Please sit my side.

第2章

第4話 (言わなきゃ……いけなかった、のに………)



 急にあふれてきた涙が止まらなくなった。後から後から出てきて、もうどうしようもならない。

「アスラン…」


 しかしつぶやいたところで、彼が帰ってくるわけじゃない。


 電話をかけようとして、やめて…メールもやめてキラはひざを抱える。部屋の電気は点けないまま、いつしか泣き疲れて寝込んでしまった。





 いったいキラは何時間寝込んでいたのだろうか?いや…何日?差し込んできた朝日と、強烈なけだるさで強制的に目を覚まされ、何がどうなっているのかさっぱり状況もつかめないまま、アスランと抱き合ってた。

 それもベッドの中で…しかもお互いに裸で!





「やっぱ僕…全然覚えてないんだけど、本当に何にもしてないん…だよね?アスラン……」


「ん〜〜〜。そのまま一気にシたかったんだけどね〜キラとの初エッチv」

「…ば…ッ!!!」



「でも良かった!キラ、全然覚えていないんじゃ意味なかったし。やっぱ、オトコとしてはこ〜いうことは、すべてを記憶に、しっかりくっきり永遠に刻み込んでいて欲しいし……」


 あからさまな言い様に言葉も出ない。



「そんな…っ!…は、恥ずかしいことサラッと言わないでよぉ〜」


「何で?だって一生忘れないでいて欲しいわけよ。キスは何回したのかとか、どんな口付けだったのかとか…どこをどう触ったら、すごく感じてくれて…火照る身体の熱さとか…イくときの感覚とか声とか……」



 アスランはテキパキと出勤準備をしながら恍惚と、まるで独り言のようにキラに語りかける。





「もぉ〜〜〜ぅ!何をどうしたらっそんな、エッチなセリフが次から次へと出てくるの!!」

 顔を、これ以上にはないくらいに真っ赤にさせて、キラは半ば叫ぶ。


「俺だって、絶対に忘れられない初夜にしたいもん!初めての夜が、そんな何かのついでのようなおざなりなことで済みました…なんて、冗談じゃないよ。大体、好きな相手に失礼すぎるだろう?」


 果たして、記憶にも残らないようなエッチが、失礼に当たるのかどうかは、キラにはさっぱり判らない。

 が、あまりの恥ずかしさに、言いたいことも、そして伝えなければならないことも忘れてしまう。



「し……っ知らないってば!」

「大丈夫!初めてのときもね、痛くないように、ちゃんとキラにあわせて、ゆっくりシてあげるつもりだからねv心配しないで、すべてを俺に預けてくれればいいからぁv」


「アスラン〜〜〜〜〜ッ!!!!!」



「ん〜〜?何?キラ…シたくなった?」

「ち…違うってばぁ」



「残念だなぁ…。俺はキラ相手なら、いつだって準備オーケーなのに」


「し…信じらんない……。噂で聞いてたアスランと、なんかすっごい、人物が全然違うような気がするんだけど……」


「噂?俺の?へぇ〜どんなの?」

 アスランの目がいたずら小僧のように、きらりと光る。



「今のアスランとは正反対!か…かっこよくて、優しくてちょっとクールだけど、みんなの憧れだって……」



「ふぅ〜ん……それって、こんな感じ?」


 少し首をかしげて、スッと音もなく近寄ると、キラの背中に片腕を添えて、まるで映画か何かのワンシーンのように、難なくキラの唇を奪った。

 キラは自分の口腔内で思いっきり彼を感じ、角度を変えるたびに漏れるかなり露骨な音に、顔から火が出そうな恥ずかしさをいやでも感じる。



「…………………」



 少なくとも、こんな……事あるごとにキラを奪うチャンスをうかがうような、ただのいやらしい男ではなかったと強烈に思う。

 しかし、それは結局言葉になって、口から発せられることはなかった。





「ごめんねキラ、俺はこーいう男なのv…と、それと、今日は早く行かなきゃ行けないから、車で送っていくことはできないけど、ちゃんと病院まで来るんだよ」


「え?」

 急に振られた話に、少しくらくら来た。



「忘れないで!リハビリ。ちゃんと、問題なく歩けるようにならなくっちゃ」

「あ、うん。そっか」





 ダイニングテーブルに、朝食にとサンドイッチとコーヒーパックを残したまま、アスランはなんでもなかったかのように出勤して行った。その後姿を瞳に焼き付けながら、キラはちょっとした後悔を感じる。



(言わなきゃ……いけなかった、のに………)



 なんだかんだ言っても、結局アスランに見つめられるたび、迫られるたびにドキッとする自分がいた。

 ましてや、ディープ・キスの最中なんて、ほかのことなど考えられよう筈もなく……。


 思い出すたびに恥ずかしさに頬が染まるが、その直後決まって気まずい思いがキラをさいなむ。

 そうは言ってもこれが、キラのわがままなのは、判っていた。



 ずっと続けていかれるわけがない。


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言い訳v:今すぐにでもアスに飛び込んでいきたいんだけど、躊躇するキラ……一度書いてみたかった設定ではあります。しかし良いのか?キラちゃん。アスランはあからさまに変態だぞ(笑)

次回予告:アスランパニック!腐れ縁ラスティがいい味出してるかも〜(笑)

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