twelve*twelve
<第3章>女王の事情と忍び寄る影
第16話
固まったままのキラから返答がないことをいいことに、無情にも部屋の扉は静かに閉まる。 閉められた扉の真ん前で、膝をつきキラはしばらく灰になっていた。灰状態のまま夢遊病のように歩いてベッドにぼふんと横になる。 すっかり女性の身体になってしまった自分。特にふくよかな形のいい胸はいやがうえにも気になってしまう。今となっては今まで気にも止めなかった男の身体が懐かしい。 「い、ゃだ……。そんなの、やだよぉ………」 しばらくしくしくと泣いていたキラは、そのまま泣き疲れて寝込んでしまった。 その頃。変態呼ばわりされ警戒されまくっているとある人物プラス愉快なご一行は、すんなり¥国を出国し、キラの元に確実に近づいていた。 「…で?見つかったお前んとこのご主人様は相当な美人なんだな」 ¥国のキリン、ディアッカがアスランに話しかける。 「おぉおおっ俺のだからなッ!!!取るなよ!ディアッカだからと言っても許さないからな!」 宵闇色の髪を持つ変態ははじめっから牽制する。 ディアッカはため息をついた。 「するかよ!俺にはイザークがいるんだ」 「いんや!さすがにお前でも心配だ」 「心配なのはアスラン、お前の脳内構造だよ」 とたんに周りを取り囲む傾国の重臣たちから賛同の声が次々と挙がる。 「だいたいお前一人では全く当てにならないから、¥国のディアッカさまにご助力いただいているのですぞ!」 「少しは分別というものを弁えてもらいたいものです!」 「申し訳ございません。うちの頭の弱い変態アホキリンのせいで、ディアッカさまには大変なご苦労とご心痛をおかけいたしますこと、保護者としてお詫び申し上げます」 「コラ!誰が保護者だ!俺の方が身分は上なんだぞ」 ところがアスランの足掻きは、もはや誰も聞いてなどいなかった。 「いいよ。コイツの性格は俺が一番判ってるからさ」 「申し上げようもございません」 この一行の中でまともなのは傾国の重臣だけだった。 「ま?俺だって可愛子ちゃんは好きだけど、アスランほどじゃないし」 「ディアッカ!」 確かにディアッカとてアスランの悪友ではあった。 「イザークの奴見つけてからは、アイツのそばにいる方が多くなったし。だからアスランだって主君を取り戻せば変わるんじゃないの?」 しかも相当の可愛子ちゃんなようだし?とイタズラっぽい視線で付けくわえる。が、それこそが傾国の重臣たちにとっての最大の悩みの種であるのだ。 主君は戴きたい。だがアスランに囚われては困る。 傾国の重臣たちにとっては、戴く主君はどんなに凡庸でもいい、政治さえしてくれたらいいのだ。主君に能力無き場合は、重臣たちの総力を持って補えばよいだけなのだから。 問題なのはアスランの強攻策による政治的空白だ(どうだ!こう表現すれば聞こえは良いだろう。現実はホラ…アレだぜ?)。国を治めるべき君主はいても、国政を執ることが出来なければ意味がない。その為に、キラと呼ばれる少女を取り戻すことと、アスランの魔の手を未然に防ぐことの両方を目的にこうしてぞろぞろと付いてきている。 「この変態アホキリンめがあなた様のような立派な方であればよいのですが………」 重臣は嘆息する。 「ディアッカのどこが立派なんだッ」 その変態に一々茶々をくられ、話さえマトモに続かない。こんな状況でこの先不安になるなと言う方が間違っている。 「ん〜?ちゃんと政治をしてるところとか?」 「今でもお前の武勇伝は聞くぞ」 「そういう余計なことは耳が早いのなお前……」 「俺の方がお前より何倍もいい男なんだ。バカにするな…」 相変わらずのアスランにディアッカもため息をつく。 「お前な…めでたく彼女と一緒になれても、ちゃんと国のことはしろよ。じゃないと彼女もろとも身を滅ぼしちまうぞ」 「………。判ってる………」 アスランにも判ってはいる。 判ってはいるが、身体の約一部分が「理解は出来るが納得は出来ない」と、だだをこねているだけだ。 キラの住んでいた世界とは勝手の異なるこの世界。 広い大地を12に分割し、それぞれ王制を敷いて統治させることとしたこの世界の主は、「働かざるもの、食うべからず!」と言って重要なシステムを構築した。そう、既にご存じ<どちらかでも国政を怠れば、王もキリンも共倒れシステム>だ。 「カガリがあんな事決めたから……」 カガリ・ユラ・アスハ。この世界を統べる女帝の名だ。 「人のせいにするな」 「好きな子と一緒にいたいという純粋な気持ちは、変わらないはずなのに……」 しょぼんとなるアスラン。いくら可哀想に見えても彼の言を肯定するわけには行かなかった。 何故かって? 「24時間フルタイムでそれをするから問題なんだろう!」 |
いいわけ:アスランとディアッカは、普通に話していても漫才状態。
次回予告:脱がしたい人たち
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