twelve*twelve

<第1章>傾国の新王


第4話

 

「………見させていただきますッvVwV」


 瞬間、アスランはキラを床に組み伏せる。

「ぅわっコラ!こんなとこでなんて聞いてないよっ!ってか、イキナリ性急すぎる!!!それよりも僕はノンケなんだからあなたとはホモ達にはなれないよっ」





 その時だった。轟音がしたかと思うと教室の窓ガラスが音を立てて割れ、グラウンドから地響きがした。

「地震?」


 割れた窓ガラスからアスランはキラを守った。
 しかしキラにとってそんな事より、床に組み伏せられたままコスプレ変態に抱きしめられている現況の方がよほど重要だった。



「離してっ」

 抵抗すればするほど力強い腕で抱きしめられる。お互いが勘違いしていることにこのとき二人は全く気づいていなかった。



「できません!」
「アナタの僕に対する偏愛はよく判ったけど、こんなところでなんてやめてください」

「今は、甘受頂きます。これが私のやるべき事です」
「そんな!ひどいよ……いきなりやってきて、みんなの見てる教室でナマだなんて……」


 誰だって衆人環視状態での生本番はイヤに決まってる。

 さらにキラが見る限り、このコスプレ変態ホモ野郎は、感染症予防にとても有効な某ゴム製品を使うような奴ではなさそうだ。もとよりきっと持ってはいないだろうと思われる。



「お怪我をさせるわけにはいかない」

「…どっちみちケガするんでしょ!こんなイキナリじゃ…。僕知ってるんだからっ」
 ちなみにキラはアスランをモーホーだと思い込んでいる。キラの想像するケガとはある特定一カ所である。通常の常識を備えた男ならば、二度と立ち直ることが出来ないと言われている。



「誓ってあなたに怪我はさせません」

「そんな…優しくするってみんな言うけど、絶対嘘だ!最初だけだッ」
 キラは抱きしめられたままさめざめと泣き始める。





 その時、教室内で軽傷だった別の生徒がグラウンドの異変に気づいた。
「グラウンドに何かいる!」

 ざわめく生徒達。その姿を後ろ目にアスランは舌を打つ。



「もう来たのか」
「………ぇ?」

 そしてもう一度手を取られ、有無を言わせぬ強い力で引っ張って行かれた。
「あっ!コラー!待てってば変態!ホモ!連れ去り魔!未成年者略取だぞっ!僕は許してなんかないんだぞ〜!」



「一刻を争うんです」

「せめて夜まで待てないんですかあなたは!」
「待てません!!!」


「がっつくなぁッ」



 そしてキラの視界には校舎の屋上が見えてきた。無情にも休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。けれど、そんなことなどお構いなしにアスランはキラを屋上に引っ張っていった。
 余談だが屋上に出る為にかかっていたドアのカギは、緊急事態の為(アスランの)怪力で破壊された。





「あのさー、一応授業とかあるんですけどー?」


 キラは思う。生本番より、授業の方が断然大事に決まってる。今は人生で初めて学校の授業が受けたくて仕方がなくなった瞬間かもしれない。


「それどころじゃありません」
「どう考えてもこれ授業より大事とは思えないよ」

「いいえっ!来ます!掴まっていてくださいッ!」



 慌てふためいている間に肩をがっしり掴まれた。そして二人の頭上を<どう見ても人型巨大ロボットにしか見えない妖怪>が高速で通り過ぎていく。



「ぅわっ!」

 風圧に飛ばされそうになるのを助けてくれたのもアスランだった。

「大丈夫ですか」



「大丈夫…じゃないだろーっ!何なんだッアレは!!!」


 キラは青筋をたてながら、頭上に迫りつつある人型ロボット型妖怪を容赦なく指さした。助けてもらってありがとうとか、到底そんな気分にはなれない。



「あれはZGMF−1001、ブレイズザクファントムです。高機動型のブレイズや2門のバルカン砲を搭載した…「そんなオタク用語どうでもいいからっ!」

 キラの怒りは収まらない。なぜならば、今アキバ系コスプレ変態に抱きしめられていることに加え、空を覆うメカの数が尋常ではないからだ。



「あなたが呼んだんでしょ!だったらあなたが何とかして!」


 それが実際アスランのせいなのかどうかはさておき、キラはこの異常事態を彼のせいにしたかった(激しく希望中)。
 全ての責任をこの変態に押しつけてしまえば、自分は関係ない人でいられるではないか(今すぐにでも逃げたいという気持ちはよく解るだろう)!



「オタクって何ですか?」

「あ”〜〜一般人のトリビア!知らないほうが充分フツーにマジメに生きていけるよ。あなたにはもう遅いかも知れないけどね…」

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いいわけ:これだけ変態呼ばわりされても、アスランは二人の間に勘違いがあることに全く気づいていません(笑)
次回予告:キラ(♂)の作戦むなしく、二人は密室空間へ。


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