ちょうど良い時刻になり、二人が揃って部屋を出ようとした時。



「ちょッ!ちょっと待て。これはマズいんじゃないのか?」

「何がだ?」

「お前、キラと付き合ってんだろ?」

「正確にはそういう芝居をしてZAFTの職員の感情のコントロールを行っている、というのが正しいな」



 だからカガリをエスコートするのは間違っていないのだと。

「こっぱずかしいぞ…」

「ん?何だお前、婚約者でもいるのか?それなら悪かった」


「婚約者?いないいない………うーん、いやいたけどあの戦争で………」

 ユウナの情けない顛末は、そっと誤魔化しておいた。



「そうか。それは、悪いことを聞いてしまったな」

「いや、いいんだよ。婚約者っていうより、どっちかっていうと親の決めた許嫁って感じだったから、恋愛感情とかそういう以前の問題だったし」


「じゃぁ、気になる人にドキリとしたりとかは…」

「全然無かった。でも今はフリーだからそこんとこ自由になったんだけど、今度は仕事が忙しすぎてな。アッと気が付いたら白髪が生えてそうだ」

 この歳でオーブ連合首長国を背負う立場になった。恋だの彼氏だのと浮かれている余裕は全くない。



「どうするんだ?この先」


 廊下を歩きながらイザークは少し余裕を浮かべて聞く。

「どうするって……どうしようもないだろ?停戦協定引き直されたばっかだし、地球もプラントもひどい状況だし、第一そんな暇全くないよ…」



 しばらく沈黙が続いた。そして次の角を曲がればみんなと合流できるというところで………。


「俺を保険にしないか?」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第34話   狭いところに若い男女を放り込んでおきゃぁ自然にくっつくよ





「…………………は???」


「地位や権力に群がるようなバカな男に引っかかる前に、俺を隣に置いておけ。アスハ家ほどの格はないかも知れないが、良い虫除けになるだろう」


「ちょっと!お前ッいきなり何言い出すんだッッッ〜〜〜〜〜ってぇ………ぇえ!?保険って…虫除けって………………」

 大げさな態度で、真っ赤になってあわあわと大慌てするカガリの姿は、一国の代表という立場からはほど遠く、どこにでもいる普通の女の子を感じさせた。



「で………でも、だったらキラはどうするんだ!キラが悲しむようなことなら嫌だ」


「アイツは………」

 言いかけていったん言葉を切る。


「キラはなんだかんだ言ってアスランのことが好きだ」

「何で?キラだってアスランのこと避けまくってるし、今はお前といい雰囲気じゃないか!」

「いや、プラントでの仕事が終わったら、アイツは俺と別れてアスランのところに戻るだろう」



「何でそんなことが分かるんだ」

「アイツな、真剣な表情をして俺に頼んできたんだ。アスランのために避妊具の使い方を覚えたいって」


「………………………………え…………………?」



 チョット待ッテクダサイ。避妊具って…避妊具って………あの有名なアレデスカ!!?


「アスランは2世代目だがキラは1世代目のコーディネイターだ。もしつけずにやり続けていれば、予期せぬ時に子どもが出来るだろうからな。無論俺とお前がした時ほど確率は高くはないだろうが」

 この時カガリの顔は熟れすぎたトマトになっていて、まともに返事を返す余裕もなかった。



「一目惚れだ。悪かったな…」

「イ…ザーク………」


 イザークは完璧に彼女の腰を引き寄せた。

「俺のことが嫌いなら避けろ。ちょっとでも気になるなら、素直に目を閉じろ」



 長い逡巡の末、アイスブルーの射抜くような眼光に、カガリは結局目を閉じてしまった。唇が離れる頃には、イザークの背中に両手が回っていた。

いいわけ:イザークは言動に余裕があってナンボ!
次回予告:金色の予約チケット



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