twelve*twelve
<第5章>女王奪還
第36話
「ばか者!畏れおおくも女王陛下に向かってなんたる無礼か!」 するとキラたちの予想通り、見張りは慌ててキラたちに頭を下げて引き下がった。 「申し訳ございません!まさか女王陛下が直々にお出ましになるなどとは思わずに、無礼をいたしました」 予定通りキラは包容力のある主君らしく、見張りの者にニコニコと笑いかけ手を振ってみせる。案の定見張りの者はそれで緊張を解いた。 「い…いかがなされたのでしょうか?」 想定反応1 妖怪の見張りを任されるような下っ端は、国のトップの顔など一々知らない。 「コックピット内に陛下がとても大事なお忘れ物をされたとのこと。この妖怪は女王陛下にしか扱えぬこと、知っておろうな」 「そ…そうだったのでありますか!」 想定反応2 ストライクフリーダムがキラ専用だと説明すれば、嫌でも通さざるを得ない。 「陛下にとってはなくてはならぬもの。自らお取りになると申される故、我々が付いて参ったのだ」 見張りはその言葉を信じて簡単に道を開けた。一度その場を離れ、上方にあるキャットウォークへ移動した。 そして、コックピットハッチを開きキラと重臣の一部は中に、残りの者はちょうどMSの顎の下あたりの僅かなくぼみに滑り込んだ(因みに構造上そこは死角)。 「え…っと、確か………」 キーボードを叩きながら出来るだけ音をさせないようにMSを起動させてゆく。 「アレ?ナビのシステムが組まれてる…?」 「仮登録をしてあります。陛下のご承認があれば、その仮登録は有効となり初めて使えます。これは我が国の至宝、確かに陛下にしか扱えぬものでございます」 「この最終目的地は?どこ?」 そこにはキラの知らない地名があった。 「傾国の首都であり王宮であるコペルニクスでございます」 「本当なんだね?嘘じゃないね?偉そうなこと言ってるけど、ヤラしい商業施設とかいかがわしい場所じゃないね?」 キラ、ここに至ってもまだ確認につぐ確認。 「着けば全てお解りになります」 「お城のような外観のラヴホテルとかいかにもちゃちいキャバクラとかでもないね?信じていいんだね?」 「ら…ラヴホテル???キャバクラ?????」 「えっち目的の寝室型商業施設と、えっち容認の応接室型談笑施設。どっちも18禁」 重臣たちは、揃って「あり得ません」と、完全否定した。その時、下から声がかかる。 「女王陛下、なかなかお見つかりになられませんかぁ?」 仕方なくコックピットハッチからぴょこっと顔だけ出してキラはすまなそうに言う。 「ごめんねー。機器の間に挟まっちゃってるんだ。もう少し待ってくださ〜い〜」 その表情と声は見張りを一瞬にして虜にした。 「畏まりました。お取りになりましたらお声をおかけください」 「うーん、わかったー」 と、元気よく答えてキラはさらに着々とMSを起動させてゆく。 下で待っているだろう見張りに心の中でごめんと謝ってから、ニンマリ笑い勢いをつけてエンターキーを押した。ストライクフリーダムの一対のカメラアイが光り、傾国の至宝は完全に起動した。 「行きます。上の人もちゃんとつかまってて下さい」 ん?蓑虫…いや、アスランは?重臣の判断によりもちろん顎下スペースに、しかも括りつけてある。ちなみに中の人はキラの言いつけをよく聞いているようで、とても大人しくしていた。ただ、時々漏れ聞こえる変態の独り言をのぞけば優秀な態度だ。 傾国の至宝は全てのバーニアを全開にさせて勢いよくその場を飛び出す。後方でかすかに驚愕と怒号が聞こえてきたが、キラは気にせずフットペダルを最大に踏み込んだ。 「ごめん…。けど、僕を行かせてくれ………」 そっとあの見張りや、少しだけ仲良くなった女官たちに心の中で謝りつつ、キラは至宝を駆る。 いきなり現れた重臣と名乗る人たちを100%信じているわけではない。けれど、彼らの言うように、この宮殿ではいつまでも宮殿内に居続けさせられるような予感は心のどこかで拭えなかった。 そして決定的な事実は、至宝と言われるストライクフリーダムは確かにキラにしか扱えない。そして今のキラには(おおよそ)扱える。この機体に乗ればメサイア宮殿の外も、恋う国の外もどこへでも行かれると思った。 とりあえず安全な場所で降りられれば、あとは乗り捨てても構わない、キラは当初そう考え判断したからこそ彼らの言に乗った。 MSハンガーからストライクフリーダムが奪取された。中には賊が入り込み、傾国の女王も誘拐された。 このアラートが恋う国の主に伝わったのは、キラがメサイア宮殿の結界を出た直後だった。因みにキラの知らないところで、デュランダルは歯がみして地団駄をふんだことをつけ加えておく。 さすがは傾国の至宝と言われるだけあって、ストライクフリーダムは恋う国のMSでは追いつけないほどの高スペックがある。 ところでアスランは……………ひたすらな縄蓑虫からの漏水でおおよそお解りいただけるかと思う。まぁMSというモノは完全防水、完全防砂、100%の密閉性を誇るものだから、とりあえず機体には全くの影響はない。 「ナビゲーションの自動航行の仮設定を承認しておいたから、とりあえずはこれに任せておけばいいんでしょ?」 |
いいわけ:『種』名シーンと名曲「翔べ!フリーダム」を思い浮かべながら、お楽しみ下さい。MSはストフリだけど似たり寄ったりなので、気毛!!!(←「気にするな、俺は毛にしない」の略)
次回予告:同じ穴のムジナ…たち。
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