「さ、カガリさんも到着されましたし、夕食にいたしましょう」 というのんきなラクスの言葉で、評議会ビルの展望台レストランを借り切ってのトップ食事会の封は切られた。 「…って、カガリいきなりすっごい変わってるし!」 のっけのキラの驚き。いつもの調子の<時間がないんだから薄化粧で良いだろ!どうせみんなそこまで見やしないよ>メイクではないことは確かだった。 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第36話 百戦錬磨の妹が解らないわけはないだろう |
「キャリアって感じですね」 「とても知的で素晴らしい女性に見えます。代表」 様々な褒め文句がシャワーのように降ってくる。正直化粧程度でここまで変わるとは思っていなかったカガリの方が、逆にとても驚かされた。 「イザーク!ありがとう!カガリの化粧嫌いを直してくれて」 すぐに気が付くのもキラ。 「最初、全力で抵抗された時にどうしようかと思ったぞキラ。だがなんだかんだ言って顔の作りがお前と同じだからな。俺も慣れていた分案外楽だったな」 「だよねぇ〜!散々僕を練習台にしたもんね」 作戦上。 「あッあのっキラ!私、ヘンじゃないか?」 未だ皆の注視の的になっているカガリは、気恥ずかしくて溜まらなかった。この場は政府の公共放送ではないのだから。 「え?どこが?きれいだよ?きれいっていうか………出来る女って感じかな?」 国家の代表として、どこでカメラとマイクを向けられても良いような、そんな知的美女だ。 「ねぇカガリ鏡ちゃんと見た?」 「見たけどっなんか違う人みたいで……私じゃないみたいで………」 わたわたする代表の姿を見るのはとても可愛らしかった。 「ちょうど良いからこれからイザークにメイクしてもらいなよカガリ」 「え?何で!キラは…キラはそれでいいのかよ!!?キラのこと、ラクスから色々聞いたんだ」 するとキラは、自分は無実ですとでも言うようにきょとんと小首を傾げた。 「好きじゃないなら何でまだ手ぇ繋いでんのさ?…ってかもともと僕はイザークを隠れ蓑にしてただけだし」 手を繋いでいると、指摘されて初めて気が付き慌てて離す様子を見ると、カガリの鈍感さに笑えてきた。 「こ…ッこれは………」 エスコートにしては長すぎた。 「今の今まで気付かなかったんだwww」 既にカガリの顔は絵の具のように真っ赤になっていた。 「ほらほらキラ、あんまり意地悪をなさらないでくださいまし〜。カガリさんはあなたと違って、色々まだ未経験のことが多すぎるのですから」 「ラクスも意味深だッ」 カガリの小さな抗議など完全に無視し、ラクスはイザークに目配せをし、これまたイザークは完璧にカガリを椅子にエスコートし直した。 つかつかと歩いてキラの隣の席に座ったイザークに、キラはイタズラっぽい視線を向けた。 「俺をからかうなよ!」 「からかってなんかないよ?けど、カガリと長い間喋ったんでしょ?」 「ああ。お前と違って全然スれてなかったな」 「しょうがないじゃん。僕はアスランの強制執行があったんだから!で、どうするの?」 これから。の答えを既にイザークは出していた。 「関係の醸成はこれからと言うところだ。まぁ、俺は俺でゆっくりやるさ」 キラはしばらくう〜〜〜んと唸って、彼女の中である結論を出した。 「宜しくね、将来のお兄さま」 その答えをイザークはしばらく頭の中でたどって、将来に対するそこはかとない強烈すぎる不安を自覚した。 「アスランは何とかならんのか」 例えば本当に義兄弟にならないよう努力するとか。 「アスランを制御できるのは、世界中探しても多分僕だけだよ」 そこにあるのは、キラのアスランに対する根本的な愛情だった。 |
いいわけ:やっと体制が整ってきました
次回予告:様々な思惑が重なり合う。上手く行けば色々なことにカタが付く
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