twelve*twelve

<第1章>傾国の新王


第5話

 

 言い捨てながらキラは、この男が普通に生きている人間ではないことを思い出した。どう考えても、夜の街系(一部限定)だ。





「判りました。我が主のためならば」


 だがアスランにそんなことは通用しない。言うが早いかアスランは上着のポケットからとんでもないものを引きずり出した。

「行け!イージス、ジャスティス」


「………。そのポケットは4次元ポケットか………」
「………ぇ?」


「あ〜いい。これも、知らなくても生きていける…」

「……………はぁ……???」



 ポケットなどと言う小さなスペースから引きずり出された、ありえない大きさのロボットは、キラたちの脅威を次々と取り除いていく。これなら幾分もしないうちにヘンな巨大ロボットは片づく。

 キラは早くも自分が逃げ出す算段をし始めていた。


「すごいですね、あなたのマジック」

 とりあえず褒めて、相手の緊張をほぐす作戦。


「マジックじゃないです。私のMSです。そんなことより急がなければ!」
「急ぐ必要ないと思うけど?」

 いやいやいやいや!それは困る。
 この変態と先を急ぐ?そんなことになったらキラもめでたく<お仲間入り>のレッテルを貼られるではないか。


 困る。
 それは異常に困る。

 この先の学校生活が波瀾万丈なものになるだろうという予測は簡単についた。



 だから、このまま放置していれば、時間がかかってもあのザクとかいうメカ軍団を倒せるだろう。時間さえ稼げれば、この変態から逃げ出せる機会は絶対にやってくるはず…。
 そう思っていた期待は容赦なく裏切られ、モタモタしている間に、形勢はだんだん不利になりつつあった。キラの脳内でどこからか佐橋さん作曲の『種』第4クールの名曲BGM<カウントダウン>が聞こえてくる。





「まずい。私のMSでは今のところこれで手一杯です。申し訳ありませんがあなたにもお手伝いいただきます」

「ぇえっ!!?」


 この時点で一番まずいのはキラじゃないか!キラは瞬間的に悟った。

「そんな………」



 いきなり現れて自分をガッチリ抱き込んで離さない変態の手伝いって………。キラはおたおたしながら必死にアスランを止めようとする。

「そんなことっ今する必要はないと思いますっ」



 けれど、キラにとって事態は無情だった。

「今、あなたのお力を借りねば、二人ともやられてしまう」
「ええ〜〜〜〜〜っ!」


 勘違いしたままキラはぐるぐる考える。アスランを止めて二人ともヤられてしまうのも嫌だ。とはいえ、このままアスランと協力して敵とやらを追い払ったところで、この変態は自分狙いだ。



「どっちもやだぁ〜〜っ」


 キラの必死の絶叫をわがままと無視し、アスランはBB戦士セイバーを呼び出した。目の前に見えるMSを3等身にした感じの、全長も数mとひどくちんまいMSだった。

「例のものを」
「かしこまりました」

 しくしく涙を流すキラには意味不明のやりとりで、また新たなMSが出現した。



「これに搭乗していただきます」

 キラは目を見開く。そして唖然とした。



「ム・リ・だ・ろーーーーーッ!!!!!何なんだよこれは!」



「これはZGMF−X20A、ストライクフリーダムです」

 サイズが尋常ではない。よく見ると脚の部分がグラウンドにかなりめり込んでいた。


「一体どれだけあるんですかッ!めり込んでるじゃないですか!」
「全長は18.88m、総重量が80.09tあります」



 想像を絶する規模にキラは絶句する。

「こんなの学校に持ち込んで、何考えてるんですか!迷惑でしょう!!」


 しかし、アスランはけろりとしていた。
「役に立てば良いんです」

「そういうものじゃないでしょ!それに、どこから出したか知らないけど、大体こんな大きいものが僕に扱えるわけないでしょ!」



 アスランはこの時焦りと格闘していた。こんなところで舌戦漫才をしているヒマはない。悠長にしていたらザクだけではなく別のものも襲来してきそうだった。嫌な予感がする。
 と、同時にこの新たな主君と公私ともに早くお近づきになりたかった。こんなところで戦闘に時間を食っていたら、彼と公私共々(いろんな意味で)仲良くなる時間が減るではないか!(※既に好みの範囲内ならこの際、性別は目をつむることにしたらしい)





「全く!頑固な!なら私が手とり足取り腰とりお手伝いします。どうあってもご搭乗いただいて、ザクだけでも倒していただかないと!」


 キラは身体が宙に浮いたと思った。
 ふと見ると眼下にグラウンドが小さく見え、背中にやたら生暖かい感触がする。





 紺色の髪の変態ホモ野郎にガッチリ抱かれていると認識できたのは、そのままの体勢で機体のコックピットに乗り込んだからだ。すぐさま手を取られ操縦桿を握らされる。その上からアスランの手が覆い被さって、キラにはどうにもできない体勢となってしまった。

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いいわけ:つまりね、シートの上にアスラン(♂)が座り、その上にキラ(♂)が座らされているのですよ。
次回予告:説明すればするほど悪循環(笑)


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