twelve*twelve
<第3章>女王の事情と忍び寄る影
第21話
「壊しちゃ…怒られるよね………」 さすがに一人になった寝室で、見事な細工の施された美しい壺や数々の芸術品的置物を見てつぶやく。 「っていうか、壺とかベタだよね〜」 ついあらぬ方向に視線がそれる。ベタだ←あ…ちなみに観賞魚ではないのだよ。済まないねぇいいところに入る本当に不必要なプチ情報。 安全な距離から壺を見ながらキラは考える。 ちょっとだけならと壺に触れる ↓ ガタガタ震える手で触ったせいで壺は揺れる ↓ 焦っているうちに割れてしまう ↓ ガシャンという大きな音に驚いて人が部屋に入ってくる ↓ 割れた壺を真っ先に発見され………。 ↓ それは高かったのに………と今までの優しさが打って変わって、人々はよってたかって難詰し始める。 しつこいようだがここにキラを弁護してくれるような人はいない。 ん?アスラン? それはキラの方からごめんだ。アブないったらありゃしない。 「きっと、弁償しろとか言う話になるんだ。僕が無一文だって判ったら、身体で払えとかなんとか………」 ベタな設定にベタな結果を自分で勝手に脳裏に浮かべ、キラは嫌な予想に真っ青になり身震いした。 思いこみとは恐ろしいものだ。 第一そこにある壺が高価な物だとは限らない。 第二にデカい壺というのは普通そこそこ重量があるので、ちょっと触れた程度では倒れたりしない。 ま…そんなことはどうでもいいのだが。 「お金なんて持ってないから弁償なんて出来ないよ。触らぬ神にたたりなし〜〜〜」 などと言いつつ、キラは抜き足差し足でそろりそろりとベッドへ行き、中へ潜り込んだ。 「あ、ふかふか。気持ちいい…。ホテルの部屋みたい」 すると案の定、一日の疲れがどっと出てすぐに眠り込んだ。 翌朝、キラがもそもそと目覚めると、ベッド脇には既にルナマリアとメイリンがいた。 「ぅわっ…わっ!」 「おはようございます、キラさま」 「おはようございます」 「びっくりしたよぉ…」 上掛けで半ば顔を半分以上隠しながらキラは真っ赤になる。だから<可愛い!!!>と言われるわけのだが。 「よくお眠りになりましたか?」 ルナマリアが聞く。眠るも何も、こんな見知らぬ地で見知らぬ部屋で覚えていないぐらい熟睡した。そのことがキラには恥ずかしい。 「お………起こしてくれても………」 部屋の窓の外を見る限りたぶん時間はお昼近いのだと思われる。 「キラさまはとてもお疲れでいらっしゃいましたので。それに、とても可愛らしい寝顔でしたので」 「………………。そんな…女の子じゃないんだからぁっ」 キラは更に顔を真っ赤にさせて恥ずかしがるが、その前にキラはもう完全に女の子であることを失念していた。 「とてもお可愛らしい女の子ですよ。キラさまは」 などと言われて改めてキラは自分の身体を見やり、げっそりした。 「夢なんかじゃ…無かった、んだ………」 思わぬ性転換をした人はこの世にはいないだろうが、もしそうなった場合誰しも思うことは <コレは夢!きっと夢!だから、目が覚めたら夢からも覚めるさワーハハハ>。 けれども、キラの身に起きた事実は現実だった。誰がどう見てもキラはスタイルの良い美人だったのだ。寝る前にほどいてもらった長い髪がゆらゆらと揺れている。それを一房つまんでキラはげんなりする。 「なんで…こんな事に……」 「それは、そのお姿こそがキラさまの真実だからです。昨日陛下も仰っていましたように、この世界では姿形をごまかすことは出来ません。ましてこのようにお美しくていらっしゃるのなら、なおさら隠す必要はないと思われますが?」 「ルナマリアさん〜。僕は男の子だったんだよ。それが急にこんな事になって、とんでもない変態に付け狙われて……不運としか言いようがないよ」 「大丈夫ですよ。その変態から、守り通して見せますから」 「本当に?ここにいたら大丈夫?」 「ええ。ここなら安全です」 そこでキラははたとあることに気づき、申し訳なさそうに言い出す。 「ごめんねルナマリアさん。あぁあっあのさ…僕……変態にここに連れてこられたばかりで、その………お金とか持ってないんだ。だから…その、宿泊費とか払えないんだけど…」 |
いいわけ:女の子になった身体を恥ずかしがるキラは、最高に可愛らしいと思います←萌え。
次回予告:うふふ〜あはは〜〜w捕まえてさし上げますわよぉ〜〜〜www
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