twelve*twelve
<第6章>女王即位
第44話
キラ(僕…貧乏くじ引いた?) 重臣B(それを考えてはなりません) キラ(やっぱりそうなのか!!!別の人間に生まれてきたかったっ) 「キラ?どうしたの?泣いてるの?」 すっとアスランが寄ってきて、指でキラの涙を掬おうとしたところで、ハッと気が付いた。 「うわっ!」 「そんなに驚かなくても…。涙が出ていたから。愛しいひとのそんな顔を見ていたくないと思うのはおかしいことじゃないだろう?」 恋心を前面に押し出しまくった笑顔が正直、気・持・ち・悪・い! 「おかしい事じゃないかも知れないけど、今の僕がかなりあなたを警戒してるということも覚えておいて」 「残念だなぁ。でも、攻略のしがいがあるな。長期戦になっても、俺は絶対に制してみせるよ」 「相変わらず、すごい……(欲望だねぇ…)」 キラの呆れは全くアスランに伝わっていなかった。 「キラさま、そろそろお戻りになりましょう」 重臣の言葉でキラはふっと我に返る。そしてそうだね、と言い元来た道を歩いて帰った。 「アレ?アレ!?ない!ないないないっ」 帰った瞬間のアスランの発言がコレだった。 「え?何がないの?無くしもの?」 いきなりなアスランの絶叫で思わず素に戻るキラ。だがすぐにそのことを後悔した。 「ここにも、あそこにも!ああっ全部全部……。消されてる……俺と可愛子ちゃんの愛の痕跡がぁ…ぁあぁあぁああ………」 そして当然アスランは彼の主君によって、近くに置かれていた壺でぶん殴られた。 都合良く置いてあった壺(演出) 何故か割れる壺(設定) ガシャーーーンと周波数の高い小気味いい音がした(音声) 粉々に砕け散った壺の破片は、幾何学模様を描いて床にバラバラになっている(総合演出) 「痛い!キラぁ」 「うるさい!いきなり血迷ったこと抜かすな!」 「残っているはずがないでしょう!あなたの落書きなど」 重臣のすげない言葉。 「落書きとか言うな!俺と女の子たちの記念と思い出の結晶なんだ。愛の証に二人でいっぱいいっぱい話し合って書いたんだぞ!それを落書きだと………ううう……」 ハイ、それを落書きと言うんです!そして落書きは当然。 「キラさまが王宮に来られる前にきちんと隅々まで掃除をしましたよ」 特にひどい落書きを………だ。 「と言うか、王宮の壁や柱に落書きをするな!どこにそんなキリンが居るんだ!たわけ者」 アスランは床にへたり込んだまま本気で落ち込んでいた。けれど、事態が事態なので誰も助け船を出すものなど居なかった。ま、当然の結果だ。 「やっぱり俺にはキラだけだ。本当に真実の愛を分かり合えるのはキラだ…け………へぶぅ」 あまりの気色悪さにキラは思わずアスランの顔面に足をめり込ませてしまった。 「キラぁ。キラだけは俺の味方だよな」 「事と次第によっては無理」 「俺はこんなに愛しているのにッ」 「まだ僕は愛してもいないし好きにもなってない。その前に女の子の気持ちなんてどだいむりっぽ……」 「キラはきっと俺のことを好きになれるよ。最初はツンツンしてても心うち解けてくれば俺にメロメロになるから」 ツンデレを激しくご希望らしい。 「想像すらできない」 「俺が現実にしてあげるよ」 「嫌だ!ゼッタイならないからっ」 「そう言って強がってるキラもス・テ・キ………ぐがぁッΣ」 変態は再び重臣からキラに渡された凶器で殴り倒され、沈黙した。 「ねぇ、こんなんだよ!?本当に大丈夫なの?乗り切れるの?僕自信ないよ」 アスランを解放したことをとっても後悔している、と身体と言葉の全てを使って表現する。 だが、だからといってそこのところを情状酌量してもらえるわけではなさそうだった。 「乗り切っていただかねば、あの変態と共にキラさまの存在は消えてしまうのです。頑張るのです!女帝への挨拶さえ乗り切れば我が国はもう安泰です」 「それ本気で言ってるの?」 「だってキラさまが賢いお方でさえあればあとは全く問題ありません!変態を縛り付けておこうが、騙して左遷しようが、仕事漬けにしようが思いのままです」 副宰相は主君にとんでもないこと………いやいや、現実的な対処法を吹き込んだ。善政さえ敷けば、主君とキリンが仲が悪くとも関係ないのだ多分。と言うことは、結果さえ出せたら変態なんぞ一生監禁して置いても問題ないのだ極端な解釈だが。 「キラさま、このままこのエロスランと本気で心中…などしたくはないでしょう?」 そして彼の言葉でキラは奮起した。 「これが正念場なんだね!」 逃げたい一心のキラ。その気持ちを利用する重臣たち。そして…その会話を自分の都合のいいように脳内変換して一人喚起にむせぶアホスラン。それが、この傾国の新たなトップだ。 「左様でございます!キラさま、我らと一緒に明るい未来を築きましょう」 |
いいわけ:いっそ小気味良いほど暴走するアスランを書くのも好きでs…。
次回予告:キラの見てきたアスランは、100%変質者だ。
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