顔の距離が少しずつ離れて行くに連れ、イザークの綺麗に切りそろえられた髪が頬をくすぐる。目と鼻の先でまじまじと見るイザークは、本当に綺麗なひとだった。 「お前………ほんとうに白いんだな…」 白い肌に血管が透けて淡いさくら色に見える。そんな抜けるような美しさにカガリは知らずドキドキした。 「悪いか?」 「いや、色黒の女の子で、ゴメンな………って」 しかも肌も気にせずあの激動のさなかを駆け抜けたせいで、キラと比べたらやっぱり肌荒れや日焼けが気になると今更ながらに思った。 「俺が惚れたのは今のお前だ。人種の違いなんぞくだらんことに囚われるな」 カガリは肩をすくめて笑った。 「そっか。どうしようもないこと、なんだよな」 それは彼女の父親が言ったこと。キラがコーディネイターでカガリがナチュラルなのも、<どうしようもないこと>だ。その部分にこだわっていては視界が曇ってしまう。 「カガリ…」 視線を外さずファーストネームを大まじめに呼ばれて、改めてカチンコチンに戻った。 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第35話 金色の予約チケット |
「…ぅ………」 「今度は遠慮しないぞ」 「……………ぅん…」 2回目のキスは、身体がほてってどうしようもないくらいに濃厚なイザークの味がした。 「あぁ〜なんかヤだな…心臓がドキドキする。おかしいな私」 「それは上々」 どうやらお互いがいい雰囲気だということが、めでたく確認できてから。イザークは、おかげで化粧が乱れたなと悪びれもせず口紅を塗り直し、再び彼女をエスコートすべくその手を取った。その手に再び重ねられた手は、自分を信頼してくれる<おんなのこ>の手だった。 みなぎった自身を力に変えて少しだけ力を入れて握る。 「イザーク……」 「なに、ちょっとくらいなら構わんさ」 次に少し先に視線を向けた時、金色と桜色の見事なコントラストが目に飛び込んできた。 「忌憚のないお話が出来たようでとても嬉しいですわ」 「あなたには隠せないな」 参った、とイザークは笑う。 「あの……!?ラクス………?」 キラに悪いんじゃないか、と心配する。だがラクスにさえその心配は簡単に否定された。 「ジュール隊長とキラの共同偽装作戦は、政治的趣向と個々人の思惑が見事に合致した結果ですわ。無論、その為にお二人が本当に愛し合っていると思い込ませるように、布石を打って回ったのはわたくしですけど」 こういう時のラクスの笑顔が怖い。文字で表現するなら、ニヤリ。 「お部屋にお泊まりさせていただいたり、可能な限り同行していただいたり、お姫様だっこをしていただいたり…それは涙ぐましい努力をしていただきましたの」 「お…お………お泊まり!!?って!!!!!」 「キラがベッドで爆睡して、俺がソファで仮眠を取っただけだが何か文句があるか?」 それは苦いあの時の記憶たち。 「でもこれからはお互いの意志で仲良くしていただけるのでしょう?」 カガリはその意味がゆるゆるわかってきて、身体が熱くなった。 「申し込みに対する承諾も頂きましたから。この作戦が一段落したら正々堂々と動けます」 「え…っ!ちょ………ッ……………堂々って……」 「あら?カガリさんはご迷惑ですの!?ひょっとして苦手なタイプでしたとか?」 と訊かれればカガリに否定できるはずもなく、ただひたすらうぶな少女のように、首から上が沸騰したやかん状態になってうつむいていた。 その姿にラクスは非常にご満悦だった。そして少し歩いてみんなのいるであろうドアを開けた瞬間、彼女の手を引くイザークの気持ちに優越感が走った。 |
いいわけ:ダブルツンデレ!
次回予告:百戦錬磨の妹が解らないわけはないだろう
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