「お前も標的になっているのか?」

「いや?」

 双子だから同じ…というわけではないらしい。カガリは呆れ果てた顔で答える。



「顔かたち、身体の匂い、胸の形………細かいころがキラとは違うらしい」

 もともとキラのボディラインはアスランが育ててきたもの。アスランなら、例え目が見えなくなっても全く問題ないくらいに、詳細なキラのデータが頭に入っている。



「訳がわからん!」

 カガリは座ってた椅子からがたりと立ち上がり、イザークに面と向かう。


「だろぉ!お前もそう思うだろ!落ち込んでるアイツを慰めたら、さめざめと泣きながら私の胸では萌えない、なんて言いやがったんだぞアイツ!信じられるか!!!」



 嫌なタイミングで男のサガか、イザークはついカガリの胸の辺りに視線を落としてしまう。同世代の女の子と比べて遜色ない成長を示すその胸に、顔が真っ赤になってしまった。


「おおぉおおおっ俺はっそんなこと無いと………思うぞッ!お前は……じゃない、代表は充分魅力のある人だッ」



 いつの間にか立場は逆転していて、カガリがイザークの腕をがっしと掴み、イザークはひたすらあわあわあわとなっていた。その答えに満足して気が抜けたのか、カガリは真剣な表情が和らぎ、とてもやわらかな微笑みをイザークに向けた。


「そ…っか。ありがとうな!そう言ってもらえてすっっごく嬉しい。キラ以外はへのへのもへじのかかしに見えるなんて言われて、これでも本気で落ち込んでたんだ。そう思ってくれる人もいるって判ってすごく安心した。これからは自信を持ってみんなと話が出来るよ。ありがとう。えと?ぇえ〜〜〜と……」


「イザーク・ジュールだ!」

「うん。ありがとうイザーク」



 後のイザークの述懐によれば、その笑顔は豪華な牡丹が舞っているようだったとか。


「と…とりあえず座ってくれ。アスランを見返してやるような美人にしてやる」

「ぅん…任せる」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第33話   世界はツンデレで出来ている





 そしてイザークはカガリのメイク直しに取りかかる。色々やって感じたことは、髪の色と瞳の色が違うくらいで、キラとの区別は付かないということだった。改めて思う。そういう微細な違いを一目しただけで峻別できるアスランは、どう判断してもとんでもない変態だと。



「アイツはバカだな…」

 唇に細かいラメ入りのグロスを塗りながらイザークは言う。

「バカだろ?コーディネイターのクセにさ」

「アイツはバカだ。こんな美人が目に入らないなんてな」

「よせよ!面と向かってそう言われると………本気で照れる……」



「そう思うなら鏡を見てから言うんだな」

 化粧直しぐらいで変わるか…と言いかけたカガリの口が止まった。まぁ、じっさい<直し>程度ではなく、一旦全て落とし時間と手間をかけて基礎化粧品からやり直したせいもあるのだが。



「………ちょッ!やりすぎだお前っ」

「キラもそうだと思ったが、人種のせいかやや童顔に見えてしまう。どうせカメラ写りするなら大人っぽい方が得だろう?」


 そこにはとても知的に見えるアクティブな美女が映っていた。

「そりゃまぁ…TV映り悪いって散々言われてきたけど…」

 けっして彼女のせいではないのに、だ。



「国の代表の発言とは重いもんだ。これなら言った内容に少しは重みが出るだろう」

「イザーク………」

「何だ?」


「ごめん、お前のこと勘違いしてた。ぶっきらぼうで、私のこと睨みつけてるみたいで苦手だって思ってたけど、本当は………すっっごい優しいんだな…」

 イザークは非常に満足して傲然と言い放った。

「育ちだ」



 それから二人は大笑いして、仲違い確実と目された二人は急速に距離を縮めていった。

いいわけ:最後の短いイザークのセリフが言わせたかったのです。こういう俺様系、良いね
次回予告:狭いところに若い男女を放り込んでおきゃぁ自然にくっつくよ



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