What are you doing that place!
〜あなたは、オーブで何をしてるんですかッ〜

 

後編



 キラの背後で復活した男の一人が再び轟沈する。同時にアスランの手足も忙しさを増していた。釣られてシンやルナマリアも援護をせざるを得なくなってくる。

 ところが殴っても蹴倒しても、男たちは猛然とキラに群がる。対処療法に徹するしかない人たちと、阿鼻叫喚のコントラストが痛い。



「とにかく!アスランさん!これはいったいなんなんですか!キリがありませんよッ」


「仕方ないだろ!キラと一緒に買い物に行くとっ、どっちみちこうなるんだからッ」

「いつもネットでなんてやだよ!僕だってちゃんとお買い物したいもん」


 げしこ!


 ドガガガッ!



「そうだよな、キラ。判ってるよ。また今度も一緒に買い物に来ようなv」



 めこ!



「うんっ!アスラン大好き〜vまたおいしいもの食べに行きたいね〜〜」



 バキィッ!!!



「キラ、思い切って両方買おっか!上下おそろいでv」

「ぇっ」


「俺…両方見てみたいから。それと、この後シンと…彼らと少し一緒に話してもいいかな?」


 バシッ!


「いいよ。なんか、僕も知ってる人みたいだから、僕も知りたい」





 周りで、早くもシンとルナマリアの息が上がっていた。


「…ってか、はぁはぁっ…なんであなたたちは平気なんですっ」

「はぁはぁはぁ〜っ…どうでも、いいけど、すごいスタミナねぇ…はぁっ…彼女も……」





 結局道すがらもずっとこんな感じだった。仕方ないので、市内の高級中華料理店に入り、個室を斡旋してもらった。これでとりあえず、「余計な闖入者」は入ってこない。



「結局っ、なんなんですかあの男どもは!」


「キラに…彼女に群がってくるんだ。追い払うしか、ないだろう?」

「僕は、アスランさえいればどこでもいいんだよ。気にしてないし、それにアスランが僕を全力で守ってくれるから、僕は安心なんだv」



(…っつーか、アンタが一番男どもをノしてたんじゃん……)



 声に出せないシン、ルナマリア共通の思い。





「…でアスラン。この人たちと僕が知り合いって、どういうこと?」

 小龍包を口にしながらキラが問う。最高に可愛い笑顔が、卑怯なほど小面憎い。


「あ、うん。彼女がルナマリア・ホーク…インパルスのパイロットで、彼がシン・アスカ…デスティニーのパイロットだよ」


 アスランも余裕でイカシュウマイをほおばっている。



「ち…ちょっと、アスランさん!それは軍事機「あ!そうだったのぉ!この子だったの〜僕を墜としたの」


 シンの焦りをふさぐキラの何気ない爆弾発言。笑顔が黒く見えるのは気のせいだろうか?

「ぇ…っ」


「ヒン、ヒヒにもにっておはなへれははらないら「アスラン〜、わかんないからちゃんと食べ終わってから言いなよ!」

※アスラン語・訳:「シン、キラにも言っておかなければならないな」



「あ…もごっ、うん。彼女がキラ・ヤマト…先の大戦でストライク、フリーダムに乗り、今回もストライクフリーダムに搭乗したオーブのパイロットだ」


「え?生きてたの?あの状況で!?」



「俺も、そう思ってた…ってか幽霊じゃない…ゃ、それよりも……女の子…」


「仕方なかったじゃん。僕たち…お互いのこと何にも知らなかったわけだし」



「俺…女の子、墜としてたの……?」

「シン君…だっけ?仕方ないよ。あの時は僕だって不安だったし、アスランとだって連絡取れなかったんだし」


 ね?とキラがシンのほうを向き、笑顔で肩に両手を置く。するとアスランが間に割って入るかのように腕を伸ばしかけ、途中でぴたりと止まって震えだした。



「キラ…蹴ること……ないだろ」


「でも…」

 シンの視線がキラとアスランとの間で揺れる。こういう場合、どうすればいいんだろう?と。





「僕も…君だってぎりぎりだったんだ。みんな精一杯で…バルトフェルドさんが言ってた。戦争の中だったから、相手を撃つ理由なんて誰にだってあるし、誰にだってないって」


「キラさんっ」



 シンは感極まってキラの腕に手を添える。その瞬間、復活しかけたアスランがもんどりうって床にうずくまった。声も出ないほどに震えている、それはまさに悶絶!





「何してるんですか?アスランさん…」


 床を覗き込んだルナマリアが一瞬にして、事態を悟る。確かに…そこは……痛い!生きているのが不思議なくらいだ。



「ィ…ラ、アァア……ァ…ァァア………」



 アスランの目の前でキラとシンが微笑を浮かべながら話している。そんなキラの微笑が、憎たらしいほど可愛らしい。

 そしてそれからというもの、シンがキラに触るたびに、アスランが止めに入ろうとして、寸前でキラの攻撃に撃沈する姿がひたすら確認された。


 ちなみになぜかと聞くと、

「判るけど!君の気持ちもわかるけどっ僕の邪魔をしないでアスラン」

 だそうで、シンは心底アスランに同情し、二度と彼を難詰してはならないことを自覚した。





「キラ…俺はキラのこと、好きだから…」

「僕だって大好きだよ!アスランのこと、ちゃんと愛してるから心配しないでって何度言ったらわかるの?」


「でも、心配なんだよ。俺たち戦争によって何度も離れ離れになったから」

「だから…もう二度と離れないんじゃん。僕のことも…ちゃんと信じてv」





 そんな摩訶不思議な会話が交わされた2日後。プラントへ帰るシャトルの中、シンとルナマリアは自分たちが今まで見た来たことはすっかり忘れて、これから前向きに生きていこうと言い合った。



「バカップルよね、あの二人…」


「キラさんだって、レイから聞いてたイメージと全然違ってたし」



 第二次大戦終結前、レイはシンにだけ打ち明けていたのであった。キラは、人類の叡智の限りを尽くした史上最高のコーディネイターなのだと…。

 そして二人はその最高傑作を目の当たりにしてきたばかりだった。





「何度も戦争によって離れ離れになったとはいっても…」


 あらぬ方角を見つめ、ルナマリアが言いよどむ。



「俺…もうあの人に何してるのか、なんて言えないよ。すごく…大変そうだ」

「…というより、あんな仕打ち受けてアスラン…気づいてないよね……」



「惚れ込んでるからじゃないのかな…?俺は…ルナでよかったと思うけど……」



「良かったじゃない!シンは、マゾじゃないんだから…」

「…………………」





 シン・アスカ…微妙な大人の恋を学んだ夏だった。


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言い訳v:お粗末でした〜。アスも黒、キラも黒でも天然黒カップルと、名ゼリフを書きたかっただけなのかも知れません。おつきあいいただきありがとうございました。
 ちなみに中華は単なる好みですvみんなで会話の雰囲気に全く合わない点心(=中華のおやつ)を食べていると思ってください(笑)

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