第2章
第7話 「探したんだぞ!心配したんだぞ!俺がどれだけ……ッ」
それから2日後。ラスティは偶然やってきた。そして、見つけてしまった。 「キラちゃん!キラちゃんじゃないか!こんなとこにいたの?」 「あ、ラスティさん。お久しぶりです。こんなとこに来るなんて珍しいですね。なんかあったんですか?」 「ああ、頼んでた昼飯の受け取りにね。…で、いったいどうしたの?」 「え?何がですか?」 「何がじゃないよ。俺、この世の地獄状態のアスラン見てきたんだけど……」 「あ…。ご…ごめんなさい……。アスラン、びっくりしてる、よね?」 「びっくりどころか、あいつさァ、キラちゃんが誘拐された挙句ヤられてるんじゃないかって……なだめるのに俺すんげぇ苦労したんだけど……。良かったら、話してくんね?」 「誘拐…?」 キラは耳を疑う。 「昨日もあんま寝られなかったみてぇで、朝見たら顔…真っ青だったし……」 「……………。昼前になっても、いいですか?もうすぐリハビリ、終わるんで」 「ああ、構わないぜ。俺、今日は昼からだから」 キラの苦そうな笑顔が、ラスティには辛かった。 病院の屋上庭園の、小さな噴水の前で、ラスティはことのすべてを聞いた。キラの言うことも、最もだとは思う。 「……だから、やっぱり僕はアスランに会っちゃいけないと思うんです」 しかし……それでも………。 「う〜〜〜ん。キラちゃんの気持ちはわかるよ。確かにあいつ間抜けだから、周りが見えていない部分あるし。でもな、一応、安否を知らせるくらいしないとな」 「ラスティさん……」 キラは不安がる。確かに、アスランはどんな手段を駆使してでも、キラの居場所を見つけ出してくるだろう。そのかいなに抱きしめられたとき、キラはきっぱりと断りきる自信はなかった。 そのときも、自分は間違いなく流される。今この瞬間でさえ、胸が締め付けられるくらいアスランのことが好きだから。 たぶん、唇を重ねられた瞬間、ほかの事はどうでも良くなってしまうに違いない。判っているから、よけい辛かった。 「じゃねぇとな〜。アスランのヤツ、警察に届け出るって言って聞かねぇんだよ」 「……え”!?」 ラスティが、何を言い出したのかキラには理解できなかった。 ってか、コレ単なる別れ話なんですけど? 「今回のことも、キラちゃんが誘拐されたって、信じ込んで疑わねぇし…だから、ラスオペ終了後に、俺からメールだけでも入れさせてくんね?ちゃんと、キラちゃんのこと考えて打つからさ」 「ぅ…う、ん」 「警察沙汰はやっぱ、やばいだろ?しかもふたを開けてみりゃ、単なる別れ話だってぇのも…こう、な?」 交渉は、成立した。 しかし…オペ旅行最終日。ラスティとアスランの電話会談は、思いっきり決裂した。 「判ってたんなら何故もっと早く言わないんだ!」 予想通りのアスランの怒鳴り声。 「そんなこと言ったって!連絡するとお前さん、キラちゃんに電話してただろ?毎日」 「当たり前だ!探したんだぞ!心配したんだぞ!俺がどれだけ……ッ」 「…でもって、時間さえ空きゃキラちゃん迎えに帰って!とんぼ返りで病院に戻り、疲労したまま難しいオペに向かってた…そんなところじゃねぇのか!」 「その通り…だな」 アスランは苦笑し、素直に認めた。 「だから言わなかったんだよ。お前のために、一番辛かったのはキラちゃんなんだ」 「キラ…が?」 「ああ。たまには人の話も聞けよアスラン。キラちゃんな、そこんとこ…全部判ってたんだな。自分のためならすべてを簡単に捨てちまう……それが嫌で、お前さんの前から去ったんだ」 「キラが……そんな、こと?…で、キラはっ!もちろんキラは無事なんだろう?今どこにいるんだ?」 「自分で探せよ…!」 「ラスティ!」 「俺が言えるのはそこまでなんだ。キラちゃんとの約束も、守らないとなv」 「すまない。ラスティ」 「その代わり!腐れ縁でも友として俺の言うことも聞いてくれ。アスラン、帰ったらお前…寝ろよ!」 「え?」 「こんのバカたれが!キラちゃんが心配でろくに寝てねぇんだろ!そんなパンダ顔でキラちゃん迎えに行く気だったのかよ!」 「すまない…」 「何なら自分で薬処方してくっか?最高の眠り薬とすり替えておいてやるぜ」 「ッ!この、バカ!」 「最高の薬剤師の力をナメんなよ!」 「要らないよ。ありがとう、ちゃんと…寝るから」 そして、問題児は心晴れやかに帰ってきた! 第8話へ→ ****************************** 言い訳v:TVを観ながらアスラン指さして「変態〜へんた〜い!」と言うのが、日課になりつつある今日この頃←待てやコラ! 次回予告:キラ捕縛!!!!! |
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