Please sit my side.

番外編・捨てる神拾う神<リクエスト駄文>

 

第2話 「無理ですね。今俺は幸せの絶頂にいるんで」

 彼女の身体を強く抱き込んで、相変わらず耳元で語気が自然と強くなった。


「俺のところに来て欲しい」


「アス…」

「ずっと、これからもキラと同じ景色を見ていたいから」



 Please sit my……プルルルル…プルルルル…プルルルル………。全く、いいところで着信がかかるものだ。ここまでくれば、見張られているような気がしないでもない。


 ごめん、と謝って電話に出ると、あまりかかって欲しくない相手だった。気を利かせて別の部屋に行こうとする彼女を手のひらで制し、母と話す。


 内容は、今すぐ帰れないかと言うことだった。



「無理ですね。今俺は幸せの絶頂にいるんで」

「あらそうだったの!それは初耳ね。後で色々報告してもらうわよv」



「……母上…」


「そんなことよりも、約一名がカンカンなの。1時間だけでも空けられないかしら」





 アスランはしばらく思案し、いいですよと答えた。母との言葉にならない会話は既にできていた。


「キラ、聞いてたと思うけど…」



「ふぇ?何を?」


 素っ頓狂な声に案外びっくりしてふり向くと、彼女は冷蔵庫に頭を突っ込んで何かゴソゴソとやっていた。


「何してんの?」



「何って?冷蔵庫の整頓。だってアスラン忙しいでしょ?パッと空けてすぐ判るようにしとかなきゃ」


 見てみると、これまたきれいに収納済みだった。しかもご丁寧に、料理の名前や賞味期限などのメモも貼り付けられていて、呆れるほど感動的だ。



「全然聞いてなかった?」

「……?だから、何を?」



 これは気を利かせてくれているのだろうか、はたまた彼女は本当に聞いていなかったのだろうか?淋しい一人暮らしを続けてきたアスランには判らなかった。



「いや、いいんだ。ごめんね。ところで…さ、急で悪いんだけど、俺の家とか、付いてきてもらってもいい?あ、いや簡単な用事だからそんなに時間はかかんないと思うけど…」

 まるでイタズラがばれた子供のような視線でキラを見た。だが、キラはきょとんとしていた。


「家?ここじゃないの?」

 キラは、この分譲マンションが家だと思っていたらしい。



「違う違う。実家」


「あ、ご実家……って、僕なんかが行ってもいいの?それに、話すっごい急だし…」


「大したことじゃないんだけど、ただ立ってるだけでいいから」



 などと言われてキラがハイそうですかと言うはずがない。説得に少し時間を要したものの、結局彼女を実家に招待することにした。





 顔を赤く染めたままの彼女を、愛車の助手席に乗せ、車は走ってゆく。目的地に近づくに連れ、キラの顔色は正反対になっていった。



「アァアアスラ〜ンっ。また今度じゃ…ダメ?なんか僕場違いなところにいるような気がする…」


「えーでも、正門くぐったからもう少しだし」

「くぐって何分経ってるのッ!しかも車で!!!」



 キラの焦りはもっともであった。

 駅前でアスランを見たときには、何の違和感も感じなかったのだ。ちょっとぶらっと街中へ出るような服装で、ちょっとホッとしていたのに!

 今来ている場所はどう考えても「ちょっとぶらっと」系ではなかった。


 そこはまさに大豪邸!



「だってほら、玄関もうすぐだから」

 アスランの言う玄関。それはこの位置から手のひら大にしか見えなかった。到底、もうすぐなどという表現で表される距離ではない。


 だが車はキラの意志に反して走り続け、玄関の前にぴたりと付けた。





「キラ〜?キラ。ほら、着いたよ」


「だって、ここ…」

「猫ちゃんみたいに丸くならなくても。誰もキラにかみついたりしないから」



 それでも、助手席のドアを空けられ手を取られてしまっては、どうしようもなかった。

 キラが恐る恐る車を降りると上品そうな女性が迎えてくれていた。


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言い訳v:ここのレノアさんはまだまだ猫被ってますv
次回予告:本来のお見合い相手とバッタリ!

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