【本編】離婚の危機!?
<第3話> 「超マザコンこけし変態が何を言おうと我慢できるから」
「なぜっ!なぜお前がこんなとこにいるんだ…」 評するなら、あんぐり。 アスランは失礼にも、イザークの顔を遠慮なく指さしながら言った。 「なぜと聞くなら教えてやろう。それは俺が医者だからだへたれ」 「そんなことは聞いていない!若総白髪!」 「じゃぁ貴様は一体何をしに来たんだ腰抜けが」 「大事な女を守るため、キラに暴言を吐いた阿呆に天誅を食らわせるためだ真っ白け」 「その彼女一人を不安にさせるようなデコっぱげが、何を偉そうにさえずってる」 語尾に一言多いいきなりなケンカ。 アスランの腕に抱かれたままのキラが不安にならないわけがなかった。 「あす…らぁん……怖いよ…」 その瞬間、アスランの態度に劇的変化が訪れた。 キラを近くのベッドに腰掛けさせ、自分は彼女の前にしゃがんで彼女を見上げながら、他の女性が見たら卒倒しそうなほどの笑顔で彼女を見つめた。 「大丈夫だから。ここにあるのはこけし。人間じゃないんだ」 が、何ともひどいこの言いよう。本当にアスランはキラ以外、どうでもいいのだった。 途端にイザークに首根っこをつかまれる。 「いい態度じゃないか!ロリコン変態…」 「天下のマザコンに言われたかないね!」 再び始まる悪口雑言の応酬。初めてだった相手の態度にキラもマリューも口を出すタイミングを見失い、かなりの間眺め続けていた。 「マリューさん…この後の予約は?」 さすがに恐ろしくなって、キラは聞く。口げんかが始まってどのくらい経っただろうか?未だ診察さえ始まっていない。 こんな状況で、診てもらえるのだろうか? そして、この後の予約が入っていたらどうするのだろう? 「ないのだけが救いだったわ。昨日キラくんが来たとき、どうして診察の順番を最後にしたのか気になってたけど、こういう事だったとはね…」 マリュー・ラミアス、看護士になって初めて、医者に対して溜息をついた。 「でもさ…止めなきゃ、ダメだよね?このままほっといて、時間が経って、帰るって言うのも……」 そうだ。一体病院に何しに来たのだろう? 目の前の大げんかに、当初の目的さえ忘れそうになってきていた。 「キラくん、悪いけどお願いがあるの。彼を…あなたの旦那さんを止めてくれる?」 マリューに頼まれ、キラは目が点になった。 「僕が、ですか?」 「私たちじゃ、ジュール先生何も耳に入らないの」 「………え?」 それって、どこかで聞いたような構図………って、自分たちじゃん! 「マリューさん、それ…もしかして好きな人の言った言葉じゃないと聞いてくれない、とかそういうの…じゃ……」 「えっ!キラくん、なんで判ったの!!?」 キラは、診察室に来てまで、額に手を当てて悩むことになるとは思わなかった。 「アスラン…アスラン、こっち向いて?」 決して大きな声ではなかったが、それは再び奇跡をもたらした。 取っ組み合いに発展しかけていたケンカがパタリとやみ、アスランはキラの頬を両手で抱え込んだ。 「どうしたの?キラ…淋しくなった?」 「アスラン、ケンカはダメだよ。僕………困るよ…」 「分かったよ。ごめんねキラに辛い思いさせて。大丈夫、もうしないから」 「ジュール先生とも?」 「しないよ。キラのためだから、超マザコンこけし変態が何を言おうと我慢できるから」 近くで額に数え切れないほどの青筋を立て、こぶしをブルブル震わせて、いかにもアスランに殴りかかろうとしているジュール医師と、彼を必死に取り押さえている看護士たち(複数)の姿が確認できたが、キラはこの場の平穏のためあえて言及しなかった。 (ごめんなさいっマリューさん、そしてお兄ちゃんっ) 後で…アスランの知らないところで何かおごろう。そう固く心に決めたキラだった。 第4話へ→ *husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome* 言い訳v:イザークの呼び名をどうしようかと思いました。ちょっと、時間軸を考えると色々あって…(ペッコペコ) 次回予告:失敗に終わるアスランの周到な計画 |
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