大戦の英雄、それはラクス、シン、イザーク、アスラン、カガリとAAクルーということになっている。公式にはフリーダムのパイロットは正体不詳で、人知れず野に下ったとかいう噂になっている。これは綿密に計算された情報操作のたまものだ。

 廊下をルナマリアと歩きながら、シンはどうしても気になっていることを話してしまう。


「アタックって…あの、やっぱそういうこと?」

「じゃないかな?彼女もコーディネイターだし、あのあと婚姻統制はかなり緩やかになったでしょ。あんなに可愛いんじゃ、競争率高いかもよ〜?」

「いーんだよ、俺はルナがいるし。でも確か…あの人にはオーブでアスランさんが付いてなかったっけ?」


 そう。戦後しばらくして、意を決して訪れたオーブで。

 シンとルナはメイリンと再会し、初めてキラ・ヤマトとまともに出会い、話をした。


「付いてたと思うけど?と言うよりむしろ、そりゃもうびたぁ〜〜〜〜〜〜〜って感じで………貼り付いてた、というか……」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第3話   生兵法は怪我の元





 二人はあの時の邂逅を思い出す。確かにアスランがキラに貼り付いていたような記憶がある。接着剤か何かの使用を間違ったのではないか、と思えるほどに。手つなぎは基本、二人は…というよりどちらかというと、始終アスランがキラを誰かから守ろうとしていた挙動不審さだけが記憶に残っている。


「でもその割にはキラさんあんまり嬉しくなさそうな表情だったよな?」

 いえ、ハッキリ言えば<迷惑そう>という表現が正しい。

「あの後、アスランとあまり話せてないのかな?」



 ルナが覚えているアスランは、口べたでちょっと不器用なZAFTの元エースだ。彼女から見ればアスランは出自は悪くないし、あの後オーブ政府に雇用されていることもあり、そこそこ経済力もあるだろう。若く見栄えも良いのだから、ちょっとくらい口べたでも、付き合うにはそんなに不満はないように思える。

 戦時中はちょっと…いやかなり憧れで、彼に近づけるのが嬉しかった。いくら3高であっても完璧な人間はコーディネイターといえどもいないので、ちょっとくらい欠点があっても気になるものではない。



「キラさんはどうか知らないけど、アスランはオーブ政府に雇われている訳だし、忙しいからってあまり会えていないかも知れないし。もしかして俺たちがオーブに行ったときってさ、あれって数少ない貴重なデートだったんじゃないかな…って」


 二人きりの時間を邪魔されたみたいで、ちょっとご機嫌が悪かった?

 けれどもルナマリアが妹から直接仕入れている話とはだいぶ差がある。



 どうも妹から情報によると、キラの発言で一番印象に残っているのは「うるさいよ!」「もう、あっち行っててッ」だったそうで。

 AAにいた僅かな間も、キラが逃げてアスランが追っかけていく姿は結構日常だったとかで。クルーの誰に聞いても、日常風景だから気にしないように忠告を受けたらしくて。その妹の証言すらルナマリアには信じられないのだ。


<口うるさいアスラン・ザラ>
<女を追いかけ回すアスラン・ザラ>


 どちらも全く想像できない。





「よくわかんないよ。私たちが行ったときには普通に付き合ってるのかな?ぐらいだったし、そんな細かいところまでいちいち覚えてないし…」

「…だよなぁ?」



 そして結局二人の中で出た結論は、<どうでもいい話は放置>だった。

「あ、あたし資料探しに第4書庫行ってるから、後から合流する」

「オッケ!判った、ルナ」


 あまり実りになる話もせずに、シンとルナマリアは通路の分岐道で別れた。

いいわけ:二人の関係を第三者視点から。傍目八目(笑)
次回予告:ラクスさま念願のおデート!



お読みいただきありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さい。