聞こえ、間をおかずに男性のうめき声がついてくる。 「キラ!やっぱりネットで頼んだほうが良くないか?」 「アスランは僕にもう愛はないの?」 「そんなことはないがッ!!!」 背後から寄ってくる男をアスランが殴り飛ばし、隣から忍び寄る男の足を引っ掛けて転倒させる。 「僕は大丈夫!だって、こうしてアスランが守ってくれてるもんv」 かわいこぶるキラも負けず劣らず、首をかしげながら頭突きをかまし…右手で男の腹に連続パンチを入れ…同時に左手は別の男の顔面にこぶしをめり込ませている。同時並行で彼女の細い足もフル稼働で、残りの男たちに次々と致命的な蹴りをぶち込んでいた。 カンフー映画顔負けのスタミナで、さすがというべきか、それでも涼しい顔を崩さない。 「アスランさん!?」 シンが思わず声を上げる。しかし…、 「…ってか、ここがどこだかわかってんの?ナニやってんのよあいつら…」 シンの隣でルナマリアが頭を抱えていた。 「ね…アスランはどうなの?どっちも可愛いと思うんだけど…」 「俺は別に…キラさえいればどっちでも……」 「そんないい加減なこと言わないでよぉ!だって、つけるのは僕だけど…その……脱がしてくれるの…アスランでしょv」 上だけを見ればキラは両手に「ある布製品」を持って、卑怯なほどかわいらしく微笑んでいる。 下を見れば、周囲の男どものある一点を狙って、確実に致命傷を与え続けていた。 悶絶する男たち…ちなみに彼らが一様にかばっている部分を見れば、何があったのか一目瞭然だ。 「俺は、薄い橙色も可愛いと思うけど…」 「うん。僕もそう思うけど…ラクスがね、インナーから透けて見えるのも色っぽく見えるって教えてくれたんだ」 「ラクスが?」 「この間、僕と見せあいっこしてて…僕はラクスほど育ってないから、ちょっと恥ずかしかったけど…」 げしっ! 一人…床に昏倒する。 ばこここっ!! そしてまた一人…確実に気絶者が増えてゆく。重なり合ったシカバネたちを上手にバリケードにしながら、二人は相変わらず涼しい顔で真剣に話していた。 「キラは…大きいほうがいいの?」 「当たり前だよぅ。マリューさんほどはいらないけどラクスくらいは欲しいよ」 「判ったよvキラのは俺が大っ事に育ててあげるから、ねv」 シンは目の前の光景に絶句し…これだけは言うまいと決意していたセリフを、再び口にすることになった。 “What are you doing here?”(あなたはそこで何をしているんです!) ほとんど絶叫に近い形で、シンはこの言葉を口にする。一番に気づいたのはアスランだった。 「シンっ!」 「ぇ…」 続いてキラも気づく。そして、キラが両手に持っている値札のついたそれを見て、ルナマリアが頬を染めた。 「際ど…」 いや、確かにキラたちが今いる場所を考えれば、それは決して不自然な光景ではなかった。 ここはいわゆるランジェリーショップで、キラが無邪気に可愛い顔をして選んでいるのは、ブラジャーだったのだから。それを彼氏と一緒に選んでいる。 普通なら、それはなんということもない光景だった。一方が先の大戦の英雄アスラン・ザラでさえなければ。 「ね、アスラン?知ってる人?」 「え、ああ…まぁ、キラも知ってる人……かな?」 「じゃぁ、悩んでる暇ないね」 後編へ→ wWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwWwW 言い訳v:久しぶりの本編筋のお話しですが、怖いですね〜〜〜。『種です』第51話観てないので、おっそろしいことも書ける書ける……笑って許してください〜。 次回予告:アス×キラバカップル<シン×ルナ!?ちょびっと大人になったシン・アスカでお送りします(?) |
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