非公式の楽しい夕食会が済めば、<友人同士の気の置けない語らい>のためラクスはプラントの要職者と離れ、友人だけを個人的に彼女の執務室に誘う。部屋に入っての開口一発は嬉しそうなキラだった。



「ラクス〜〜ありがとう!すっごく美味しかったよっっ」

「まぁっそれは良かったですわ!」


 ラクスは遠慮なくキラをぎゅむ〜〜〜〜〜っとハグした。キラも嬉しそうに彼女を抱き返す。



「楽しかったですけれど、残念ですわね。あなたとはもう少ししか一緒にいられないのですね」

 いっそこのままプラントの私邸に住んで欲しいと本音を言ったが、キラにふるふると笑いながら首を横に振られた。


「ごめんね。アスラン待ってるから」

「小面憎いですわね、アスランが」


「プラントに来た時には必ずラクスに会いに行くよ。約束する」

 どっちみちメンテナンスや細かい修正などで、時々仕事は出来るはずだから。ラクスは笑顔でキラと離れた。



「ではこの仕事が終わったら、あなたにお貸ししていましたイザークはカガリさんに差し上げますわね」

「ぇ…ちょッ!ラクス嬢!!!」

 何という言い方をするんだ、というイザークの抗議は、笑顔で清々しいほどに無視されて。当のカガリを見ると、これまた顔が真っ赤すぎて言葉が出ないらしい。



「ねぇカガリ?結婚式決まったら僕も参列して良い?」

 とキラにニタニタされながら聞かれると、ついに全身の血が沸騰して湯気を出しながら倒れてしまった。



「キラ!カガリさんはあなたと違ってうぶなのですから、そんな意地悪をしてはいけませんよ」

「大丈夫だよぉ!僕は唯一の家族だけど、大きな式典になるし誰も気にしないよ」

 そういうことになれば、話は個人の枠内に収まるわけにはいかない。どうせ国の要人達がたくさんいるから、キラなど一番目立たないだろう。


「ふふふ。そうなれば私の隣にそっと並んでいましょうね。当日は素敵なドレスを着るのですよ」

「ぅえぇ〜〜〜っ!」

 思わぬ反撃に見事に撃沈してしまう。


「私が全部コーディネイトしますからw」

「やだっ!ラクス目つきがマジで怖いっ」



「と言うことでジュール隊長にももう一度お伺いいたしますが、この話が進めばゆくゆくは大きな話になります。それでも宜しいですね?」

 つまりは、一国の女王を娶る話になるわけで。イザークはゴクリと唾を飲みながらも、覚悟していると答えた。


「大変喜ばしい話ですわ!プラントと地球、コーディネイターとナチュラル、その両者の架け橋になる話なのですから」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第39話   帰りの新幹線は何日の何便でどこから乗るとか、そういう話





 当初から胸のうちで思惑の枠内に入っていたことは、無論隠しておいた。そして話は一転し、帰りの便の話になった。みな、まるで民間シャトルの予約をするように気軽にさくさく話を進めてゆく。



「アスランの対処さえ間違わなければ、この話はスムーズにいくはずだ」

 まずいタイミングでまずいところにしゃしゃり出られては、ややこしい事態にもなりうる。話し合いは慎重に行われた。



「じゃぁまずアスランを置いて私がオーブに帰る」

「キラの仕事が終わりましたら、わたくしとイザークさんとで個人的に友人を見送りますわ」

 使うのはエルスマン家の個人シャトル。キラがオーブに帰ったのを確認してからカガリはアスランに連絡を取る。

<キラが帰ってきたんだ。やっぱりプラントに行ってたって。アスランも早く帰ってこいよ>と。


 あとはアスランさえオーブに飛んで帰ってくれば、プラントでのトラブルの数々も解決する。手はずだ。



「ま…ディアッカのが妥当だろうな」

 クライン家のシャトルでも、ジュール家のシャトルでも、わざわざオーブに専用シャトルを飛ばす表だった理由がない。


ミリィは振ったみたいなこと言ってたけど?」

 しかも2年以上も前に。コーディネイターでもバカはバカとか言ってたっけ?



未練をたらたらさせている男が諦めきれなくて会いに行く分には、充分な理由だろ?キラ」


 筋書きは決まった。

いいわけ:具体的な対処で外堀を埋める…と。ザブタイ悩んだんですよ?悩んだんですよっ!
次回予告:監督×(女優+俳優)×AD



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