第2章
第2話 「何が当たってるか、もう判ってるよね。ちゃんと感じて!」
「ネットで探そう」 「?」 「もったいないからさ、とりあえず簡単にできそうなレシピだけ選んで」 「そっか。その手があったね」 こんな、他愛のない笑顔に癒されている自分がいる。 「病院では完治したは言っても…まだ元通り歩けるようになるまでには、少し時間がかかるからね。絶対に無理しちゃダメだよ。じゃないとまた俺が君を個室に入れなきゃならなくなる」 「ねぇアスラン。ずっと不思議に思ってたんだけど、何で個室なの?こーいうのって普通4人部屋とかじゃないっけ?」 「いぃや!個室」 ハッキリキッパリ、アスランはキラに宣言した。 しかもその理由たるや、「相部屋だったら、キラとキス一つすらできないだろう?」というものだった。もうすでに、心の中で彼女を手放せなくなっていた。 「基本的なこと確認していい?病院って…病気を治したり、怪我を治したりするところじゃなかったっけ?」 こんなときに限って現実的なツッコミ。 「それ以前にキラは、俺の愛して止まない大事な恋人なんですv」 ところがキラの目の前にいる男は、もうどこにでもいるようなたんなる変態だった。キラもさすがに気づく。 「顔…にやけてるよ〜〜」 キラは笑い飛ばす。 「顔だけじゃないよ。ちゃんと下だって……」 ポカ!と、可愛い音が響いて、キラは頬を真っ赤にさせながら耳をふさいだ。 「やだ!アスランのエッチ!僕見て、いつもそんなこと考えてるの?」 「かなしいかな、これが男のサガなんだよ。色っぽい声なんか聞くともう、輸血ができそうなくらいの鼻血が……」 そう言って、院内人気ナンバーワンの敏腕医師は苦笑した。 「嘘でしょ?」 しかしキラは取り合わない。そんな、マンガか何かじゃあるまいし。 ところが。 「それだけ本気。ね、キスしよ…キラ」 「アスラン……?」 「俺とのキスは、嫌い?」 「………………。嫌いじゃ…なぃ……」 こんなときに限って、アスランは自分をゆっくりと抱きこむものだから、これから自分たちがいったい何をするのか、そのことを強烈に自覚させられて、キラはよけいに真っ赤になった。しかも。 「あ…心拍数上がってきた」 彼の医者らしいセリフに、ますます心臓が高鳴る。 「だって……」 「俺に、ちゃんとドキドキしてくれてるんだね」 「だって、アスランが…っ」 「大丈夫。ゆっくり、ゆっくりと目を閉じて……」 ふっと、医者から恋人のそれへと表情が変化した。すべての感覚神経が、キラの小さな唇に集中していく。 そして、自分が覚えているやわらかくて、温かくて、しっとりと濡れた感覚が、緩やかにキラに降ってきた。 「ん…っ」 それはすぐに深いそれへと変わる。頭がふわふわして、知らないうちにわずかに開いた空間を、アスランは見逃さなかった。 あまりの羞恥に耐え切れずに、ぎゅっと掴まれたワイシャツのすそ。その細い手を、アスランは上手に誘導してゆく。 首に絡んだ腕の精一杯さから、彼女の気持ちが手に取るように伝わってきた。間もなく急に震えだすキラの身体。 「んぅっ!ア、ス…なんかっ下…当たる……」 「うん。正直な俺の気持ちv」 他では絶対に言わないような、いけしゃあしゃあとしたセリフ。 「ゃっ」 自分に押し付けられるあまりにも生々しい感触に、キラはびくっと来て跳ね上がった。 「何が当たってるか、もう判ってるよね。ちゃんと感じて!」 それっきり、キラはしゃべることもままならなくなってしまった。時計の針はあんまり進んでいないようであったが、キラたちには永遠にでも思われた時間が過ぎ、天下のエリート医師は、顔を真っ赤にさせた恋人から、力なくぽかっと叩かれ、でれでれと鼻の下を伸ばす。 目の前のトマト顔のキラに、アスランは満足した。 「今夜はキラの手料理は望めそうにないから、外で買ってくるね」 「だ…っ誰のせいっ?」 「う〜ん?」 とぼけながらも、ついつい表情がにやけてしまうのは、仕方のないことなのだろうか? 「ごまかさないでよっ」 「ん〜だって、奥さんが積極的に誘うんだもんv」 「違うってばぁ!」 と、ここでキラはあることに気づいて、二の句が告げなくなってしまった。一方アスランは計算のうちなのだろうか?表情に余裕さえ感じられる。 「ちょっと行ってくるねv」 何気ない笑顔が、キラにはにやけているようにしか見えなかった。 「………」←赤面中。 そんな感じで、この日は更けていった。 第3話へ→ ****************************** 言い訳v:鼻血…だばだばだばだば〜〜。今気づいたんですが、鼻血って…輸血できるのかな? 次回予告:間隙を縫うようにふ〜てんの寅さんやってくる。寅さんの考えるこたぁ誰にも判りません。 |
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