twelve*twelve
<第3章>女王の事情と忍び寄る影
第15話
「元いた世界じゃ僕は男で……、どうしてか判らないけどこっちに無理矢理連れてこられたらこんな身体になってて……それを知ってもなお僕に迫ってきて…どこもかしこもビンビンに立ってた…」 キラは胸を隠すように腕を交差させて、半泣きになる。 その姿はどこからどう見ても<可愛くてか弱い女の子が痴漢にでも遭って困りはててる>姿だった。さすがのルナマリアやメイリンにさえ保護欲をかき立てさせるほど。 「キラ女王陛下…」 「女王なんて言わないで!僕はキラ!キラでいい」 「ではキラさま、私どもや私どもの国は、キラさまの御身をその変態からお守りします」 キラは降ってわいたような都合のいい話を鵜呑みにして、目の前のルナマリアにすがる。異世界の地で、知った人は誰一人いないなか、目の前にうまい話があれば誰だって飛びつくだろう。ましてや女の子になってしまったというショックは、キラからいつもの判断力を完全に奪っていた。 「本当に?」 「ええ、その変態が全ての根元でしょうから」 「全部彼のせいだよ。僕がこうなったのも。僕…考えてみたけど人には言えないほど悪いことなんか何もしてないのに」←多少はしているという自覚はあるらしい。 ぐすぐすと泣くキラ。そのキラの手をそっと取り、ルナマリアは優しい瞳を向ける。 「こちらの宮殿においでであれば安全でございますからね。私どもの主君とも仲良くお話をしてくださいまし」 キラは無条件にコクコクと女官の言に頷く。退出しようとする彼女たちに、男性ものの服はないかと聞いたが、それはきれいサッパリあっさり却下された。 「その姿が本当のキラさまのお姿なのですよ。ご自身のためにも一刻も早くお慣れいただかねばなりません」 正直な感想を言おう。嫌だ。 「で…でも……っ」 いかにも女性向けの衣装は、キラにとって慣れないものであり同時に居たたまれないほどの恥ずかしさを覚えさせる。 「後ほどまた参ります。キラさまにはお湯浴みをなさっていただかねばなりませんから」 キラは頭の中で言葉を噛み砕く。湯浴み、イコール風呂だ。 「おぉおおおおっお風呂………って………?」 とたんに慌てて、ルナマリアのそばに走っていき、彼女の肩をがっしと掴む。キラの頭の中で彼女たちの言葉が猛スピードで咀嚼されていった。 <キラはお風呂に入る> <女官は後ほどその為だけに来る。ちなみにこの時点では人数は不明> 何しに? 今思いつく答えの選択肢は4つ。 1、案内。 2、監視。 3、手伝い。 4、不道徳なその他の事情。 どれを取ったところでお風呂に入る、と言うことはいったん脱がなければならないわけで。 そして当然上がったら、またお着替えになるわけで。 この衣装は一人では着られないから、ほとんどを手伝ってもらうわけで。 男であったときも、むやみに裸を見られて気持ちのいいものではなかったが、ましてや女の子に変わったこの慣れない身体をまた触られ(まく)ることになるわけで。 「こ………この部屋に小さな浴室とか無いの?」 一人で入る、というかすかな選択肢を捜す。が、その期待は木っ端微塵にうち砕かれた。 「ございません。こちらのお部屋は寝室のみでございますよ」 寝るためだけの部屋。このだだっ広い部屋が、だ。普通ホテルとかなら、ちっちゃくても簡単なユニットバスとかあるではないか!それが、無いらしい。それでもと思い辺りを見渡してみたが………徒労に終わった。 ルナマリアは続ける。 「それに、キラさまはもう一般庶民のお身分ではございませんので、私どもと他の女官たちが全ての介添えをさせていただきます」 「全………て……………?」 冷や汗がだ〜らだら落ちる。 全てって、その………全部? 嫌な予感するけどプライバシーとかって全くなし? 続くメイリンの笑顔の返答。それはキラの目の前を一瞬で真っ暗にさせるに充分の威力があった。 「もちろん。私たちが責任を持って、ご案内からお着替えまで全てをお手伝いいたします。ご安心ください、浴場の中も全て女性ばかりですから。キラさまはお温もりになられるだけでいいんです」 それはこの時点のキラにとって刑の宣告に等しかった。 彼女たちの言によればきっとキラ自身は確かに何もしなくていいのだろう。 だがその代わり、キラは女官たちによって服を脱がされ、身を清められ、湯船に浸かっている間もガッツリ視線の集中砲火&その場にいるだろう女官たちのひそひそ話。そんでもってきっとまた新しい衣装に着替えさせられ、髪を結われて髪飾りを付けられる………と。 |
いいわけ:当然の展開のハズなのですが、書いてて楽しかった…。
次回予告:「24時間フルタイムでそれをするから問題なんだろう!」
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