【出会い編】あの頃俺たちは、若かった
<第1話> 「だってザラ先生の講義、テストさえできれば楽勝って言われて…」
その人を最初に見たのは、入学式の狂騒も治まった4月10日のことだった。だが、一番最初の第一印象なんて、アスランは全然覚えていない。 なぜならば、大きな講義室の端と端にいたのだから。それも、彼女はなにやら真剣そうにずっとうつむいてノートになにやら書き込んでいた。 一般教養科目それも理数系となると、興味のない学生が大半だろう。だから、全然気にもとめなかった。 この時アスランは26歳。やっとこの大学に助教授として幾分慣れてきた頃だった。エリート大学を卒業して、この大学に就職が決まった。 学長と同じ出身だったこともあり、この若さで早くも出世コースとうわさが高かった。背は高いし容姿は完璧、学生への対応も丁寧…そんな言葉を聞けば学生時代の悪友たちがこぞって反論するだろうが、ここにはそんな奴らはいない。 そんなこんなで、よく女子学生にもてたし、実際早くから見合いの話が絶えなかった。 しかし不思議なことにその誘いを全てひらりひらりとかわす。そんな姿がまたストイックだの何だのと、とにかく何でもうわさ話の種になっていたのだった。 「何だって、調べものくらい自分ですればいいじゃないか…」 頭をぽりぽりかきながら、不平たらたらで夏期休講中の図書館に向かって歩いていた。バルトフェルド教授め、自分なら論文くらいスラスラと書けるだろうと言って、面倒くさい資料集めを全てアスランに丸投げしたからだ。 だから、人にぶつかったことも、その後も一瞬何がどうなったのかにわかに理解ができなかった。 「あ…ぁの……」 気がついたら、女の子を一人床に組み伏せていた。 しかも左手は完全に彼女の胸をつかんでいる。 「…ぁ………」 しばらく頭が正常に働かなくて、気まずい沈黙が流れた。 これではいけないと思い、だがこんな状態で彼女にどう声をかけたらいいのか。さらにここは図書館に続く廊下。もたもたしていたら他の学生やうるさ方に見つけられる可能性が高くなる。 自分も困るが彼女も困るだろう。 「ぁの…本を落としたので、拾っても良いですか?」 そんな彼女から聞いた言葉は意外なものだった。普通、どいてください、とか、大きな声で騒がれても文句は言えない状況だったのに、だ。 アスランは慌ててその場をどき、彼女のために散乱した本を集め出す。 ……と、あることに気がついた。 「赤本……?」 そこにあるのは大学入試関係の問題集や参考書ばかり。 間違っても学生になってから必要とは思えなかった。 「……あ………ごめんなさいっ拾っていただいて…」 礼の言葉を言いかけた彼女の腕を、考えなしにつかんでいた。 「先生…?」 彼女は不思議そうな瞳でアスランを見つめてくる。 目と目があったとき、アスランはどきりとした。いつもうつむいていて顔など気にとめたことはなかったが、こんなに可愛いとは思ってもみなかった。 そんな気持ちが場違いと悟り、彼女にかける言葉を探して視線が右往左往する。そこであることに気がついた。 「黄大……」 つぶやいた途端、彼女の身体がびくりと震えたのが、つかんだ腕を通してよく判った。 「ごめんなさいっ」 またしても、言われた意味が全く理解できなかった。 この場合、どう考えても謝るのは自分のほうではないのか?彼女はいきなり、彼氏でもない男にこんなところで組み伏せられたのだから。 「いや謝るのは俺のほうだから…」 「違うんです。本当、ごめんなさい」 慌てふためく彼女にどうしていいか全く見当がつかず、つかんでいた腕から力が抜けた。 「般教で大きな講義室だし、出席もあんまり取らないから後ろでずっと内職してました」 「……………は?」 「だってザラ先生の講義、テストさえできれば楽勝って言われて…」 第2話へ→ *husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome* 言い訳v:シン×ステのきっかけをアス×キラで。よくあるパターンだけど、一度やってみたかったのさ〜。で、本編と何が違うかって?文字色が若干…。 次回予告:エロ助教授は早速学生を準備室に連れ込みます。 |
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