twelve*twelve

<第4章>接触


第29話

 

 そんなことが行われているとはつゆ知らず、キラは相変わらず女官たちに囲まれて半ばオモチャになっていた。
 最初は嫌でたまらなかった<オンナノコライフ>も、さすがにこう毎日続けば異常事態だとの認識も薄れ、なすがままになってゆく。それ自体がデュランダルの企図していたことに気づくこともなく。


 キラは知らない話、キラがこの世界にいることで傾国は僅かずつではあるが復興してゆく。その復興のための資金貸し付けでデュランダルは自国の経済を着実に隆盛させる気でいた。


(ふふ。トイチでもかなり儲かる)

 デュランダルは本音を言葉にしない。だからこそキラは簡単に騙されていた。





「のんきに朝風呂なんて…こんな贅沢してて良いのかな?僕は…」


「キラさまは我が国にとって大事なお客様です。この世界のことをお知りになるまで、心ゆくまでご逗留されることを主は望んでおられます」

 キラは首を傾げる。確かに匿ってもらえるのはありがたい。キラの記憶の中のアスランはいくら考えても変質者だ。

 実は国の宮殿というものには不審者が入り込まないように、ある種の結界のようなものが張ってあると、この間教えてもらった。
 今キラが思うにそれは自分にとって都合がいい。ここを離れたらすぐにあの変態に見つかる、そんな確信があったからだ。


 けれども……なんだか、どこか心に引っかかる。

「それってさぁ、僕が一生ここで匿ってくれと言ったらどうするの?」

 デュランダルさんはキラの主観に偏った話を聞いて、何か楽しいのだろうか?そしてそれはいったい何の役に立つのだろう?たった18年しか生きてないキラの記憶なんてたかが知れている。きっとすぐに話題に尽きるだろう。そうしたらキラは本気でタダ飯食らいではないか!
 いや正直ご飯はおいしいし、無銭飲食とか無賃宿泊とか言われないのは助かる。キラは一文無しなのだから。でもそれはデュランダル側から見たとき、損得勘定で言うなら損だ。



「きっと主もお喜びになります。あの通りお方ですのでなかなか仲の良いご友人をお持ちになれずに、寂しがっておいででしたので」

「そう、なんですか……」

 いささか引っかかるような気はしないでもなかったが、デュランダルの姿を思い浮かべ、妙に納得してしまった。確かに友人知己が多い交際の派手なタイプではなさそうだ。



「うーん…この国の、王様だもんね…」

 現に忙しいらしい。デュランダルもレイも、会える日の方が少ない。その間は部下たちにゆっくりとではあるが、この世界のことを教えてもらっている。それをキラは学校か何かの授業みたいに受け止めていた。



 自分たちの世界と似てはいるけれど、ヘンなシステム。キラの感想はそれだ。ある程度の大枠は女帝アスハが決めるが、その他の細かいことは各国の主に一任されるらしい。


「…で?その大枠に外れたことをしちゃいけないわけだ」

「さようでございます」

 今目の前にいる恋う国の大臣の言葉にキラはふーん、と他人事のように返事をする。



「そのアスハって女帝さんは…面倒くさがり?大雑把なのかな?」

 元々こちらの生まれ育ちではないものだから、時々キラは大臣にとってびっくりするような感想を持つ。

「アスハ女帝はこの世界をお作りになった方ですよ。すばらしいお方でございます」


「あなたは知ってるんですか?」

 すると大臣はゆるゆると首を振って否定した。


「女帝には各国の主君とキリンしかお会いになれません」

「ヘンなの……。じゃ、デュランダルさんとバレルさんは会ったことがあるんだ?」

「はい。即位式の前の新王の挨拶で女帝に、統治者としての認可を頂きに参られます」


 キラはまたしても首を捻る。

「いまいちよく判らないよ…」


 そう。キリンとやらが選んだ人がその国の正当な主君ではないのか?
 何故わざわざ一旦決まったものにさらに許可をもらいに、創世者とやらに会いにゆかねばならないのだろう?

 そして最大の疑問は、その場で否定されたらどうなるのだろう?


 以上、キラの疑問の名を借りた実はこの駄文作者の疑問ちょうど良い機会だからここでぶつけてみる。



「女王陛下も一度はお会いになりますよ。あなたの半身とともに」
「僕の半身……?」
 半身…半身……誰だろうという疑問。間違ってもタイガースでないことだけは確かだがごめん下らない関西ネタ。


「女王の全てを支えるキリンですよ」

 そこまで言われて脳裏にやっと嫌〜な心当たりが思い浮かんだ。そして当然…立ち上がって絶叫した。


「嫌です!あんなのとはもう二度と会いたくありません僕!」


「は……?仲違いでもされましたか?」



「あんなの半身でも何でもありません。いや違う、僕はキリンをかたる変態に騙されてるだけなんです!」

 だが、恋う国の大臣は逆にキラの言い分が理解できない。彼は当然自分の主君とそのキリンしか知らないからだ。


「この世界ではキリンを騙った者には天誅が下りますよ」

次ページへ→

いいわけ:おさらいをすると、この世界はカガリの作った世界ってことです。
次回予告:キラの事情、傾国の事情。


お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さい。