twelve*twelve
<第4章>接触
第28話
「皆の者、抜かりはないようにな。この度の作戦は手際の良さと確実性を重視する」 「もちろんです」 夕方頃重臣たちは縄蓑虫を抱えたまま、部隊通用門の側まで行き隠れるのにちょうど良い岩陰を見つけてそこに潜んだ。因みに陽はとっくに暮れていたが、蓑虫からの寒いという抗議はことごとく無視された。 「一応念には念を入れておけ」 「畏まりました」 その一言で、アスランには麻酔が打たれた。この夜中の間にむやみに騒いで警備隊に見つからない為だ。アスランに説得が効かない以上、作戦上一番の問題だ。 国を統べる者とその半身、そして君主の認めた者は基本的に生の終わりがない。例え何ヶ月も食べられなくなったとしても腹は減るが、それでも生きていられる。 ただし、君主に問題ありと女帝が認定した場合はこの限りではないが。 だからいくらアスランがこのまま何時間も放置され、エコノミー症候群になったとしても、それでも彼に生の終わりは来ない。 まぁ、かなり苦しむだろうがそれも長い生の中では一瞬の火傷、この際ちょうど良いお灸だ。 そうしてその場で一晩を明かし、早朝の太陽が美しく昇った頃辺りがにわかに騒がしくなってきた。 「来るぞ!」 重臣たちは割と大きな門の天井部分に仕込んだロープを握りしめ、身構える。門が開いたら主に部隊が通る地上部分ではなく、見逃してしまうことの多い天井部分からの侵入ルートを選んだためだ。 「準備は良いな」 「そろそろ麻酔から覚めてきました」 「はい!マント、強力磁石ともに完璧です」 そう。コレこそがこの作戦の真髄その名も<ドアに張り付く真夏の蛾作戦> もうちょっと聞こえの良い作戦名はなかったものかと思うが、彼らに言わせてみれば<名より実を取る>のだそうで。 門が開いた。 轟音とともにかなりの数の捜索隊や妖怪たちが門を通って出ていく。その音にかき消されながら、重臣たちはロープを握りしめたままジャンプし、半円形を描いて門の中に忍び込み、そして鉄製の門の枠の内側に、各自手に装備した強力磁石で貼り付いた。 そこで蓑虫のまま鉄門に激突した哀れなキリンの悲痛な絶叫が聞こえてきたが、それすらも部隊行進の轟音にかき消され、全く聞こえすらしなかった。 補足説明:門に挟まれたロープの始末は、外側は待機していたディアッカの妖怪の一人が切って処分し、内側は重臣たちが自らナイフで切断した。 重臣たちのちょっとした悲劇はそこから少し始まる。鉄門がゆっくり閉まってゆく。確かに自分たちは門扉と同じ色…つまり保護色のマントを羽織っているので、薄暗い門の内側からならほとんど見つからない。 であれば何がいけないのか?それは、ズバリ重力だった。 (お………重い……) (頑張るのですぞ〜〜〜) (警備の者が去るまで声を出してはなりませぬぅ) 特に蓑虫を抱えている者が悲劇だった。 彼らは門の警備の者が去るまで、保護色のマントの中で両手両足を不格好に伸ばし、貼り付いたまま耐える。その様子は………まぁ、東●フレ●ド●ークUとかを想像していただけると良いかと思われる。 ……………で、重臣たちは耐えた。大の字になって扉に貼り付いたまま、耐えた。それは新王を戴く重責のため。荒廃した国を豊かにするため。将来ほんのちょっぴり味わえる利権とか既得権益などは、とぉっても気にはなるが今は考慮しない。 耐えて耐えて耐えきって、手足がしびれ始めた頃、門の警備の者は点検を終えて上司に報告すべくやっとこさこの場を去った。 「フフフ。ビバ!このシステム」 どこの宮殿にもあるこの上司への報告システム。その間にこそ警備のタイムラグが出来る。 「降りるぞ!出来るだけ音は消すように」 「了解であります!」 「あぁあ………あのぉっ!うちのキリンは……」 そう、心身共にピンチの者がここにいた。 「蓑虫は先に落とせ」 という非道な命令を、重臣の一人はサックリ実行した。アスランの意志に反し、蓑虫状態のまま放り投げられ、アスランは地面に激突し沈黙した。 「大丈夫。我々と同じくキリンも不死だ。しばらくしたら復活する」 無惨な言いようだがそれもまた事実。蓑虫アスランが地面で呻いている間に、重臣たちは無事門扉を伝って地面に降り、再びアスランを回収したのであった。 「まず、我が国の至宝を探し出す」 「はっ」 「ストライクフリーダムを見つけたら、コックピットでシステムを立ち上げ、いざという時の為の自動帰還システムを入力しておけ」 「判っておる!」 そう。侵入したからには逃走ルート及び手段の確保は抜かりなく。今までの失敗から彼らは着実にナニカを学んでいた。最悪ストライクフリーダムにしがみついてでも帰る気だ。 |
いいわけ:効率、効果を最大限重視した作戦を考えたら、こんなにもバラエティ番組に…。
次回予告:キラは本気でタダ飯食らい
お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さい。