twelve*twelve
<第1章>傾国の新王
第7話
自分がまだ生きていることに気づき、不思議な感じに囚われながらキラは瞳を開けた。 「何?またザク?」 全方位モニターを見ながらキラはウンザリする。しかしアスランの反応は違った。 「あれはっ!ZGMF−X666S、レジェンド!何故あんなものがここにっ」 「もうなんでもいいよっ。とにかく何とかしてぇっ」 キラのヤケをアスランは真に受けた。 「判りました。私とインフィニットジャスティスで何とかします。あなたはこの機体のナビゲーションで一刻も早く本国へお向かい下さい!私も後から必ず追いつきます」 高度のある空中にもかかわらずコックピットから飛び出していく変態。もう二度と目の前に現れるなと本音をつぶやきながら、キラは呆然と見送るしかなかった。 「ちょ…ちょっとっ」 変態が自ら去るのは嬉しいが、キラの常識ではコレでは飛び降りと変わらない。今日、寝られることがあるとすれば、さすがに夢見が悪くなりそうだ。 すぐに、ハッチが閉まったのでモニターを見ると先ほどのジャスティスによく似た機体が、こちらに向かって投げキスを送り手を振っていた。 キラは得心した。 「あ〜〜〜あそこか………」 生身の人間(に、キラには見える)が、どうやってあんな離れたところに移動できるのかよく解らないが、とにかく危難は自ら去ったのだから、終わりよければ全てよし…だとりあえず。 とにかく背中に密着していた変態は去った! もう、腰にヘンな感触がすることもない! ひとまず安堵の溜息をついたら、機体が加速するのを感じた。 「あれ?勝手に動いてる…?このまま本国とかに向かうのかな?」 計器を見ながらパネルを動かすと、案外簡単に動いた。すこし弄っていると大体のシステムが飲み込めてきたので、ナビゲーション・モジュールを呼び出したら、やはりとある国に向かっている途中だった。 「一体何なんだ、まったく…」 一応指定の場所について、着地するまでが一通りプログラムされている。 ここがどこかも不明な以上とりあえずそのナビに任せる以外に方法がなかった。大体海に真っ逆様に突っ込んでいったのに、また海の上に出ている。通常では考えられない異常事態の連続に、身体も脳も疲れないわけがない。キラはそのままシート上でうとうとした。 轟音と異常な衝撃に目を覚ましたのはどれほど経ってからか。実のところよく判らない。外部から無理矢理ハッチを開けられ、びっくりしていると金髪の少年に痛いほどの視線で見つめられていた。その少年もコスプレ少年に見えた。キラは瞬時に自分の身体を守ろうとする。 「あ…あなたも………僕の身体を狙う変態なんですか?いい加減にしてください。僕…男の人に襲われる趣味なんかないですよ!」 彼は無言でキラに手を差し出す。 (この人もむっつりホモだ!) それに恐怖しキラはコックピットのシートで身をすくめた。 「大丈夫です。御身に傷ひとつつけないことを約束します」 言動を見る限りこの少年は一見誠実そうだ。けれども先ほどの<アスラン事件>以来すっかり人を警戒するということを覚えたキラには、その彼も新たなる変態にしか見えなかった。 「嫌です!こんな…こんな形でカマを掘られるなんて!みんな最初だけ優しくするって言うけど、絶対嘘です!おぉおお尻だけでも絶対死守しますからねっ」 キラは半泣き状態だった。しかし目の前の金髪コスプレもしかしたらコイツもホモかもしれない可能性付少年は冷静で(アスランよりはかなり)紳士的に見えた。 「では出来るだけ触れないようにします。それならここから出て頂けますか?女王陛下」 キラは思った。何かが違う、と。 彼はどこをどう見間違えているのだろうか? 自分は男で、髪も短く胸もぺったんこ。小さいものの、一応付いている。 昔はよく女の子に間違えられてきたが、18歳ともなるとそれもなくなってきたのだ。 「何を言ってるんです!僕はおと……………!!!!!」 それきり声にならなかった。キラは自分自身に驚愕し、再び気を失ってしまう。 その隙に金髪の美少年はキラの身体を優しく抱え、連れだし、とある宮殿内の豪華な一室の天蓋付のベッドに寝かせた。無論、キラには無許可で女官たちに命じて服を着替えさせて。 彼は部屋のベッドでキラが寝ていることを確認し、扉の前にBB戦士ブレイズザクファントムを見張りに立たせておいた。 あ、そうそう、ちなみに彼のいたストライクフリーダムも持ち帰り、宮殿内のMSハンガーに収容したことをつけ加えておく。 程なくして少年は彼の主君の元でいささか不安げな表情をしていた。 「ギル…本当にこれで良いんでしょうか?」 彼の主君はギルバート・デュランダル。恋う国の国王だ。くどいかも知れないがこれもタイプミスではない。同音異義語に「広告」とか「抗告」とかあるが、関係はない書いてみたかっただけ。 「よくやったな、レイ」 ギルバートはレイの頭を撫でた。ついでに彼の頬に軽くキスを贈るとレイは目に見えて真っ赤になった。 キラの知らないところで、ここにも変態主従がいた。 「キラ・ヤマト。やはり特別な存在なのだ。事実彼は男から女に変わった。彼女は変幻自在なのだ。この世界以外の世界のこともよく知っている。その秘密是が非でも我が手に欲しいものだ。彼女の持つ秘密と知識を吸収することで、この国はこの世界で最も富める国の一つになる。お前も私と一緒にこの国を豊かで誰もが幸せと感じる国にしたい、そう言っていただろう」 「はい、ギル…」 |
いいわけ:キラを狙う人に心当たりを考えたときに、これほど適任の人はいませんでした。
次回予告:そして出た当然の結論
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