その頃ラクスは最高評議会ビルからとっととキラを伴い外出し、公用車でとある場所に急行していた。その間、


「あの、そんなに大事なものなの?急ぐの?」

 というキラのとっても真剣な質問に対し、

「ええ!とっっっても大事ですわ!世界がひっくり返るほど」

 とあながち間違いとはいえない返事をし、


「ええっ!?」

 と、あのキラ・ヤマトをして驚愕させていた。



「そしてただ一つ。キラと確認しておきたいことがあります。この事を含め絶対にアスランにバレてはならないということです」

 キラの形のいい喉がごくりと鳴った。彼女は身をきゅっと緊張させ、気を引き締める。



「うん。判ってる。その為に僕はここに来たんだから」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第4話   ラクスさま念願のおデート!





キラ(いくらラクスの頼みとは言っても、僕がZAFTの全システムの組み直しなんてするって言ったら、アスラン絶対怒るもんね。こんなのバレたらもっとややこしいことになるし…)

ラクス(ふふふ!してやりましたわアスラン!やっと、やっとあなたからキラを引っ剥がす最高のチャンスが巡ってきましたわ!あなたの好き勝手もコレで年貢の納めどきですのよ!キラは、キラはこのわたくしが癒してみせますわ)

 個人的思惑の壮大なズレはこの際気にしないことにして。



「ZAFTではけっしてキラに不憫な思いはさせませんわ!」

 などとこぶしを握るラクスの決意は、全く違った形でキラに伝わってしまい、何と二人とも会話に齟齬があること自体に全く気付くことはなかった。


「あ…う、ん。ありがとう、ラクス!」

 二人の会話に実は全く意志の疎通がなかったとか、黒ラクスの恣意に凝り固まった陰謀とか、ラクスの心の声の表現がやたらネジが飛んでいるとかいうことは、この際細かすぎることなのでスルーしておこう。いやプラントの女帝の権力の前に完全スルー決定だ(え?)





 そして着いた先、そこはプラントでも最大の規模を誇る超高級デパートの………

「あの…ラクス………?」


「さぁ!キラ、参りましょうっ!」

「本当にここが仕事に関係するの!?」


「ZAFT全職員の志気が決まると言っても過言ではありませんわ!」

「僕にはそんなに重要には思えないんだけど………」



 そう、キラの目の前に広がる風景、それは……………豪華な会議室に居並ぶ厳選有名ブランドの、ランジェリーショップのチーフ店員と各社自慢の商品たちだった。


 キラには全く意味が判らなかった。

(何でみんなアスランと同じ事を言うんだろう???)





 天然少女にはその意味が判る兆しもなかった。結局、キラが思うに勤務時間のほぼ全ての時間を割いて、プラントの女帝はキラのランジェリー選びに………熱狂的なまでの執着を見せた。

「ぁあッ迷いますわねぇ〜〜〜〜〜」


 キラにはその必要性も、何故仕事に不可欠なのかもちっとも判らない。

「ねぇラクス〜?別にデザインなんてどうでもいいじゃない?制服着たらどうせ見えないんだしさぁ。ほら、コレで良いんじゃない?」



 いい加減うんざりしていたキラが、どうでも良さそうに指し示した先には、シニアのトルソーがあった。そんな投げやりな選択は到底ラクスには受け入れるわけには行かない。這いつくばってでも譲れない戦いが、今この瞬間確実にある!


「ダメです!絶対に、なりません!!!!!!!!」



 くるりと振り向いたラクスの、鬼気迫る真剣な力強い瞳がキラを突き刺した。


「あ………ぇと……は、ぃ………?」

「下着とはッ!オンナノコの戦闘服なのです!!!!!!!!!ただの1枚とて蔑ろには出来ませんわッ」



 キラは彼女の勢いに完全に白旗を揚げた。

いいわけ:ウチのラクスならキラを簡単に食っちゃえそうです^^
次回予告:彼氏の事情



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