あと必要なものは、見事にしらばっくれるカガリの演技力だけだ。


「カガリさんの正念場です。お願いいたしますわね」

「頼むぞ、アスハ嬢」

 二人して真顔でまじまじと見られ、カガリはのけぞった。


「わ…わっ解ってるさっ」

「ホントにぃ〜〜?カガリ大丈夫〜?」

「大丈夫だっキラ!お前と私のためなんだからっ!ちゃんとやるさ!」



 筋書きでは、キラがオーブに帰るまで、彼女の行方はカガリでも掴めなかったことになっている。こんなところでアスランを騙すための下相談をしたことなど、当然内緒だ。


「カガリさん」

「何?」


「政治とは、辻褄ですわ」



 何が何でも真実を追いつめることが目的ではない。そこには時には嘘や企みも重要で、結局のところ大多数の人たちがまぁまぁ納得できるような落としどころを導くのが役割。正義感だけでは、政治は出来ない。より多くの幸福のために辻褄を合わせる、それこそが重要なのであり一番大変な作業なのである。


「ラクス…」

「ぶっちゃけて説明すれば、終わりよければ全て良し…ということですわ」

 それはつまり、そういうこと。だから生前のウズミ・ナラ・アスハはオーブの眠れる獅子なのである。



「キラが、本当に嬉しそうに幸せを語ってくれる日を、待ってますわ」

「わ…分かった!」



 オーブの国家元首とプラントの最高実力者が握手する。それで全ての段取りが終了した。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第40話   監督×(女優+俳優)×AD





「では私はキラを官舎まで送り届けてきます」

「お願いしますわね」


 イザークが恋人としてキラをエスコートして部屋を出る。その姿を見送るカガリの表情はやはり少し曇った。



「寂しいですか?」

「え?いや…そんな、ことは………」

「私の手を握ってくださる力が、少し強張ったように思いましたので」

 カガリは慌ててラクスから手を離した。


「すまない!いぃっ痛くなかったか?」

 ラクスの手は断然女の子の手だ。力仕事もしない、MSを操縦したこともない細くて柔らかいおんなのこの手だった。キラもカガリより細いが比べ物にはならない。

「いいえ、全然。そんなことよりカガリさんの恋する女の子の瞳が見られて、とっても儲けましたわ」


「儲けた…って」

 カガリは苦笑する。



「今の婚約者は、お好きですか?」

 ラクスは意味深な質問をした。ややあってカガリは観念したように答える。


「正直………格好いいなって…思った……」

 キラが太鼓判を押すような人物だから、きっとその先にはカガリの思い描くような幸せが待っているに違いない。ラクスは彼女の答えに非常に満足して、カガリとの別れを楽しんだ。



「また、会えるさ」

 政治交渉で、式典で、そしてきっと慶び事で。


「何度でもお会いしましょう」

 そう言って、かつての戦友は別れた。





 ちなみにその夜、カガリはアスランに連絡を取る。政治的交渉は済んだから自分は帰るがお前はどうするか、と。勿論予想通りアスランからはプラントに残ってもう少しキラを捜す、という返事が返ってきた。


 そして筋書き通り話は進んでいく。ZAFTでは一応ディアッカが有給休暇を取ったりして、話の辻褄を合わせた。

いいわけ:ラクスの決めぜりふが楽しかったwww
次回予告:幸せと不幸は同時にやってくる!



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