twelve*twelve
<第1章>傾国の新王
第6話
「ちょっ!離して下さい!…ってかどいて下さい!」 「今ここからどいたらあなたは確実に逃げ出すでしょう!」 そうだ。キラは間違いなく逃げ出す。シートにアスラン、そのアスランの太ももの上にキラは強制的に座らされているのだから。 そして新たなる問題も発生していた。下から感じるビミョ〜な生暖かさとやたらな圧力。 「今すぐにでも逃げ出したいよ!ホモ野郎!ってかその前に腰になんか当たってチョ〜気持ち悪い!!!」 ……………当たっているらしい。 「今はそれどころじゃありません。ストライクフリーダム起動、行きます!」 「アナタの場合、イきますの間違いだろーーーッ」 「いったいどこが違うんですか?」 行くとイくでは発音が全く同じだと言うことに、奇しくもキラは気づけなかった。 「合ってるのかぁあああ!!!!!」 キラの絶叫は、コックピット以外の誰の耳にも入らなかった。 そしてザク軍団をイージスとジャスティスで足止めしつつ、単機ストライクフリーダムはとっとと学校を離れ海の真上に来ていた。 「ここは?どこなんですか?」 事が大きくなりすぎてさすがに不安に駆られる。 「太平洋の真上です」 「僕は、どうなるんですか?こんな海の真上で車中プレイなんて嫌です」 「大丈夫です。ここにいれば、危険なことはありませんから」 「あなたが一番危険だと思う…」 キラはさめざめと泣く。 そうだ。こんなものを持ち出して、ばかでかい割にはどう考えても定員1名のこの空間に現在無理矢理2名。しかも体勢が体勢だ。 さらにキラが腰に感じる不快感は未だに解消されていない。 余計なことだがとんでもない持続力だ。 「私の側にいることが一番の安心です」 キラはさらに混乱し涙した。 (母さん、父さん………僕は童貞を捨てることすらままならずに、貞操を奪われることになりそうです。ゴメンナサイ………) 「泣かないでください。あなたにそんな顔はさせたくない」 「だったらここから出してよっ!みんなのところへ帰らせてよ」 「残念ですが、それはもう叶いません。キラさま…とおっしゃいましたね」 自分の名前の部分だけは、キラは素直にこくりと頷いた。 「すてきな名前です。可憐であなたにとてもよく似合っている」 「……………」 慰めの言葉もキラには気持ち悪いだけだ。顔?もちろん蒼白だ。 「これからはこの私が付いています。私なら自信を持ってあなたをお慰めできます。だからもう泣かないで」 慰めるってナンデスカー!? 「寂しいなら昼も夜も側にいてあげる」 「…………………(要らないよ…)」 キラは感傷に浸っているような心の余裕はなかった。この変態に捕まっている、ということともう二度とみんなのところに帰れない、と告げられたことは彼にとって最大のショックだったからだ。ちなみに未だお尻に感じる衰えないなま暖かい圧力。だから、背後にいるアスランの胸の高まりと鼻息の荒さはキラには判らなかった。 「イきます!」 「…ぇえっ!!!?ちょ…ッ!どこへ……ッ?」 海の上にできた巨大な渦潮の中にストライクフリーダムは突っ込んでいった。 都合の悪いことに全方位モニターのせいで、その映像は恐怖以外のなにものでもない。キラはやっぱり騙されたんだと思った。 いきなり現れた男に嘘八百を並べられ、騙され、逃げる隙もほとんどないままこんな狭い空間へ押しやられ、そして今かなりの高度から海中へ猛スピードで突っ込んでゆく。 その先に待ち受ける運命は判るつもりだが、納得したくなかった。 「こんなところで…僕………まだ18年しか生きてないのに………」 「大丈夫です。御年はそのまま止まります。もう成長することも老化することもありませんから」 真後ろのアスランの発言が更に恐怖をあおる。 それって…、それって………つまり……。 「死にたくない……っ。死にたく…ない………よぉ…!!!!!」 「大丈夫です、もう死ぬこともありません。あなたは私と一緒に永遠に生き続けられる」 アスランの発言の真意は、今まさにキラには真逆にしか受け取れなかった。いやこの場合どう考えてもそうだろう。というか言葉の足りなさすぎるアスランが悪いのだ一方的に。 キラは最期を覚悟し、涙腺を大爆発させながら来るべき時に備えて目を固く閉じた。 そのまま行けば、安心のはずだったが、学校で時間を食ったせいで、おいそれとは行かなかった。新しい敵が押し寄せてきたのだ。 「チ…ッ!もう追いついてきたのか!これからいいところのハズだったのに………」 アスランは自分の密やかな予定を邪魔されたことに最大限の怒りをぶつける。 ホントに…いいところって……ナンだろな……。 |
いいわけ:濃いと自負するからにはこうでなくっちゃぁ。真症変態でごめんよぉ…。
次回予告:キラ(♂→♀)誘拐
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