ミリアリアが想像するに、アスランの先走りすぎの話に、さすがについていけなくなったのだろう。

 キラは決してアスランを毛嫌いしているわけではない。物事には順序と限度がある、と言っているのだ。恋人関係の再構築をぶっ飛ばして、とんでもない先までレールを敷きまくったアスランに怒って、黙ってここを出ていっただろうことは想像に難くない。


 アスランの脳内では、既にキラの養父母の葬儀や相続のことまで話が進んでいる。確かにまだ中年の親世代(※現在40代)が、介護(※約30年後)の末死亡(※約50年後)した後の話までされたら、大抵の人は引く。いわんやミリアリアをや、だ。


 しかもその話をしてるアスランはまだ19歳。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第6話   彼女の事情1





 アスランの心配してやまない彼女は、見事束縛から解放され、プラントで半月ほど悠々自適の充実した暮らしを送っていたが、だんだん他人には相談できない不安を覚えだし、そしていつしか深夜の徘徊がちょくちょく目撃されるようになっていた。

 あちこちのセクションを走り回っては、パソコン画面とにらめっこし、常人ではあり得ないスピードで修正プログラムを組む、という油断もミスも出来ない仕事で疲れているはずのキラは、脳みそが8割ほどは熟睡した状態でふらふら歩いていた。



 その結果、今までのZAFTでは考えられなかった大問題が起きているのであった。とある日の被害者はシン・アスカ。夜中に寝返りが打てなかったことにも気付かずに眠っていたシンは、気だるさを抱えつつ目を覚ました。顔を上げて時計を見ると午前5時47分。二度寝する時間もないので、このまま起きるようと体を動かしたその瞬間、遂にこの部屋でも事件は起こった。


 むにゅ☆


「………?」

 にゅむん…にゅむにゅむ………。


「……ぅ…ん………?………………………ぅぁわあぁぁあああぁぁああああッ!!!!!」



 手が何かに触れて気がついた。ここにいるのは独りのハズだから、目の前にやたら柔らかく温度のある物体があるのは明らかにおかしい。おかげで寝ぼけ眼が瞬時に醒めたのは良いが、目の前の光景を見てすぐに恋人の怒りの顔を想像し………真っ青になって絶叫した。


「む……む………むっむねッ!むねっ俺………」

 そう、気がついたらシンは朝っぱらから女性の胸を揉んでいた。それもある程度育った芸術的なほどの美乳だ。



 そして、絶叫の原因を作った美乳の持ち主は、シンの大絶叫でようやく目が醒め………「ぁれ…?」と不思議そうな表情で、ほけ〜〜っとシンの顔を眺めていた。





「キ…キっキキキ…ッ!キラさぁんッッッ!!!!!」


 シンの目と鼻の先には、自分に甘えるように縋った体制のままぼーーーっと見上げている一応上官。その上官は未だなお寝ぼけた表情で、とろんとした瞬きを繰り返している。でもって、体制が体制なだけに男にはかなりキツイ<上目遣い>。


「ん〜〜〜〜〜?なぁに…???」

 しかも、甘い甘〜いおねだり口調。まるで質の悪い小悪魔だ。


「こ…っ!ここは俺の部屋ですよっ!隊長の部屋違うでしょうっ」

「いいじゃん…べつ、にー……、……………」


「……ってか、いつの間に入ってきたんですか!!?ちゃんとロックかけといたのに…」

 愚問だ。そんなもの、キラにとっては寝てたって出来る(※事実)。



 ちなみに半分以上諭すようにシンは、すぐさま<ヤマト隊長>を部屋から追い出した。シンの部屋にキラが寝ていては、イロイロまずい特にル・ナ・マ・リ・ア。そんでもって男の生理を見られるのは恥ずかしいという、歳相応の理由も大きかった。





 その後、どこからか噂を聞きつけたZAFT元紅服のエースパイロットに、しつこくからかわれるという災難までくっついてきた。


「つ〜いにお前んトコまで来ちゃったんだ?キラのヤツ……」

 ディアッカ・エ……………スマンに、食堂でぼそっと耳打ちされて、シンは慌てて釈明し、ルナマリアには内緒にしてくれと何度も頭を下げる羽目になった。



 その日、シンはディアッカから教わった新しいパスワードに変更し、見事キラの襲撃をブロックすることが出来たが、だからといって事件が止む気配はなかった。一般男性士官もダメ、ディアッカもダメ、シンもダメ…ということならターゲットが替わるだけだ。

いいわけ:やっぱラッキースケベでしょう!
次回予告:彼女の事情2



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