twelve*twelve

<第6章>女王即位


第38話

 

「ん……んん、ぅ……」

「お目覚めになりましたか?ご安心下さい、ここはコペルニクス王宮でございます」


「え……?何?どっかのパブかお触りバー…?」

 さすがキラ・ヤマト。いくら寝ぼけ眼であろうが疑うことは止めない。


「いいえ、女王陛下のための王宮にございます」

「嫌だなぁその響き……、なんか、ちゃちぃラブホテルかランパブみたい………」

 キラはまだ寝ぼけていた。



「女王陛下、しっかりなさってください!お目をお覚まし下さい。皆が総出で陛下のご帰還を祝っておりまする」

 キラはゆるゆると起きだし、コックピット内で立ち上がって大きく伸びをした。


「寝込んでたとはいえ、こう同じ姿勢のままじゃエコノミークラス症候群になりそ…」

「???」

「あーいい。トリビアだよ。知らなくてもマジメに生きられるから」

「……………」
「陛下、ご不安でしたらお手をお取りいたします。王宮内にお入りになりましょう」

 その言葉でキラの目が覚めた。


「嫌!変態に抱きしめられて今度こそ本格的に逃げ場所なくなっちゃうと危険だからっ」

「陛下………」


 いや、実においたわしいとはこの事だ。臣下はハッチを開け顎下待機隊に、先に変態を別室に連れて行くように命じる。顎下待機隊は「ガッテンだ!」と言いながら、変態問題児を監禁すべくいそいそと先に退出した。



「ラダーを」

 開いたハッチからラダーが地上まで降りた。そのラダーで副宰相は最初に降り、続くキラを促す。キラが恐る恐るハッチから外を見ると、眼下に壮観な光景が広がっていた。


「全てあなた様に従う者です」

 激安スーパーの夕方のタイムセールか、閉店セール全品8割引のチラシでもあるかのような人の集まりがそこにはあった。その人たちが皆跪いて新王を迎えている。

 その姿にキラは本気で引いた。人生の中で初めてキラは尻すごみした。


「陛下……?」

「ちょっと何?本気で怖いよ…」

 偶然近くにいた重臣に思わず掴まる。


「大丈夫でございます。皆、陛下のお味方になる者たち」

「騙して僕を裸に剥いたりしない?公衆の面前で押し倒したりしない?僕の意志そっちのけでえっちを強要したりしない?本当に?ホントに?」

「保障いたします。ですからわたくしと一緒に王宮へ降りましょう」


 さすがにキラはまだ物怖じしている様子だったので、彼はキラの姿を守るように一緒にラダーで中庭に降りる。するとその場にいた大勢の人たちが大歓声を挙げた。



「いやっ!怖いよ…」


 キラは目の前の重臣にしがみつく。その姿は……………ハッキリ言って<萌え系>だった…。全ての人々の瞳がキラに集中する。


「この人たち………」

 さすがに強気なキラもこれだけの人々の視線の集中砲火は怖い。おちゃらけているヒマはなかった。重臣はひたすらキラを守るようにかかえてくれていた。そう、実は万が一脱出したアスランの闖入に備えて。



「中に…。どこかの部屋にでも………」

「畏まりました」


 重臣はキラを守りつつ王宮の中に向かって歩き出した。

「新王陛下はお戻りになったばかりで大変お疲れでいらっしゃる。お目見えは後ほどになるから、皆はそれぞれ持ち場に戻るように」

 すると、周りにいた大勢の人々は本当に散りぢりになっていった。その光景に一番目を見張ったのはキラだった。

「ぅわ…すごいんですね。あなたの言葉でみんなが………」


 言われた彼は笑いながら首を振った。

「女王陛下の権力のほうが余程絶大でございますよ。あなた様はこの王宮とこの国の主。国が豊かになるなら思い通りにならないことはございません」



 キラは彼の言葉をウソのように聞きながら、呆然と釣られて歩いていった。王宮の中の一室に連れられていき、その中の上座に置かれた立派ないすに座らされる。しばらく待っているとその部屋に重臣たちが集まってきた。皆、キラに頭を下げる。


「あ…あのっ!本当に僕は何でもないんですから、そんな……っ」

 訳も分からず慌てるキラに彼らは一様に並んで頭を下げた。


「お帰りなさいませ、女王陛下」

「あ………あの……っ」


 キラは本格的に困って狼狽した。そりゃ、確かにメサイア宮殿で散々説明を受けていたように、ここに来ればもっと彼女は君主扱いを受けるということは頭では判ってはいた。ということは身体では全く判っていなかったわけで。



「み…みんなして僕を持ち上げたって何にも出ないからねッ!」

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いいわけ:どぎまぎするキラはいつ見ても可愛い限りです。ごめ…本気で萌え……。
次回予告:脱走失敗!


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