twelve*twelve

<第1章>傾国の新王


第8話

 

 レイはデュランダルを痛いほど真摯に見つめる。

 だから端から見ればホモの烙印を押されるわけだが、そんなことはこのまじめな場面ではスルーが常識だから指摘はするが公言は止めておく、以上駄文作者の余計な戯言。



「その為の、いわばヒントなのだよ。私のかいなに捕らえたからには、離すわけには行かない。どれだけ時間をかけてもいい。彼女の秘密と知識を全て暴くんだ」

「それが解れば、この国は俺とギルの望む最高の国になる…そうですね」


 傾国の新たなる王は、その存在を羨む国の王の手によって捕らえられていた。





 目の前の敵を猛烈な(色恋の欲望による)勢いで片づけ、主君であるキラに再会すべく猛ダッシュで本国に戻ったアスランは、主君と国の至宝の両方が行方不明であることを知り愕然とした。
 自動プログラムを組んでキラの手を使って追認しておいたが、どこでどう間違ったのかストライクフリーダム(※傾国の至宝だが、そんなものアスランにとってはどうでもいい)と、キラと呼ばれる愛くるしいツンデレ少女(※彼女の人格にかかわらず熱烈希望中)の姿は国の誰もが見ていないと言う。



「ぁ…あ、あ………キラァアアアァァァァアアアアァァァアアアアアアアアアッ!!!!!」



 毎度ながらのアスランの鬱陶しい絶叫が傾国中に響きわたる。

<うるさいですぞ!>
<耳に響く!叫ぶな>
<やかましい!無音で絶叫しろ>


 国の半身であるはずのキリンは、重臣たちに何の遠慮もなく頭を次から次にはたかれた。


「何をする!頭がバカになるじゃないか!」
「もともとバカなんだから大丈夫です!叩いたら、反動で賢くなれるかも知れませんぞ」

「バカにするなっ!」

 アスランとてキリンだ。キリンとしての能力は存分に備わっている。
 ちなみに余計なところも三拍子揃っていると自負している。重臣たちからは考えられないほどくだらないプライドが彼にはあった。


 しかし、それはアッサリ逆襲されトドメを刺されることになる。
「どっちみちバカなんだから!それはしょうがないだろ!!!!!」

「……ぐっ………」


「どこの国にココまで色ボケのキリンが居る!!?」
「女ひでりにわめき散らす迷惑なキリンなど見たこともないわ!恥ずかしすぎて国外に出せるか!」





 とにかく新しい王は見つかった。
 この世界にいることは確からしい。


 それだけでも多大な成果であった。これで、いささかなりともこの荒れた国は元に戻る。もとの豊かな国へ。

 重臣たちは一安心し、アホキリンに告げた。


「とにかく、我らが主の居場所は判りますな?」

 主君はキリンのみが見つけられる。その基本的な事実(設定)に重臣たちは縋った。


「……判らない。この世界のどこかにいることは確かなんだが……」



 長い沈黙が走った。

「やっぱりうちのキリンはバカだ」

 そして出た当然の結論。
「大バカだな」

「……うぅうっうるさいっ」


「まぁいい。とにかくバカはほっといて、機体をレーダーで確認するんだ」

 アスランの当てにならない直感より、現実的な計器に重臣たちは主眼をおいた。とにかく、ストライクフリーダムの場所さえ判れば、犯人もその居場所もある程度特定するのだから。大きなMSだ。隠せる場所は、限られてくる。





 報告があったのはそれからしばらくしてからだった。

「エマージェンシーシグナルを確認」


 もはや役立たずのキリンを完全に視界の外に押しやり、重臣たちはレーダーに釘付けになっていた。
「ストライクフリーダムか?」
「機体シグナルはX−20A!ストライクフリーダムです!間違いなく我が国の至宝ですっ」

「でかした!さすがに文明の利器はキリンより遥かに役に立つ」


 重臣は余計な一言を付け加えることも忘れない。よほど今まで新たな王を見つけられなかったアスランにご立腹のようだ。


「して…場所は?」



 その場所がかなり問題だった。
「これ…はッ!!!メサイアです!恋う国のメサイアですっ」


「何ッ!!?」

 重臣一同に衝撃が走った。
 恋う国というと、何を考えているか判らないと評判の王ギルバート・デュランダルと、彼の無二の腹心でキリンのレイ・ザ・バレルが統治する国だ。メサイアはその首都。



「くそ…。やっかいなところに……」
「どこかに監禁……されているのか…?」

 この世界にいる以上、どれだけアホでも役立たずでも女狂いでもキリンに主君が判らないわけはない。それが判らないと言うのだ。
 デュランダルの息のかかったところで、何らかの結界でも張られていると考えた方がいい。重臣たちに思い当たる可能性と言えば、おそらく宮殿内だろう。

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いいわけ:名言、名シーンを散りばめられるのも、楽しい限りでした。
次回予告:言わずとも解れ?あーそんなのムリムリ


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