Please sit my side.

第4章

 

第8話 「まぁ?別にあなたに認めていただかなくてもいいんですけどね」

「ごめんキラ………」

 アスランは乾いた笑いをしながら涙をザバザバ流していた。


 その彼の目線の先、キラは上掛けで身体を隠しながら真っ赤になっている。その姿がひどくかわいくて、何もなければそのままベッドにダイブしていっているところだった。





「母上が………キラと一緒に帰って来いって………」



「……………え”………」


 キラが固まったのはいうまでもない。

 正直、いい思い出はない場所だった。





「俺が言うのも情けないんだけどさ……あの母には勝てないです…」


 キラは少しあさっての方角に視線を送り、そして同意見だと言った。

「僕もそう思う…ってか、アスランのお母さんには誰も勝てないよ…」



「ごめん………一緒に来て…くれる?」





 という言い方をしたが、実際には他に選択肢はなかった。仕方なく、車でお出かけすることになり、40分後、あの大豪邸の玄関前に車は到着した。







 そこには既にレノアが待ち構えていて、着くなりアスランに一言、遅い!と言った。そのまま広いリビングに通されると、キラの知らない人物がそこにはあった。


「よくもノコノコと帰ってきたものだ。この間のラクス嬢との話、断る理由などないだろう!」

 その人物、パトリック・ザラはいきなり頭ごなしにアスランを睨みすえる。

 その眼光に気おされて、キラは思わずアスランの後ろにそっと身を寄せた。



「あります。もともと私とラクス嬢にそんなつもりは毛頭ありませんでしたし、このことは彼女も快諾済みです。父上にとやかく言われる筋合いはありませんよ」


「生意気を言いおって!お前が医者を続けていることも、私は許したわけじゃないぞ」

「何とでも言ってください。俺はもともとここを継ぐ気はありませんから。グループのことは父上のお好きなようにすればいい。俺は俺で自分の幸せを掴んだんだ。それでいいじゃないですか!」



「幸せ?フンッ家出息子が何を生意気に………アスラン、お前の後ろにいるのは誰だ」


 ここに至ってパトリックは初めてアスランの背後に隠れている姿を認識した。


 だがそのせいで余計キラは怖がっていた。



 その彼女を抱きかかえるように支えながら、アスランは宣言する。それはまるで絶縁状のように。


「俺は、正式に婚約するんです。彼女…キラ・ヤマトさんと。だからもう父上は……ん?」



 語尾に疑問系が入ったのはなぜか。


 それはキラの姿を見たパトリックが驚愕した表情で彼女を凝視していたからだった。

 そしてそのまま、両腕を中途半端にあげ、まるで幽霊のように近づいてきた。その姿がキラをさらに怯えさせない理由にはならない。





「アスラン…」

 怯える彼女を、騎士が姫を守るように抱き込むアスラン。キラの瞳に涙が浮かんだその時、パトリックの表情が変わった。



「な…泣いているのか?」


「今さら何を言ってるんです!こんな状況で彼女が不安にならないわけがないでしょう!」


「泣かせるつもりはなかったのだ…」

「それを今さらあなたが言いますか!」



 その時、傍観者かと思われたレノアが割って入った。


「あぁら、私の認めた可愛子ちゃんを驚かせてはいけませんよ!まぁ?別にあなたに認めていただかなくてもいいんですけどね。そしたら彼女の絶品のおかずはアスランと私で山分けねv取り分が減らなくて、いい話だわ」


 一種、場違いな話題にパトリックは食いついた。



「そ………そんなにおいしいのか!?ん?待てよ、と言うことはお前はもう食べたのか!」


「ええv彼女がお手洗いに行っている間に。だって冷蔵庫を開けたらおいしそうなおかずがきちんと並べてあったんですもの。つまみ食いしたくなるのが人間ってもんじゃない?」


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言い訳v:ここのパトリックさんはかなりオカシイ人です。本編の厳格なイメージはカケラすらありません。そして、本編でついぞ出ることのなかったレノアさんは容赦なく黒属性です。
次回予告:ザラ夫婦漫才。所詮夫は妻に頭が上がらないものと、相場が決まっているのです。さっくり誘導尋問に引っかかっております。

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