では頂きましょう、というラクスの一言で和やかかつ楽しい夕食会は始まった。キラは早速どのおかずから取り分けようかと目は爛々腕はワキワキ。


「キラ!」

「ん〜〜?なにぃ?イザーク…」

「お前…子どもじゃないんだから少しは落ち着かんか…」

 イザークの呆れ顔も何のその。


「だってイザーク!みんなと一緒にご飯食べるのって久しぶりだし、何てったってアスラン居ないんだよアスラン!」

 あの〜キラさん?



「お前は一体どういう食生活してきたんだ!」

「んーま、ぶっちゃけると食性活?アスラン、主夫宣言して色々頑張ってくれるのは良いんだけど、何というかね…最後まで手を抜かないんだよね〜」

「三度の食事にか?」


そのあともね………」

 言葉の余韻が意味深すぎて、イザークの顔色が赤くなったり青くなったりした。



「だからね〜みんなとごはんを純粋に楽しめる機会って、本っ当に貴重なんだよ」

 そういえば。三度のご飯は全て「はい、あ〜〜〜ん」か「俺が食べさせてあげる」だった(イザークの記憶によるキラの初期設定)な。



「あの話本当だったのか」

「あの話って?」

食事とキスがセットになってるという………」


「うん。あ、イザークあそこのアスパラのサラダ取ってぇ」

 この瞬間、イザークの中に微かに残っていた対等なライバルアスラン・ザラ像は、粉々にうち砕かれたという。キラに頼まれたサラダを小皿に分けてやりながら、イザークは改めてキラの顔をまじまじと見つめる。表情に憐憫の情を映して。


「ん〜?僕の義兄さんになるの嫌になった?僕はイザークが義兄さんになってくれると嬉しいんだけどな〜」


「ななななッ何故だッ!!!」



「カガリね〜男運悪いんだ。育ちがああだからやっぱ政治の道具になるでしょ?どうしても権力が欲しいだけのぼんくらに囲まれる。そういうのヤだったから…」


 あちこちの皿に目移りしながら、キラはぽそりと大事にしまっておいた本音を漏らした。イザークなら、カガリの権力を狙って近づいたりするような人間ではないと信頼して。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第37話   様々な思惑が重なり合う。上手く行けば色々なことにカタが付く





「確かに俺なら目はくらまないな」

 イザークは生粋のプラントの人間だ。オーブ国内で政治的実権を握ったところで、彼には何のメリットもない。元々プラントに対しても権力欲があるわけではないが。


「でもってアスランに対抗できる人って、きっとイザークだけだから」

 というとっても個人的な理由。


「忘れかけていたんだ。そこを言うな!」

「あはは!ごめん。でも僕から見てもイザーク格好いいよ。だったらカガリも惚れちゃうかなって、ホントは密かに期待してたよ」



 これだけ条件が揃っている人物は、他にいない。政治的プロパガンダから個人的思惑まで揃うような都合のいい人間は、だ。双子だから、カガリも喋ってみたらちょっとほろっと来るかな?とか本気で考えていた。


 だって、キラが出会ったイザーク・ジュールは、アスランから散々吹き込まれていた余計かつ悪意に満ちあふれていた情報とは、対極にあるような人物だったのだから。

 プラントの人間で出自もしっかりしている。彼女と並ばせても映えるような美男子で、政治的地位も実力もあるコーディネイター。そして自然な出会い。付き合ってみれば驚くほどフェミニストで、きっと女の子の心をくすぐるだろう。


 テーブルの向こうで、ラクスが二人の会話を盗み聞きしながらニヤニヤしているのも、分からないではなかった。





「勝手に言ってろ」

 イザークは照れ隠しにフンと言って誤魔化した。


「もぉ!プラントでの仕事終わったら、僕正念場に入るんだから!イザークはイザークでしっかりしててよねッ」

 正真正銘上の立場になって、陰ながらアスランの暴走を押さえて欲しい。



「どこからそんな知恵を吹き込まれた!」

「ラクスと喋ってたら自然に思いつくよ〜」


「畜生!」

 コッソリとラクスに不満の視線を向ければ、ラクスにくすっと笑い返され知らん顔で他の人たちとの話に集中された。





「アスランをね、もうそろそろ許してあげたいと思ってるんだ」


 キラの小声にイザークの目は見開いた。

いいわけ:やっとすれ違いフラグが降りました
次回予告:キラと仕事と立場とストーカー



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