いきなりイザークはズカズカとカガリの度真ん前に立ち、彼女の両肩をぐわしと掴んだ。 「なっ何するんだッ」 「時間は取らせない。メイクを直させてくれ」 「………………………」 「見た限りそのいい加減さがどうしても我慢できない」 「いきなり何なんだよ!こっちだって色々忙しいんだから仕方ないだろ!それに、女子高生じゃあるまいし、そんなメイクだなんだって構ってられるかよ」 すると早速イザークの雷が落ちた。 「ばかものぉ!!!宇宙では地上では考えられないほどの宇宙光線が複雑に交錯しているんだぞ。プラントの外壁やシャトルの機体である程度防除していると言っても完全ではない。ましてや一国の代表として何度も往復していると、いずれは病気の原因になる。お前は国家の存続と自身の健康管理について真剣に考えられないのか!」 「そこまで大層なことじゃないだろ!」 たかだか化粧をいい加減にしていることが…だ。 「大事なことだ!オーブの代表となれば、いつどこで映像を撮られているかわからんだろう!そんなときにこんなすっぴんで出るような真似はするな!」 「誰がすっぴんで出てるか!記者がいると判ってる時にはちゃんとしている」 「判っていないから言っているんだろう!人の忠告はちゃんと聞け!全くッ双子というのは本当にそっくりだな!もぅ良いから付いてこい!」 むんずと掴んだ手の力はさすがコーディネイターと言えるもので、生半可な力で振りほどけるものではなかった。 「ちょッ離せよ!どこ連れてくんだ!痛いってッ」 「キラが使ってるパウダールームだ!」 一国の代表がズルズルと引きずられていく様を眺めながら、一人ラクスはその姿をほほえましそうに眺めていた。 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第32話 せっかく手に入れた技術、使わなくてどうするんです? |
「あの…ラクス様………」 良いんでしょうか、と狼狽する周囲に、天下のラクス・クラインは悠然たる落ち着きようであった。 「良いではありませんか。<化粧直し>くらい。むしろ楽しそうで良いですわね」 「………は、ぁ……」 「お食事までにはいささかの時間がありますし、カガリさんもわたくしとお喋りしているよりは、たまには同世代の殿方と気の置けない会話をされるのも、別に宜しいのではないですか?」 タダでさえ、連合首長国の代表として肩肘を張って生きているのだから、ちょっとくらいの息抜きも許容されるべきだろう。あわよくばいい話も聞けるかも知れない。 「出来ることならちょっと覗いてみたかったですわね」 と言うと周囲は本気で慌てたが、ラクスは全く気にすることなくうふふ〜おほほ〜と笑いながら執務室に消えていった。 でもって当然その頃。 「痛い!離せ!」 「離したら逃げるだろう」 「当たり前だッ」 「良いから座れ!」 いきなり目の前に現れた銀髪の美男子に、訳の判らないことを言われ、これまた強制的に部屋に連れ込まれ、普通の女の子なら恐怖におののくはずが……………部屋の中にさも当然といわんばかりにズラ〜〜〜〜〜ッと並べられてある化粧品の数々に、カガリは本気で引いた。 「い…いいってば。自分でやるから」 見た限り8割は使わないもしくは使い方が判らないが、とりあえずそう言って逃げ…………………られるかと思ったら無理だった。ぶっとい化粧筆を手にして腕を組んだまま青筋を立てながら睨みつけられ、カッチンカッチンに固まった。 「も………もしかして、趣味?」 この化粧品(女性向)の数々が。 「まさか!キラを変装させるって言うんで、強制的に覚えさせられただけだ」 「キラを?だからあんなに感じが変わってたのか」 「それもアスランがアプリリウスに潜入しているという情報が入ってすぐにな。アイツなら100q離れていようが見つけることが出来ると聞かされたからだ」 イザークの呆れ果てた返事を聞いて、乾いた笑いが止まらなかった。 「はは……ぁは………。確かに……そうだろうなぁ」 「事実なのか!!?」 「事実だから困ってるんじゃないか。すごく、すごくな!」 イザーク・ジュールに強烈な衝撃が走った。アスラン変態説をキラの姉は否定してくれなかった! |
いいわけ:イザカガ注意報発令中…遅いかwww
次回予告:世界はツンデレで出来ている
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