twelve*twelve

<第6章>女王即位


第39話

 

「陛下?」


「出るのはわがままと皮肉ぐらいだよ」

 臣下の一人はふと柔らかく笑って、ここではキラが君主なのだから緊張を解いて欲しいと言った。ところが何度言われてもキラにはそこが引っかかる。

 まぁいきなりな展開続きで引っかからない人がいたら余程天才か大バカだ。



「実は女王陛下、とてもとても大事なお話をしなければなりません。どうか、どうかお心安らかに話だけでも聞いていただきたいのです」

「その言い方に嫌〜な予感を感じるのは僕だけ?」


 重臣たちは言った。

「あながち間違いではございませんが、気にしてもいけません」


 キラは瞬時に判断した。

「僕帰って良い?」



 答えはすぐに返ってきた。

「ダメです」


「僕ね、すっごーく逃げ出したい気持ちになった。………っていうか、あなた達はやっぱり僕の身体を使って男を相手させて儲けようとか、僕を見せ物にして大儲けしようとか、挙げ句の果てにヌード写真集とか出したら売れるとか思ってるんでしょー!」


 キラはやっぱり誤解していた。



「いいえ、違います」

「じゃ何!?活字にはできないようなピーーーとか、ピーーーーーとか、ピーーとかするつもりなんですかッ!だからといってAV女優させられるのも嫌ですからね!そりゃ、確かにタダで助けてもらった上、無賃宿泊無銭飲食させてもらって………借りはしっかりあるけど……」

「いやだからそれも………ちが………」


「その前借り代金を払えって言うなら、こんな回りくどいことせずに素直にアダルトじゃないマジメなバイトを紹介してくれたらいいじゃないですか!!!」

 キラは涙目で叫んだ。
 嫌だ。本気でAV女優をするのも、援助交際するのも、そしてヌードモデルになるのだって嫌だ。ましてや活字にできないアレコレなど以ての外だ!



「この国を統べる君主として即位していただきたい。そのことは事実です。けれど、その為には事前準備をしっかりする必要があるのです」

「訳が判らないよ……」

 涙うるうるのキラ。その姿はひたすら萌え系だった。



「前借り云々の話はチャラです」

「え…?払わなくて……いいの?本気でタダ?」


 全ての重臣が頷いた。この条件で支払えというのもおかしな話ではあるが。


「なんだか悪いよ。全部お膳立てしてもらって……僕は何もしてないのに…」

 まぁ一応キラにも良心というものはある。



「そう思われるなら、この国の女王としてご即位なされて国政を執っていただきたいのです。けれども、それには障害があります。我々も最善を尽くすべく準備はいたしますがそれでも不可能になったときの手だてを講じておきたい。お話の内容はそれです」

「障害?僕は何かしなくちゃいけないの?」


「女王陛下に学んでいただきたいものがございます。それは最終的に己の身を守る護身術なのです」

「そんなこと…」

 よくあることではないか?と思ったとき、重臣の一人にがっしと腕を掴まれた。



「な!何を……ッ」


「今から申し上げることを卒倒せずにお聞きいただきたい」

 彼はキラにずずいっと顔を近づけてきた。



「顔こわいよ……?」

「怖くもなります。なぜならその障害こそこの国のキリンなのですから」



 キリン……。キラは瞬時に二人の可能性を思い浮かべ、そのうちの一人の可能性を頭の中で瞬殺した。
 どっちかって?もちろんアホのほうだ。



「キリン……って、確か国の王様の部下になる人だっけ?」

「残念ながら、女王陛下の半身となる当国のキリン、その者の名前は」


 重臣の額に冷や汗が伝う。自分たちトップの中で散々押しつけあった結果だ。


「もったいぶるって事はとんでもない人なんだね?」

 そう、それは確信。



「彼の名は、アスラン・ザラと言います」

 瞬間キラの全身に力が入った。真っ青になって逃げ出そうとするキラを重臣たちはよってたかって止める。その逃亡防止のために予め腕を掴んでいたのである。


「やだ!やだやだやだぁ!!!ゼッッッタイにやだ!!!!!!!」



「これだけは換えられません。ですがあの末期のアホキリン阻止のために我々も全力を尽くします」


「帰る〜〜〜!僕は元いた世界に帰るぅ」



「お帰りになれば我が国は衰退します」


「知った事じゃないよぉ。ってか、あなた達も知ってるでしょ!あの人の飽くなき執念と行動力」

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いいわけ:ええ、あらかじめ判っていたことです。ね?アスランのことはいつかは言わなければならないのです。
次回予告:「今それが出来るのは僕だけだって言うんでしょ!」事件。


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