twelve*twelve
<第6章>女王即位
第46話
「けど…ずっとここから見てたけど、お前と出会ってからは不思議なぐらいお前一筋みたいなんだ。本気で惚れたんだろうな。だから、決して甘やかさず末永くお前の手のひらの上で転がしてやってくれ」 「え………?」 それって。それって………。 「多分コイツはキラの言うことしか聞かない。それを上手く利用すれば大丈夫だ。幸いコイツ単純だし」 「そんなまるで決まってるかみたいな…。ってか、僕とアスランは結婚する訳じゃありませんから」 カガリはしばらく思案し、そして快活に笑った。 「だって、似たようなもんじゃないか」 「違います!!!」 キラは顔を真っ赤にして否定する。その姿は<可愛い>以外の何者でもなかった。 「やっぱり可愛いな、キラは。私の目から見ても充分可愛いぞ」 「な………っ!!」 それは(元)男としてちょっぴり傷つく言われよう。 「褒めてるんだけどな。お前、本当に可愛い女の子だからさ。あ、前は男だったって事は判ってる。この世界はそういう世界なんだ。残念かも知れないけど、人の第一印象はまず姿形。だから、そこからウソを付いて欲しくないんだ」 「アスハさん……」 説明されてみれば、カガリの言うことはよく判る。でも、だからと言って納得できるかと聞かれればそれは別問題だ。特にキラの場合、すぐ間近に迫る大問題を抱えているだけに。 大問題って何かって?キリンだよア・ホ・キ・リ・ン! 「多分お前は良い統治者になりそうな気がするから言っておくけど、これから長い月日を過ごすことになるんだ。お前達が国と民を大事にする限り、お前達は不老不死の身体を得る。だから、今の姿が本当の姿だって意味、もう少し考えて欲しい」 キラは言われた言葉を脳裏で反芻し、次の言葉が出なかった。思わず考え込んだキラにカガリは、彼女の肩をバンバン叩き、笑顔で声をかけた。 「まぁ言われてみれば結婚みたいなものだよな。そうかそうか。そういう解釈もありだな。ありがとう」 「えッ!?ちょ………」 「頑張れよ、キラ。アスランを制御できたら明るい明日があるさ」 キラが反論しようとしたとき、すぅっと女帝は周りの霧の中にとけ込み、そして霧ごと綺麗に晴れてそこには何もなくなってしまった。 「え?ええ?もう………終わり??」 反論するヒマもなかった。ましてやこの変態と別れる方法とか、男に戻る方法とか、でもって元の世界に無事に帰りたいなどと…言うヒマもなかった。 でもってさらにそこへキラの憂鬱の元凶が喜々として声をかける。 「カガリの言ったとおりだよキラ…。これで俺たちはめでたく公認夫婦なんだね」 国の主として承認されて僅か20秒。アスランはキリンとして初めて主君に殴られた最速ギネス記録を樹立した。 「それってもしや愛の裏返し???」 嬉しさに身をよじらせ、くねくねするアホは本当に気色悪いだけだ。 「違うわ!バカ者」 「キラ、これからよろしくね。君を本当に悦ばせてあげる」 「コラ!字が違う」 「え?合ってるよー?」 「発音は一緒でも口調と雰囲気で判るわ!おっと、今はそれ以上近づかない!後戻りしたくなきゃね」 「つれないなぁ…。俺はこんなにもキラだけが好きなのに。ああ、キリンに生まれてきて本気で良かった。だってこれから末永く一緒にいられる」 「気色悪いことを言うな!」 「本気だよー」 端から見て夫婦漫才はこの後もう少し続いた。 オノゴロ島の端。そこでは傾国の重臣たちがキラたちを待っていた。 「お帰りなさいませ。めでたく女帝の許可を得て傾国の女王におなりあそばされた由、まことに喜ばしく思います」 「ちょ…っ!止めてください、そんな……」 「そこにキリンが控えていると言うことは、正真正銘あなた様は真実の国の女王として認められた者です」 「いや…コレは控えてると言うよりむしろ………」 言い寄っていると言った方が正しい。客観的に見て。副宰相は別の女の子の似顔絵を出してアスランに問う。 「キラさまとこの子と二者択一だとしたらどっちを選ぶ?」 イキナリ質問を振られたアスランはびっくりし、そして絵をじっくり見て少し悩んでからなにげにキラを抱き寄せた。 「その子も惜しいけど、こっちが良い」 「コレが証拠です。今まで女性と見るや割と無差別だったのがウソのようです。ああ、キラさまが我が国の女王としてお立ちになられて本当に助かった」 |
いいわけ:判りにくくて申し訳ない。他の女性にあまり興味がわかなくなった。コレが大きな変化です。
次回予告:縄蓑虫の正体
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