twelve*twelve

<第3章>女王の事情と忍び寄る影


第14話

 

「わかってるわよ!でも、羨ましいんですもの」


 そう言って妹をキラの前に突き出す。すると妹もおずおずといった呈ではあるが姉と同じようなことをした。

 やっぱりか!この部屋にはきっと隠しカメラとか盗聴器とかがあるのだろう(※キラの憶測)。



「やッ!ちょ……やめてくださいっ!僕に何するんですっ」


 キラは精一杯後じさりしながら瞳に大粒の涙を浮かべていた。だが後ろは壁。追い込まれて逃げ場はない(ようにしか見えない)。

「やめてください!僕は…僕は女の人にだって襲われて喜ぶ趣味はないんです!あ…あなた達はその…上の人に言われてきたんでしょうけど、僕は…僕は自分の身ぐらい自分で守りますからッ!!!」



 今、キラはココを遊郭か何かだと思いこんでいた。調教される…と、本気でガタガタ震えていると、女官たちはすっと身を引き居住まいを正した。そして深々と頭を下げる。

「大変失礼をいたしました。私どもはあなた様のお世話を任された女官でございます」


「また!そんな嘘ばっかり!」

 信じられないのはもっともなことだ。だって部屋に入るなりキャーキャー言いながら、姉妹でいきなりキラの胸を触り倒してコレなのだから。
 余計な忠告だが、いきなり触るのは良くない。例え女性であってもちゃんと許可を取って触りましょう。



「嘘ではございません。あなた様は傾国の女王陛下、そして私どもは我らの主より陛下のお世話を仰せつかった者です。私は姉のルナマリア、そして彼女は妹でメイリンと申します。以後お見知り置きくださいませ、女王陛下」


 キラはぽかんとして思わず胸の前で固く握りしめていた手をゆるめた。

「と言うわけで早速ではございますが、せっかくのお衣装が乱れております。直しますのでどうぞお手を」

 ルナマリアがそう言って手を差し出したが、キラはふるふると首を横に振った。



「いい、よ。一人で…するから」


 だって、だって!差し出された手の上に自分の手を乗せたら、今度こそぐいっと引き寄せられて……キスとかされて………以下略。



「いいえ。これが私たちの仕事。それにお一人でのお着替えは大変難しゅうございますよ」

 ルナマリアは再度キラに手を差し出した。有無をいわさぬ雰囲気にその手をキラは取らざるを得なかった。この時キラが考えていたことは、何とか説得してナマ本番だけは許してもらおうと言うことばかり。





 キラの怪しい想像とは違い、優しい力で引き寄せられ、床のラグの上に立ってくださいと言われたので恐る恐る立った。
 すると本当に二人が着衣の乱れを直してくれ、結われた髪に櫛を通してくれた。でも、それも済んでしまうと不安になる。


「これから僕は、どうなるんですか?僕は……売られたんですか?」

 二人の女官は頭に?マークをいくつも浮かべ、けれどもキラの質問を否定した。



「ご安心ください。ここは恋う国を統べる国王陛下の住まう宮殿でございます。女王陛下はこのたびご友人としてこちらを訪なわれたのでございますよ」

 その言葉遣いがくすぐったくて、キラは慌てる。彼女たちの言っている内容は解るが、意味がいまいちつかめない。



「そんなんじゃないよ。僕はそんな立派な人じゃない。その…女王とか陛下とか呼ばないでくれる?変態に無理矢理ここに連れてこられて迷惑してるんだ。きっと人違いだと思うんだけどね。あ、名前はキラ。キラ・ヤマトと言うんだ」

「すてきな名前でとても似合っておられますよ。キラさま」


 メイリンの言葉にキラは心にちくりとくるものを感じた。以前どこかで同じようなことを言われたような気がする。そのときはとっても嫌だったけど今はそんな感じがしない。



「そ……そ、ぅ……かな………?」

 キラは少しだけこの女官に心を許した。





 そしてこの女官たちといくつかの点について話し、そしてキラは困った事実を再確認させられた。


「そう、ここはやっぱり僕が住んでた世界じゃないんだ…」

 今キラが着せられている衣装も、ルナマリアやメイリンが着ている衣装も、どこかの時代劇に出てくるような民族衣装に見える。だがそれがこの世界では普通の衣服らしい。国によってある程度の違いはあるらしいが。



「キラ女王陛下…」

 そしてキラにとって最大の大問題。



「男にも………戻れないんだ…」


 思わず脳裏にある人物が浮かび、キラはあまりの薄ら寒さに身震いをした。


「あら!お部屋の温度が合っていなかったでしょうか?」

 現実に引き戻され、キラはブルブルと首を振って否定した。


「違う!そんなんじゃない。そんなんじゃなくって…その………」

「?」



「僕………僕っ実は変態に身体を狙われてるんだ」


「えぇっ!?」

 メイリンが驚きの声をあげた。彼女たちから見れば驚愕の話。どこの世界に一国の女王の身体を狙う変態がいるというのか。


 そもそもこの世界のシステム上、女王の身体を狙ったところで全く意味がない。だって例え自分のものにしたところで、国が荒れ彼女の身が滅んでは意味がないのだから。

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いいわけ:キラ(♀)を単身ホーク姉妹の前に放り出せば、こんな事になると予想されるのです。偏見ですか?
次回予告:嫌な予感するけどプライバシーとかって全くなし?


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