情けなさ全開のアスランの首根っこをひっつかんで、その日は大人しくホテルでふて寝させた。


 たった半日寝ただけで、俺はもう元気だいやむしろ元気すぎるからこの元気はキラでないと治まらない今すぐキラを探しに行くんだぁあああ………とわめき散らす分からず屋を拳で強制沈黙させて、カガリはラクスとのトップ会談に臨むべくプラント最高評議会ビルに向かった。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第30話   トップ密談





「あらvカガリさん!お久しぶりですわっ」

 ラクスとの面会も非常にスムーズだ。

「久しぶりだな。って言っても、遊びに来た訳じゃないから、そんなに楽しい話はないんだけどな」

「ふふ。それは勿論承知しておりますわ。でも、地球・プラントともに必要な話し合いですから、出来るだけ早いうちに両者の合意は得られなくてはなりませんわ」



 ところでと区切って、ラクスは政治の話に全く関係はないが、非常に重要な情報についてカガリに質してきた。

「アスランは元気にしておりますの?最近プラントに来るシャトル搭乗者名簿にアスランの名を見つけたものですから。キラと何かあったのかと心配しておりますの」


 ラクスの問いかけにカガリは苦笑いするしかなかった。

「アイツは、私が取っているホテルに一週間監禁してきたよ…」

「………は?」



「いやな………」

 と、カガリはあまりにもバカバカしい事実をペラペラと話し始めた。キラの家出、アスランの狂乱、そして突然のプラント行きから、路頭を彷徨っていた迷惑な迷子を保護したところまで。


「コーディネイターでもバカはバカだよ。もぉ〜どうしようもないさ」

「まぁ…この復興のどさくさで未だにザラ家の口座は凍結状態でしょうから、アスランが今までと同じ感覚でお金を使えば、当然考えられる結果ではありますが………」

「まぁオーブにいてもプラントにいても、どっちにしたって近所迷惑は変わらないわけだが、この会談が済んだらすぐに持って帰るさ」

 アスラン・ザラ、既に物扱い!


「そうして下さると大変助かりますわ。今はプラントも必死で復興のさなかですから。こんな時に足を引っ張られると困りますし」

「ま〜ぁ、持ち帰ったらアスハの私邸にでも放り込んでおくことにするよ。それまで、多分キラを捜して色んな人に迷惑を掛けるだろうけど、ごめんな」


「カガリさんの話によると、アスランの欲求不満は爆発してない方がオカシイですし、困った問題ではありますね」

 と、うふふ〜あはは〜おほほほほ〜〜〜とトップ同士で軽やかな笑いが交わされながら、いつの間にかアスランの存在は放置された。





「では早速ですけど、オーブとプラントとの正式な会談と言うことで、まずはスタッフの紹介からですわね」

 というラクスの言葉で和やかな場は、一気に政治のトップ会談へと変貌した。基本的に軍事色抜きの話し合いが行われる。

 ただその段の物資の輸送と護衛に、プラント側はZAFTが同道する可能性が高いということで、ZAFTからはイザーク・ジュールが出席している。それ以前に元々ZAFTと政治との繋がりは切り離せないものでもあるため、その辺は暗黙の了解ではある。



「とりあえず出来ること、やるべきことはたくさんあるんだが、オーブが国として協力できることをいくつか携えてきた。プラントもこの内容を充分に検討して、誠意と未来ある回答を頂きたい」

「もちろんですわ」



 そして本題の地球・プラント間の新たな協力協定の話し合いで、充実した日々は過ぎていった。その間、ネットの回線を通じて<ちょっと面倒なトラブル>がいくつか報告されたそうだが、その問題も水面下でいつの間にかもみ消された。


 だが、オーブ・プラント会談の最終日、イザークの何気ない発言がオーブの代表を動かすことになるとは、誰しも予想できなかった。



「ずっと気になっていたがキラと顔がよく似ているな。親戚か何かか?」

「カガリさんとキラは双子ですもの。似ていて当たり前ですわ」


 イザークとラクスの小さな会話のハズが。

「双子!?アスハ嬢とか!」

 と叫んだことでカガリに聞こえ、



「キラのことか?お前…もしかしてキラを知っているのか?」

 と詰め寄られたことで、イザークは地雷を踏んだことを後悔した。



「カガリさんにお願いがあります!地球の、プラントの、強いてはこの宇宙の平和と安寧と発展と人類の希望のため、今しばらくキラの存在をひた隠しにして欲しいのです」

「ここにいるのか?…無事なんだな?」

「はい」


「会わせてくれ。今すぐ」

「はいっもちろんですわ!アスランにだけ彼女の場所が不明であればいいのですから」



 カガリの真剣な思いは、拍子抜けするほど簡単に叶うこととなった。

いいわけ:ほころびです
次回予告:この秘密、知られたからにゃぁタダで帰すわけにはいかねぇな!



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