Please sit my side.

番外編・捨てる神拾う神<リクエスト駄文>

 

第1話 「キラ…嬉しいこと言ってくれるね〜。どうやって俺に食べられたい?」

 その日の昼、まさにアスランは不審人物だった。きょろきょろと辺りをうかがい、コソコソと誰にも見つからないように抜き足差し足で屋上へ向かう。

 昼休憩なので、堂々として構わないのだが、ここのところの事情が彼にそうさせなかった。


 誰もいないことを確認して、庭園の隅っこの草花の陰に隠れた。ほっと一息ついて電話をかける。呼び出して間もないうちに目当ての彼女は電話に出た。





「キラ、ごめん。こんな時間に電話して」

「あ、うん…いいよ。どうせヒマだし…」

 若干言い方が気になったものの、この時はさして気にもとめなかった。



「明日、平日なんだけど、時間空いてる?」


「なにかあるの?」

「デートしない?」


 キラはしばらく考えて、承諾した。





 そして翌日、キラの家の近くの小さな駅前で、彼女を拾った。


「ごめんね、色々周りがうるさくて、こんなとこになっちゃった」

「いいよ、別に。それよりも、これ」


「ん?」


 キラは小さな段ボール箱を差し出した。


「一週間くらいなら冷蔵庫で保ちそうなものばっかだけど…」

 中身は…聞かなくても判った。


「嬉しいな〜、おかず作ってくれたんだ」

「野菜とか、そんなんばっかだよ?」


 お弁当はお肉ばかりだから、と彼女ははにかんだ。



「今夜のおかずに頂いちゃっていい?」


「いいけど、一度に食べたらすぐになくなっちゃうよ〜」

 キラは笑う。間違いなく意味の解っていない彼女に向かって、アスランは言い直した。



「キラ…嬉しいこと言ってくれるね〜。どうやって俺に食べられたい?」



 その瞬間、キラが真っ赤になってアスランと視線が交錯した。


「ち…っ違うよっ!作ったご飯のことで…その……」


 あたふたする彼女が可愛くて、アスランはつい彼女をからかった。

「キスはどこからがいい?」



「〜〜〜〜〜っ!こっちだってば〜っ!もぉ、料理要らないんだったら…」


「ごめんごめん!俺が悪かったよ。とりあえず、俺の部屋に戻るね」


「…え”……」



 サッと青くなるキラに、アスランは笑いながらごめんとくり返した。



「キラからの約束のお弁当!痛まないうちにちゃんと冷蔵庫へ入れとかなくちゃね」


「うん…」





 アスランの部屋は久しぶりだった。でも、ほとんど変わっていなくて。相変わらず、寝るために帰るようなさびしさだった。


「あんま変わっていないんだ…」


「うん。ここでキラに愛をささやいた以外はね」

「ば……ッ」





 箱を開けかけてアスランはキラをふっと抱き込む。その温かい感覚にキラはドキッとした。さらには耳元で話すものだから、つい顔から湯気が出るわけで。


「俺は本気だよ。初めて見たときから、キラしか見えてないから」

「またそんなことばっかり…」



「ね、キラ…近いうちに俺と婚約しない?」



「……えっ」


「別に仕事を辞める必要はないから。本当にこれからずっと一緒にいたいなって…思うから」


 その時、抱きしめた腕の中でキラの身体が硬直したのが判った。



「辞めさせられちゃった…」

 軽い感じでキラは言う。でも、まぶたにかかる涙で、それは強がりだと判った。



「どうして…って、あの事故で長く休んだから?」


 返事の代わりに彼女の顔がこくりとなった。

「連絡は親が入れてたけど、入社早々あんなに長く休んじゃったらね」


「そんな…」

 世間は、まだまだ女の子に厳しかった。



「電話したら、すぐ来てくれって言われて……結局自主退職になっちゃった。仕方ないけどね…」


 そう言うわりには彼女は辛そうで。それが誰のせいでもないことは判っているものの、それでもちょっとした罪悪感が抜けなかった。


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言い訳v:いつもお世話になっている門倉様よりリクを頂きました!前回からの続きで、ギャグ満載。ご希望に添えていればいいな〜。
次回予告アス×キラベタストーリーシリーズ(笑)

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