twelve*twelve

<第3章>女王の事情と忍び寄る影


第20話

 

 はい、久しぶりのマジメな話の時間がやって参りました〜少々クソ真面目な話をしますがすぐに終わりますので今しばらくお待ちください、と能書きをたれてみる。


 それはキラの希望をうち砕いた。

 じっさい、アスランがキラのいた世界に行ったように、行き来できる方法がないわけではない。だが、君主であるキラが元の世界に戻り帰ってこない場合、傾国は滅びたも同然に荒れる。
 隣国の荒廃はデュランダルにとってもマイナスだ。そりゃ当然、隣の不況の煽りを自分たちが食う羽目になるからだ。世界が繋がっている限り最悪<世界同時不況>の可能性はある。出来れば自国だけ良ければそれに越したことはないが、現実はそううまくはいかない。

 以上、久々のマジメな話終わり。肩凝ったぁ〜〜。





「どうしてですか!僕は普通の高校生で…女の子なんかじゃなくって……。あなた方の言う女王でも何でもないんです。きっと人違いなんです」

「そんなはずはありません。アスランがあなたを選んだなら、間違いなくあなたは貴い身分のお方です」


 アスラン、あのコスプレ変態は確かそんな名だったように思うが、よく覚え…たくもない。レイの言葉にキラは瞳を閉じて首を振った。


 違うと思う。そして、強烈に否定して、関係ない人になりたい(希望)。



「仰ってる意味がよく解りません」

 解りたくもありません。←本音



「姫、この世界ではキリンに選ばれなければ国を統治できない。宵闇の髪の男は君に頭を下げなかったかね?」

 宵闇の髪の男。あの変態だ。


「下げました。膝をついて……僕をモノにするって………」

 キラの話の後半は通常ではあり得ない。確かにアスランはキリン切っての女好きだった。


「やはり君で間違いないだろう。どこにゆくにしても最低限君はこの世界の人間だ。もともとここの世界にいることの方が正しい姿ということだ」

 今、デュランダルはとても優しくキラに語りかけた。


「そん………な…。じゃ、僕はこのままずっとここにいなくちゃならないんですか?このヘンな身体を抱えて…」

 さめざめと泣き始めるキラにデュランダルは優しく手を添える。


「いいえ、姫。そのお身体が姫にとって本当の姿なのです。この世界では本当に自分の姿を隠すことなど出来ないのですよ」

「……え……………」


「男の子であられたことの方がむしろ姫にとって異常だったのです」

「そんなっ!姫とか……言わないでくださいっ」


「ああ、姫はこの世界に来られて間がなかったのだったね。よろしい、手が空いている間を利用して、私がこの世界のことをあなたに教えて差し上げましょう」

「デュランダル……さん…」


「女帝アスハに許可を請いに行くのは、今から話すことをご自身で判断された後でも差し支えないでしょう?」

 状況が解らない今キラは、はいと言うしかなかった。



「私の手が空いていないときは、私のキリンか他の者にあなたのお相手をさせよう」

「その…あなたのキリンって?」

 全く慣れない世界で、未だ聞き慣れない言葉だった。


「ここに控える私の腹心、レイ・ザ・バレルです」

 キラはあることを思い出し、あーっと大声を上げた。



「そうだ!僕はキリンとか名乗るコスプレ系ド変態に誘拐されて……ここに連れてこられたんだ」

「姫…」

 すると打って変わってキラはデュランダルの予想に反して、彼の服の裾を掴みながらここにいさせてくれと懇願した。


「たっ助けてください!僕は…僕はアキバ系の変態勘違いホスト野郎に追われているんですっ!見つかったら確実に襲われますっ」

 デュランダルは優しく微笑んでキラの助力を申し出た。


「心配要りませんよ、姫。姫がこちらの宮殿にわたしの友人として逗留している限り、姫の御身の安全は保障できます」

 しつこく姫呼ばわりされていることなど意にも介さなくなるほど、キラはせっぱ詰まっていた。だから、デュランダルの目尻にいささかの含みがあることなど、気づきもしなかった。





 その日はとても疲れたので話はおしまいになった。女性物の豪奢な衣装から部屋で休むためだけにまたお着替えをしなければならなかったことは、それはそれで苦痛ではあったがアスランに追いかけ回される恐怖に比べればなんて事はなかった。キラの周りを囲む女官たちは優しいし、第一ここではキラを追いかけ回すような人はいない。

 とてつもなく広いであろう宮殿内は広すぎて何がどこにあるのかも分からない。匿ってもらう身のキラにとって、どこでも自由に行けるわけではないが、そのことも全く気にならなかった。どこに行くにも女官と一緒だが、アスランと一緒にいた時ほどのせっぱ詰まった感はない。



 ホッと息を付いて寝室を見渡す。

 まず、やたら広い。そして配置された調度品などは装飾がすばらしく、いかにも高価に見えた。いわゆる<客間>かな、とも思うがそれにしても広い。キラは先ほどの人物が<国王>と呼ばれていたことを思い出し、それならこの広さも当たり前か…と妙に納得した。

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いいわけ:デュランダルのセリフ「姫」「姫」が楽しかった(笑)
次回予告:キラはね、基本的に庶民なんです(苦笑)


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