twelve*twelve

<第5章>女王奪還


第34話

 

「一応の逃走ルートは考えてございます。これから一旦この宮殿のMSハンガーに忍び込み、そこで奪われた傾国の至宝を取り戻します。陛下には至宝に御搭乗いただき、空より一気に傾国の宮殿までお送りできる手はずになっております」

「空から?」

 キラには嫌な記憶があった。あの…変なメカだ。ついでにお尻に生暖かい嫌な感触付(←アスランのアレ)の。


「傾国の至宝ストライクフリーダムでございます。かの至宝は陛下の手足であり我が国の誇りでございます」

 そう、往々にして記憶は予感に変わる。嫌な予感だ。お尻に生暖かい……くどいので却下。


「そ………ソレって………あの、でっかいヒト型巨大メカ?」

 重臣たちは<否定しなかった>。
 予感に可能性が高まってくる瞬間。人はこのもやもやした時間が一番嫌だ。



「そう表現される方も中にはおられますな」

 重臣の一人が似顔絵ならぬ似せ絵(←要するに模写)を見せる。可能性の高い予感はこの瞬間<ビンゴ>に変わった。

 ん?キラの顔?そりゃ当然真っ青だ。だってお尻に生暖かい………強制終了…。



「アレは嫌だよ。もう乗りたくない」

 絵まで見せられては嫌でも思い出す、あのお尻に感じたナマ暖かく異常に逞しい圧力を。
 傾国の至宝がどうのとか、メカのスペックとかと言うよりもアスランの変態度の記憶のほうが遥かに勝っていた。


 人それをトラウマという。



「ですが、かの至宝は陛下にしか扱えないものでございます」

 ああくどいほどに初期設定のおさらいをすると、各国の至宝は各国の主にしか扱えない…と、まぁ有り体に言えばいわゆる<戦隊モノのセオリー>とか言われるものがあるんですよ一応。


 とは言ってもここまで読まれてこられた方々にはお解りの通り、初期設定以外の中身はもはや似ても似つかないモノになっていますが、そこはソレ脳内構造の違いということで笑って(←ここ重要)お許し下さい。
 はい、久しぶりにやってきました管理人の言い訳コーナーでしたー。





 話は戻る。戻らなきゃ困るからだ←しつこいなぁ。

「ええ!?だって、ここに来るときあの変態が………」

 そこまで言いかけて思い出す。どうあっても乗ってくれと言われたことに。そして操縦桿を握っていたのはキラで、その手をガッチリ包み込んで離さなかっ………いや違う違う、誘導したのがアスランだったということに。


 だがキラの目の前の彼らはマジメ〜な表情で全否定した。

「いいえ、アホスランといえども彼一人では扱えません」

「……………」


 だから、キラの手を握り込んでいたのだ。あの時は何も知らなくて、ただただキモいだけだったけど。


「MSの扱い方をご存じでなければ我らがお手伝いいたします故」

「あ…いや、何となく判るような気がする…。って、あなた達は僕にヘンな欲情してあっちこっちおったったりなんかしないよね!!!」



 そう。何度も何度も確認しないと気が済まない。それがこの短い間にキラが学んだことだった。


「神に誓って」

 彼らは立たないらしい。まともだ。とてもマトモな展開で実にいい!←なんだそら…。



「と言いつつ嘘付いたらもう容赦しないよ僕は!」

 当たり前のことだがキラはこちらに来てからというもの、異常に疑り深くなった。


「存じております」





 さすがに長くなったのでMSハンガーまでの珍道中はサクッとはしょる。

 とにかく疑り深いキラと重臣たちのやりとり、そしてキラに見えないよう細心の注意を凝らされた縄蓑虫の始末と、みんなで壁をクモ男みたいにして頑張って降りたことだけは確かだ。





 さて、MSハンガーにはもちろん多くのMS…いやキラ言うに巨大メカが収容されている。

「ねぇ、どれ?全部似たようなのばっかなんだけど…」


 生産ラインはそう多いわけではないのだ。大部分が量産型タイプで、特殊スペックのもの自体が少ないのが当たり前。現実そのほうが必要以上にお金をかけなくて良いため、量産=軍備充実という利点がある。
 TVドラマの中のようにはいかない。アレを実際にやろうとすると無駄に金ばかりかかる。いかに考えても地球防衛軍とかいう秘密の組織には、無駄な装飾の為に自由に使える莫大な資金力など無いのだ、以上TVのセオリーへのツッコミ。



「ええと、ストライクフリーダム…ストライクフリーダム………はっと………」

「いぃかん……見張りが居る…」


 まぁ考えれば判ることだ。キラの万が一の逃亡を阻止すべく、奪ったMSには常時見張りがつけられるのは致し方ない。彼らが先に弄ったときには、捜索隊出撃のゴタゴタの中でたまたまバレなかっただけだ。


「しかし、もうそろそろ陛下が居室に居られないことに、女官たちが気づく頃ではないですかな?」

 薄れかけてきた常識に照らし合わせた判断。キラにはそれがえらく新鮮に見えた。



「やっぱり、あなた達は僕の身体が目的の変態の一味とかじゃないのかな…?」

「もともとお身体が目的でも、変態でもございません!!あのアホスランを基準にお考えにならないでください!あの男はもう末期ですから!」

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いいわけ:強烈な経験は人に簡単にトラウマを作るという話。
次回予告:だってここは敵地のど真ん中。


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