twelve*twelve

<第4章>接触


第26話

 

「立派な妖怪だったと言うので、もしかしたら傾国の至宝かも知れないと、噂が回っているみたいでね」

「なんと!もしそうであれば、その中に傾国の主がお乗りになっていれば良いのだが…」


「ですが、その辺りを捜索しても傾国の至宝は見つからなかったそうです。もしや何かの間違いで貴国に迷い込んだのかと思いましてね。噂話を信じる訳じゃないんですが、もしかして…という可能性に賭けたいと主も申しております」



「ふむ。私のところには今のところ報告は上がってないが……」

「傾国の新王の問題は、近隣諸国の経済問題に少なからず影響を及ぼします。我が国としても新王の発見へ助力したいと考えています。そこで貴国で捜索する許可を頂きたいと考えていますが、よろしいですかね?」


 ディアッカは慎重に歩を進める。胃が痛い。キリキリ痛む。本来ディアッカにはこんな神経戦は無理だ。いわんやイザークをや(反語)………だ。



「我が国の国境地帯をかね?」

「出来れば少し範囲を広げて。少なくとも搭乗者がいればある程度の移動は可能でしょうから」

 デュランダルは何度か瞬きをしながらしばらく口を紡ぐ。思案するようにも見えたが、ディアッカにはある確信があった。



「傾国の新王の問題は我が国にも深く関係すること。よろしい、私直属の治安部隊にも協力して捜索させよう」

 引っかかった!と、ディアッカは思った。



「貴国の大事な人材を単なる人捜しに費やすわけには行かないでしょう?俺も一緒に探しますよ」

「そうだな、我が国にいらっしゃれば無事に保護することも出来よう。お気を失われているのかも知れないし、道に迷われているのかも知れない。派遣する部隊を再編成しておこう。彼らと一緒に明日にでも出発してくれたまえ」


「寛大なご処置、ありがとうございます」

 デュランダルに頭を下げながら、ディアッカはかすかに笑った。



「今夜は明日に備えてゆっくりしていってくれたまえ。早速部屋を用意させよう。レイ、案内してあげなさい」

「畏まりました。ギル…」


 ディアッカはレイに付き添われて、これからあてがわれる客間……あ〜ぶっちゃけちょっとした豪華監禁ルームに行く。


(頑張れよ、アスラン……)

 ディアッカは部屋に一人になったことを確認し、バスターに指示のメールを送った。心の中で悪友にエールを送る。あんな強がりを言ってはいるものの、もう長い間アスランだって主を見つけられなくて、本気で焦っていたことぐらい知っている。自分がちゃんと見つけられたように、アスランにもちゃんと彼の主君と会わせてあげたかった。





 ディアッカが自分の妖怪に指令を出した瞬間、通信シグナルを受け取った妖怪バスターは主人からの命令を少しだけ破った。
 その妖怪が向かった先は傾国の重臣の泊まっている宿。その部屋に行き、まず確かめたことは<アスランが不在>であることだった。


「すみませんねぇ。うちのアホキリンがとんでもない節操なしで」
「しかも今一番餓えているものですから」
「あなたもうかつに近づかれない方がよろしいですぞ」

 などと口々に言われる評を、ご丁寧にディアッカに送ったら苦笑いしかできないと返事が返ってきた。



「それで、ディアッカ殿からの通信が来たのですな?」

 バスターのコックピットのモニターに伝言が映し出される。
<尋ね人はメサイアにいる>


 ゴクリと重臣たちの喉が鳴った。彼らの大事な大事な主君は間違いなくここにいる。それは傾国の再生を意味していた。

<国境地帯にこの国からも捜索隊が派遣される。俺もその隊についてゆく。その時メサイア宮殿の門が開く。そのチャンスをお見逃し無きように>


 デュランダルが国境地帯に、傾国の新王を乗せているかも知れないストライクフリーダムの捜索として直属の隊を出す、すなわちこのメサイア宮殿の警備に弛みが出ることを示している。



「判った。して、時はいつだ?」
<明日の朝>

「よし!ディアッカ、くれぐれも感謝致します。それと、あなたも気を付けてください」

<オーケー、サンキュ!>



 傾国の重臣たちは奮い立った。直属の隊の出発時には、必ず宮殿内に通じる門が開く。チャンスは捜索隊が門を通る僅かな時間の間だけだ。そのゴタゴタの間に誰にも見つからずに門の中に入らなければ、宮殿内に侵入する手段は閉ざされてしまう。


「決まった。皆の者は本日の午後でチェックアウト。メサイア宮殿の軍通用門へと向かう」
「判りました!」

「それと、例の物の用意を」

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いいわけ:メカニックに感情を持たせるのは、大嫌いなので出来うる限り押さえるのに苦労しました。本当に言い訳だ…。
次回予告:<新王をお迎えするだけなら絶対に要らないようなちょっぴり物騒なブツ>


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