twelve*twelve

<第4章>接触


第27話

 

「今から使うのですか?一応投げ縄も用意しておりますが……」

「我々は確実性を取るのだ。本人の取るに足らない…むしろ作戦の遂行を邪魔しまくるようなよこしまな意志など何をかいわんや!いやこの際いっさい言わせはしない!!!!!」

 そうだ、この際アスランの意志など論外だ。彼がわめけばわめくほど作戦の成功率は低くなるのだから。彼らは着実に門の中に侵入しなければならないのだ。慎重を期したくなるのはどんな素人でも判るだろう。
 アスランを見ていれば誰しもそうしたい気分に駆られるのは致し方ない、などといかにも堅そうな記述が並ぶが、詰まるところ<アスランは本気で邪魔>なのだった。


「おお!確かに」
「安全、確実路線で速攻で行きましょうぞ」

 そして作戦は決まった。荷物袋の中から作戦の遂行になくてはならない数点が取り出される。その内容は、木製ハンマー、目隠し、縄紐、猿ぐつわ、そして麻酔薬などだった。


 ディアッカは彼付の妖怪のカメラを通した映像を見ながら思う。これは可哀想なのか、はたまた自業自得なのか…と。





 そして重臣たちが物騒な物の準備を終えたちょうどその時、獲物のアスランは帰ってきた。

「キラがっ見つかりそうな気がするっwww」

 表現するなら、ウキウキ、ルンルン。死語になりかけているが他に適当な表現がないのでそう評しておこう。

「さすがは我が国のキリンだ。そーいうことだけはめざといのですな」
「お前らはこき下ろすことしか知らんのか!たまには褒めろ」

「ま〜さかっ!我が国も、やっと新王が戴けるかと、思うと、あまりの嬉しさにあなたの勘でさえ喜ばしくて仕方がないんですよぉッッッ!!ぉうりゃぁぁあああああッ!!!!!!!」


「ぐう゛ぁ……ッ!!!!!何をするッッ!!!」



 どうしてキリンがこのような発言をしたか。それはもうお解りでありましょう。
 重臣たちが今し方用意した<新王をお迎えするだけなら絶対に要らないようなちょっぴり物騒なブツ>を無駄なく使用したからだ。


「フゴォッ!モゴ……ムゴ!ヴァムィヲゥブフッ!ヴァハヘ!フォヴォヘ……」
(訳:フゴッ!モゴ…ムゴ!何をする!離せ!解け!)

 何を言っているのか意味不明なのは便利グッズ・猿ぐつわのおかげだ。コレでアスランがいくら絶叫しようとも、遠くまで響かない。


「せっかくこうしたからには、もう離すわけには行きませんな」

 それは即新王の危機に直結する。アスランの反応から新王は<妙齢ツンデレ美少女、アスランの好みに直球ストライク>なのだほぼ間違いなく。


 となると当然。
「危ない!あなたが一番危ないんです」

「ふぉれのふぃはらをむぃふびるはッ」
(訳:俺の力を見くびるな)


「コレで良い。我々に必要なのは無事新王をお迎えすることだ。この作戦に一番邪魔なキリンごときの機嫌を取ることではない」

「ふぁんふぁふぉ〜〜〜〜」
(訳:何だとぉ〜〜〜)



 そう、ここまで来ればキリンの機嫌などどうでもいいのだ。重臣たちには判る。このあふぉキリンが新王を見つけたときにどんな反応をするのかが。その反応さえ判ればもはやキリンなど必要ないのだ。

 しかもアスランなら最悪新王だけを傾国に連れ帰ることさえ出来れば、その持ちうる変態パワーで、自力でどんな状況からも帰還できるだろう。それは予測ではなく確信だった。



 縄でぐるぐる巻きにされ、猿ぐつわをかけられ、目隠しをされた状態のアスランはそれでも抜け出そうと身体をくねくねさせてもがきながら、何かしら叫んではいるが重臣たちにとっては些末な事象だった。





「チェックアウトの精算をお願いします」


「あ………あの、それは一体…」

 不審がる宿の受付の者に臣下の一人は説明する。


「宿泊中はこの末期の変態が何かとご迷惑をかけました。心からお詫びいたします」
 その一言で全て解ったらしい。受付の女性は乾いた笑いをしながら精算を終え、良い旅を、と言って苦笑いをしながら元気よく手を振った。

 もう二度と来るなと言うことらしい。





 道を歩きながらブツブツたれる不平はひたすらキリンの悪口。

「自重しろと言っておいたはずです!」
「やはりバカはバカなんですよ。どうしようもないんですよ、ソレは」
「だいたい我慢しろと言うこと自体、どだい無理なのか………」

「いっそちょん切ってしまえばいいんだ」

 その瞬間、縄蓑虫が極端に反応した。彼の叫び声はハッキリ聞き取れなくても、嫌がっていることはよく判る。

 ちょん切る?一体どこを?なんて野暮なことを聞いてはいけない。賢明な読者様ならすぐにお判りであろうが一々言わないことにして、オブラートに包んで逃げる。





 そして、縄蓑虫を連行したままの重臣たちは、メサイア宮殿の裏手の方から地道に階段を上り始めた。この宮殿の裏側に治安部隊出動のための少し大きな門がある。
 女帝アスハにより国家間の戦争は禁じられているが、国内向けの治安部隊の編成はOKだ。隊のための出入り口がやや大きな門になるのはどの国家も致し方ない。


「捜索隊の出発は明日の朝だ。それまでに門の近くで隠れて待つ。良いな」
「了解です」

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いいわけ:アスランはどうしていなかったかって?それは恋う国の街でガールハントに勤しんでいたかr………。
次回予告:コントに見えるマジメな人たち


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