【本編】離婚の危機!?
<第7話> 「程々にしとかないと、何ごとも続かないよv」
これが現実だった。 アスランがあまりにも構いすぎた結果、キラは一つのことを最後までできなくなっていた。 やることは解るのに、身体が動かない。 これが特に、妊娠、出産が絡むとひどかった。疲れてくたくたにも関わらず、アスランはキラにほとんど何もさせなかった。ちょっと散歩すればすぐに休ませ、子供は自分が抱く。夕飯を買って帰るのでさえ、産後の肥立ちに影響するからと言って、キラを店のベンチから動かないようにさせた。 病院へ通うときは、講義の合間を縫ってわざわざ大学から車で送り迎え。 おかげで近所には子煩悩のうらやましい旦那さん扱いされている。けれどもその結果、一番不本意な結果を招いたのだった。 「何してても途中でふっと忘れちゃうの…。こんなんじゃ、いけないのに……」 確かに、イザークの指摘の通りだった。実際に離れてみると、キラは驚くほど何もできなくなっていた。 聡い彼女のことだから、やらなければならないことは解っている。内容も、順番もきちんと理解できている。だが、途中で…つまりアスランが手伝いだす頃から急に手が止まってしまって、それが彼女をより不安にさせているようだった。 「心配しないで。キラならすぐに思い出せるから」 「うん…」 「一つずつ確認しようね。時間かかってもいいから。まずご飯から……そうだ、シンとルナは?帰ってる?帰ってたらシンのお弁当を作っているよ」 「あっそっか!」 兄のシンは4歳。やっと、幼稚園に通い出したのだった。 「シンのお弁当をつくって、バスに乗せたら………また電話してもいい?」 「いいよ。あ、それと電話する前にちゃんとルナに朝ご飯を食べさせてからね」 「あ…忘れてた」 途端にキラはしゅんとなった。 「キラ!大丈夫。大丈夫だから。俺がいるときと同じようにすればいいから。困ったらこうして何度でも電話すればいいだろう?」 「…でも、こんなことで何度も電話するのも……」 気が引けるらしい。 いい大人がこんな小さなことができないと、笑われそうで辛いらしかった。 「キラ、俺は一日中何百回でもキラと電話していたいなv」 「アスラン…」 「俺は…やっぱキラしか愛せない男だから、キラが幸せならそれでいいんだよ」 「ぅん、ありがと…」 ホッとしたようなキラの返事で電話は切れる。 通話の切れた携帯を見つめながら、未練たらたらでキラーキラーと泣きながら頬ずりする男に、イザークは我が目を疑った。 こんなところ、間違っても他の人には見せられない。 「へたれ変態め…」 ぼそりとつぶやかれた独り言。ところが所詮目と鼻の先の距離。アスランに聞こえていないわけはない。 「うるさい!行き遅れ!」 「何だと貴様ッ!」 「お前も嫁を取ってみろってんだ!高飛車!」 「うるさいッ!間違っても貴様のような妻バカにはならんわ!」 「ふふん。何とでもほざけ!キラは俺の全てなんだ」 「あ〜そのようだな。周りのものが一切見えなくなるまでにな」 「負け犬が…」 「やかましい!貴様こそ、そこで今までの自分を反省でもしてろ!彼女の分離不安は全部貴様のせいなんだからな!構いすぎるのもいい加減にしろバカ旦那」 そしてイザークは、「診察がある」と言い、サッサとこの口げんかを一方的に終わらせていった。 そしてしばらくしたらまたキラから電話がかかる。 「アスラン、シンをバスに乗せてルナにご飯をあげたよ」 「うん、じゃ、少し休もうね」 「ダメだよアスラン」 「え?」 「先生にも言われたでしょ?そうやって僕を甘やかしちゃダメなんだ」 「キ〜ラ」 「ん?」 「やろうと思ったら頑張りすぎるくらいなのがキラの良いところだけど、程々にしとかないと、何ごとも続かないよv」 バカップルの会話はひたすら続く。 第8話へ→ *husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome* 言い訳v:スミマセン。アスvsイザ書いてて楽しいんですけど……。 次回予告:アスランに面会予約。それは意外な人物からのアポだった。 |
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