主人不在型ストレス症候群

【本編】離婚の危機!?



<第1話> 「気…遣ってくれて、ありがと。ちゃんと…言うね」
 

 ここ最近ずっと、キラの様子がおかしかった。情緒不安定で、何をするにも不安げについて回る。いままでは、恥ずかしいからと言ってあまりしてくれなかったのに。


 だから、そんなキラがおかしいことにも気づかずに、アスランは勘違いをし続けていた。







「ただいま、キラ」


 自宅に帰ると今日も、キラは玄関で待ってくれている。すぐにでも泣き出しそうな顔になったので、アスランは慌ててキラを抱きしめた。



「大丈夫。ちゃんと帰ってきたから」

「…ぅん」


「俺はここにいるから」



「………うん…」


「辛かった?」





 やはりキラは返事をせずに泣きだしてしまった。

 泣かせるつもりはなかったのに。ぼろぼろ落ちる涙に耐えきれずに、アスランはキラの唇を塞いだ。しばらくすると少しずつキラの震えもおさまってくる。







「僕……僕…」



 何か言いたいことのありそうなキラだが、ここは玄関。



「中入って、話そうか」

 そして靴を脱いでリビングに上がった。ところが今日に限って部屋の電気は消されたまま。いつもならうるさいほど聞こえる子供たちの声もしない。



「キラ?シンとルナは?」



「……………」


「キラ?」



「実家に……遊びに行かせてる」





 絶対、何かがあったと、アスランはピンと来た。


 念願だったキラと一緒になって5年、子供も二人産まれた。兄のシンと妹のルナマリア。ちょうど二人ともやんちゃな盛りに入ってきた頃だった。



「大丈夫。言えるようになったら、ゆっくり話してごらん」


 力を込めて彼女をぎゅっと抱きしめながら、アスランはキラの口が開くのをひたすら待った。





 しばらく沈黙とすすり泣きが聞こえ、そしてあえかな声で彼女から聞こえた言葉にショックを隠しきれなかった。



「別れなさいって…言われた」



「………………ぇ…っ?」





 どういう事?

 事態が、意味が全然解らなかった。





「誰に?嫌がらせなら、キラが気にすることないのに…」


 確かに自分はもてる。世間一般より、優れているほうなんだろうな…という実感はうすうす感じてはいた。口の悪い友人たちによると、かなり鈍いと言われるが。



「先生に…お医者の先生に………」



 そのまま、言葉にならなかった。彼女は、とぎれとぎれに別れるのは嫌と言いながら、アスランにすがって泣き出した。


 いつもならスーツがシワになるのが嫌だからと言って、すぐに着替えさせるのに、そういう余裕すらないようだった。







「ねぇキラ…今から、いい?」



 そう言って、アスランはキラを誘った。彼女の怯えが止まらなくて、どうしようかと悩んだ末、彼は意外な答えを導きだした。


「…ぇ?」



「キラが、欲しいな」



「……でも、僕…」


 キラだってショックだっただろう。これほどまでに不安がっている彼女に、どこの医師がそんな追い打ちをかけるようなことを言ったのだろうか?


(判ったら、パワーハラスメントで訴えてやる!)



「心配しないで。キラを夢中にさせてあげるから」

 ここじゃなんだから…と、震える妻をベッドへ誘った。



「何も考えないで、俺だけを見ててキラ」

「うん…」


 明かりを消して、寝室で二人きりになっても、キラの震えと涙は止まりそうになくて。

 たとえ一瞬でも不安にさせたままにしたくなくて、彼女をそのまま朝まで寝させなかった。







「アスラン…」


「うん?」



「気…遣ってくれて、ありがと。ちゃんと…言うね」


第2話へ→
*husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome*husbandlesstype*stress*syndrome*
言い訳v:一度やってみたかった真っ黒背景(は?)だって、思いついたシーンがひどくシリアスだったもんで。文字色に困って結局この色に収まりましたが、読みにくい場合は反転お願いします(汗)Ctrlキーを押しながらAを押したら全部反転します(Winの場合)
次回予告:病院待合室でいちゃつく二人。

お読みいただきありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さい。