twelve*twelve

<第3章>女王の事情と忍び寄る影


第24話

 

 この場にいないという女官長に相談し、キラの言う妥協案に決まった。キラ、初権力をふるった瞬間だった。


 ………で、結局妥協案はと言うと

その1 一定の収入以下の者に、宮殿に来たら僅かながら下賜があるとビラを貼る
その2 先着10名様に折詰に詰めたおかずを無償で供与

 だった。


 ま…このことは物語上たいした挿話ではないし、サクッと結論が知りたいと思われるので途中経過をはしょると、その日から宮殿には長蛇の列が出来、若干デュランダル国王の支持率が上がった。コレで次の選挙に………あ、いや…選挙は関係ないか。





 そんなこんなであっという間に数日が経った。その頃にはキラはこの国の女官たちとかなり仲良くなっていた。
 とはいえ、未だになかなか慣れない<オンナノコの世界>は相変わらずキラを苦しめ続けている。

 その間にこの国の人たちから、この世界のあらましを聞かされた。世界を統べる女帝アスハのこと、国王とキリンの役割、国民の生活。マジメに話を聞く度に、キラの中である感情が沸々とわき出てくるのは否めなかった。それは<後ろめたさ>


「だから…その、旅行とかだったらいいけど、本格的にトンズラしたらみんなが大迷惑って事なんだよね?」

 歯に衣着せぬ………と言えば高尚な言い方になるが、キラの表現はぶっちゃけ露骨だ。


「ま…まぁ〜〜〜さようでございます」

 そこでキラははたと気づく。出来うることならばこの先一生気づきたくなかった悪夢に。
「……と言うことは、今僕がココにいるだけで、本当の僕がいなくちゃならない国は潤うって事?」

「すぐに潤うわけではございませんが、妖怪や盗賊の出没率が減ったり、災害が起きにくくなりますので、国の者の生活レベルの向上に大いに役立ちます」


 ああなんてマジメな話なんだ!ところがキラの脳裏には別の例えが思い浮かんでいた。



「要するにRPGなんだ?」

「……………は?????」


 いやいやキラさん、アナタのいた世界のゲーム機とかゲームの例えは、正直相手には伝わらないと思います。ええ、全く。以上駄文作者のツッコミ←あ、久々。


「なんて事だ。僕が主人公だったとは……」



 RPGならこの先、剣術使い(攻撃)と魔法使い(能力向上、攻撃)と僧侶(ヒーリング)を集めて4人パーティーを作らなければ…といったところなのだが。
 あと、雑魚敵を倒して(何故雑魚敵が流通通貨を持っているかは非常に謎だが)、武具(ミスリルの剣とか白銀の鎧とか)を買ったり、(旅の途中何故か存在する)修行場で魔法を覚えたり、薬局で(HPやMP回復に大事な)薬草を買ったり、他にも作者による様々な楽しいイベントが用意されているはず。。。

 だとすれば一番に気になることはと言うと。


「妖怪を倒したらお金がもらえるとか、そーいうの?」

 この時キラに説明していた臣下は、彼の人生で一番頭の上に?マークを浮かべまくった。

「まず妖怪はお金などもってはいませんが???」


 その答えはひどくキラを驚かせた。
「ぇええッ!!?ボランティア!!!!!」

「………は???」


 ちなみにボランティアという言葉はこの世界に伝わっていなかった。露骨な説明をすると、<善意のタダ働き>だ。キラの頭の中でめまぐるしく考えは推移してゆく。


 RPGの主人公は旅に出るのがセオリー
          ↓
 しかしこの世界では敵を倒してもボランティア
          ↓
 骨折り損のくたびれもうけなら行きたくない
          ↓
 女の子ライフさえ我慢すれば、この宮殿でお世話になっていた方が安全
          ↓
 けれどもそれではやはり無賃宿泊
          ↓
 債権債務関係(いわゆる貸し借り)が出来るのはいろいろと面倒だ
          ↓
 何かココでお金儲けが出来る方法は?
          ↓
 よく解らないならとりあえず聞いてみるのが一番。



と言うことで、相手には何の脈絡もないようで申し訳ないが、この際一々説明していられないので今出たばかりの結論を単刀直入に聞く。


「僕に出来る割のいいアルバイト無いですか?」


 すると案の定、目の前の彼は更に混乱した。

「あるばいと……って何ですか?」
「非正規雇用の短期短時間労働のことです」


「あ…あの、女王陛下???」

 意味が分からない?ま、当然だろう。



「僕のしてることはやはり無賃宿泊だと思うんですが…」

 すると彼は口をひな鳥のように大きく開け、血の気が引きまくった顔で全力で首を横に振った。


「そのようなことはございません!女王陛下は、この度我らの主のお客人としてのご逗留でございます。この事はわが主も承服していること」

「よくわかんない…」


「主が招きましたお客人でございます。女王陛下には主が望まれるだけお話をしていただきたく、こちらにおいで頂いているのです」


「話をするだけで儲かるなら誰も苦労しないよ…」
 キラの生きてきた世界にそんな楽な職はない。あるとすれば一部の夜の世界かはたまた詐話師か振り込め詐欺か。それもどんどん厳しくなってきている。


「いえ、なかなかこの地を離れられない話が主に、どうぞ女王陛下の知る話をしてくださいませ。主はあなた様のお話をとても喜んでおられます」

 なんだかどこかここか胡散臭い気がするのは、こういう話を聞き慣れないせいか勘が働くせいか。この時、キラは唸りながらも不承不承OKした。

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いいわけ:珍しく緊迫した場面なので、むりやりおふざけを入れた感がしますが、お許しを。
次回予告:すぐにでも薬局で胃薬を買いたい衝動。第4章に入ります。


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