twelve*twelve

<第6章>女王即位


第49話

 

 3日後。鬼の居ぬ間に惰眠をむさぼっていたキラは、異常な感覚に強制的に目を覚まされる羽目になる。

「ぅわッ!アスラン!」


「ただいま、キラ。俺はキラと会えない間すっごく寂しかった。キラも寂しかっただろう。今夜は俺の胸で泣いても良いから」

 一瞬キラの顔が固まったかと思うと、キラの手は反射的に動いていた。


 ガゴン☆
 アスランの顔面に拳がヒットする。



「て…照れるのは嬉しい…けど………痛い…」
「照れてない!人が気持ちよく寝てるときに気色悪いことをするな!」

「手を握って良いって約束してくれたじゃないか!」
「う……。握ってもいいとは言ったけど、頬ずりしたり舐めたりまでは許した覚えはないよ」

「ホントは寂しかったくせに」
「寂しくない!」


「俺、キラの為に頑張ったんだよ。ちょっと重かったけど、キラに頼まれたもの、ちゃんと持ってきたよ」

 そのアスランの言葉にキラはがばっとベッドから起きあがる。


「ホントに?揃えてくれた?」
「全巻コンプリしてきました」

 キラの前にBB戦士セイバーがやってきて、大きな木箱に入ったものを大事そうに抱えてきた。床に置くとさすがにゴトッと重そうな音がした。キラは早速ベッドから離れその木箱の中をのぞき、注文品かどうかを確認し、そしてアスランに笑顔を向けた。


「ありがとうアスラン!」

「これで良いのか?」
「うん、僕の部屋にあった通帳で足りた?」

「向こうの世界のお金のことはよく判らないが、ちゃんと釣り銭ももらえたぞ」
「ああ良かった。これで今度の即位式に間に合った」


 すると今度はアスランが驚いた。

「そんなに大事なものだったのか?」
「大事だよ、アスラン。僕はこれがないととても困るんだ」


 アスランは不思議そうにキラの笑顔と木箱の中身を見比べる。

「俺には向こうの世界の文字はよく判らないよ。だから、キラに言われた通りしてきただけなんだ」

「うんうん、大丈夫。アスラン初めて役に立ったよ」

 そう言われてアスランは笑顔を前回にさせてキラに飛びつき………あえなく撃沈した。


「それ以上来るな!ここからは敷居を設けてるんだからねッ」
「手ならっ手なら良いだろ」


 キラは少し渋い顔をし、自分が許したことを思い返し、しぶしぶOKした。

「う…ん。手なら…触っても、良いよ」


 だが包み込まれるように握られた手は、今のキラにはまだ少々気持ち悪かった。





 瞬く間に時は過ぎ、キラの即位式の日、キラは重臣たちによって散々パンダになり疲弊しきったところに、例の大事な勅命を出す機会が訪れた。


「さぁ、キラさま。御代始まって最初のご命令を」



 キラはしばらく瞳を閉じ、ふふふふと含み笑いをした。そして偉そうに傍らにいる者に命令をする。

「アスラン、例の物を」
「はい、キラw」


「語尾にハートマークを付けるな」←小声
「えー良いじゃないか!マイク遠いし」←小声
「半径30cmまで近寄って良い許可を撤回するよ?」←小声
「いやっ!嫌だよキラ。発狂しそうだ」←小声
「じゃぁ僕の言うことをちゃんと聞いてよね」←小声



 この間小声すぎて二人の会話は全く伝わらない。その間の時間が、民衆の目には君主の余裕と自信に見えた。現実なんてこんなモノ。到底言えたモノじゃない。





 アスランが恭しく1冊の本をキラに渡す。その分厚い本を受け取りキラは表紙を前にして脇に抱えた。


「みなさんに通達します。これからこの国の基本的な法律はここに書いてある通りとします。困ったときはその時になってから決めます。という訳で法律を守るように」

 キラの臣下や民衆たちは、キラの勿体ぶりようからそれがとてもすばらしいモノに見え、総じて歓声を上げた。



「キラ女王陛下万歳」
「ご即位万歳」


 止まぬキラコールの中、当のキラは重たい本をアスランに渡し、手を振りながら笑顔で群衆に答える。


 木箱の中から取り出され、アスランからキラに渡り、キラからアスランに返されたその本の表紙にはたった4文字が記されていた。



『六法全書』

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いいわけ:勿体ぶってすみません!最初に思いついたのはこの4文字のタイトルの本でした。
次回予告:次回で最終回になります。最終回、アスランの粘り勝ち。


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