twelve*twelve
<第4章>接触
第32話
「女王陛下、今あのアホは我々の手で捕らえ沈黙させてあります!どうかご安心を!!!」 瞬間、キラの瞳が輝いた。 「何だって!ああ、ありがとうございます!僕はその変態に襲われかけて、ずっと追いかけられていたんです」 「………………………」 「あのアスランとか言う変態を捕まえてくれたって言うのは本当ですか?だとしたらすごく嬉しいです!」 「……………………………」 「どこにいるかも判んない状況で、いつ発見されるかと思うと怖くてたまらなかったんですけど、これで安心して眠れます!本当にありがとう!」 しばらく言葉が出てこなかった。まさかまさか、隣の部屋にいますとは、口・が・裂・け・て・も・言・え・な・い……。 「わ…我らのお話を聞いていただけるので?」 「ええ!詳しくお願いしますw本当に捕らえたのはアスランとかいう変質者なんですよね?僕の聞き間違いとか、人違いじゃないですよね?某ホスト系変態アキバ風味ですよね?紺色の髪の」 いつか勘違いはバレる。確かにその時は怖かった。でもっでもでも、この状況は都合がいい!今は利用できるものならどんな細かいことでも利用したい。 「どうぞ中へ。あ…お茶を用意してもらいますねっ」 ルンルンのキラ。だが…。 「どうか、どうかそれはご勘弁を!じ…実は我々はこの国の者ではないのです。見つかったら捕まります」 キラはやっと納得した。 「ああ、だからベランダから?でもどうして?」 重臣たちはひとまず安堵した。とにかく、交渉のテーブルには立てるのだ。 「とにかくとても重要なお話をさせていただきます。ですが同時にこの宮殿から脱出することも重要な案件になります」 「あ、そうだろうね。いいよ、僕黙っていてあげるから」 そう、キラは未だに他人事だった。とにかく彼らを部屋に入れ、廊下に通じるドアの前には少し重い部屋のテーブルを移動させた。 「いいえ、あなた様も一緒に、でございます」 「…ぇ……?」 キラの顔色が変わった。 そして重臣たちは慎重に話し始めた。 「陛下は、傾国という国をご存じですか?」 無論キラは知らないと答えた。 「陛下のお治めになる国でございます」 やはりキラは首を捻る。 「そこがいまいちよく判らないんだよね。なんでみんなして僕を王様扱いするの?」 そう、今はただの食客なのに(こら)。 「それはいずれ判ります。ですがここにいらっしゃれば恋う国の王に軟禁されているも同じこと。今ここで抜け出さねばずっとここから出られることはないでしょう」 それはどことなくキラも感じていたほのかに嫌〜な予感。でも確証はなかった。 「陛下には復興しつつある我が国を救っていただきたいのです」 「やっぱりよく意味が判んない」 「申し訳ありませぬ。ここではあまりにも時間が無く、つまびらかなところまではお話しできませぬ。とにかく市井でもどこでもこの宮殿の外に出ていただかねば…」 初対面の人たちにいきなり言われても困る。それがキラの反応だ(いやとてもまっとうな反応だ)。 「外には出られないんだ。女官の人たちが危ないからって言って」 確かにここにいれば外には出られない。とりだって不便ではないが、不満は残る。 「この世界のことを陛下はご存じですか?」 「話なら聞いているよ」 「その目でご覧になったことは?」 キラは首を振って否定した。今キラの中にあるこの世界の情報は、ほぼ全てが単なる情報だ。聞かされても、確かめたことはない。重臣たちの瞳が真剣になった。 「ご覧になってください。傾国を。そしてこの世界の全てを。隣国の¥国の賑わいを。そして傾国の不況に乗じてこの国の王が何をしているかを」 「え………っ?デュランダルさんが…?何を?僕全然知らない」 「ご存じないのも無理はありませぬ。あなた様をこの宮殿に押し隠し、何も知らないふりをして金稼ぎに躍起になっております」 「信じられないよ…」 キラには信じられない。あのデュランダルさんが、などと。けれども誰しも知って欲しくない本当のことは言わないもの。ましてや国のトップならそういうこともあるかも知れないような気はしていた。 だからといってデュランダルを100%信用するかと言われれば、それはキラの中で違う。 「確かにこの状況は都合がいいですからな。陛下がご存じないことを良いことに、今のうちに資金を稼いで経済力をつけようと言うのでしょう。我が国の国民を異常な安価で雇ったり、資金を貸し付けては高利を得ております」 |
いいわけ:頑ななキラの気持ちを揺らがすのに、苦労しました…。
次回予告:「あ〜〜〜高利貸しの一種。年利18%ぐらい取るんだ。高いよねー」
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