食費をめぐるアスランとのバカバカしくも緊迫した会話が行われた翌日、オーブの行政府を通じて正式にプラントとの会談の要請がなされた。さすがにこの会談の申し込みはすんなり受け入れられた。 「きちんとした停戦協定を結んだ。今、プラントを取り仕切っているのはラクス・クライン。そして地球もプラントも二度の戦争で経済的に疲弊しきっている。両者の復興を促進するための会談要請だ。このタイミングでプラントは受け入れざるを得ない」 国家の重鎮が並んだテーブルについて、カガリは両手を組みながらまずそう述べた。食料の援助、物資の輸送、リサイクル業者の一時的なプラントでの活動と彼らの優遇措置、早急な食料生産活動の復旧と必要物資の輸出………こちらから出来ることは山積みだ。 「例えば業務用堆肥生産システムや、家庭用生ゴミ処理機、体長30p以下の食用魚の完全人工生産システムなど、利用可能土地の少ないプラントは喉から手が出るほど欲しい機材だろうな」 だがその代わりその見返りも大きい。ナチュラルのプラントへの移動制限の解除、民間レベルでの観光の解禁、コーディネイターが独自に持つ技術供与、そしてその両者の行き来をスムーズにする最大の目標は、ナチュラルとコーディネイターの心理的垣根の根絶、それに付随する法整備………。地球が打てる手もごまんとある。 「幸か不幸かラクス・クラインとは旧知の仲。余計なご託なしに話し合いが出来る」 そしてそれは他の国家がそれらの提案をする前がいい。時期は遅くはない。 「だがそれではまたオーブだけが出し抜いたと、不満をあからさまにするものも出てきましょう」 「それが何だと言うんだ?」 そんなことは初めから判っている。 「今までだって、連合やプラントとの交渉の矢面に立ってきたのはオーブだ。オーブが動けば他の国も動く。みんな思惑はほとんど変わらないのだから」 だが、このタイミングを見計らって、あくどい儲け話をしようなどという国も出てくるだろう。彼らに手を出させないため、低利での交渉を真っ先にする必要がある。 「コーディネイターに全く頼らない生活も出来なくなった以上、今彼らを窮地に追い込むのは得策ではない………」 「その通りだ。だが、そんなことより…」 「は…何でしょう?代表」 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第29話 世界のカガリ・ユラ・アスハ |
「せっかく都合良くアスランが居ないんだぞ!こんなラッキーを無駄にして、くっだらない権力争いに腐心する気か?今のうちに出来ることは山ほどあるだろうが!」 カガリの一言はこの部屋にいる者に、最大の衝撃をもたらした。 「これを機に手を取り合うのも悪くはないと思うが?」 ニヤリと笑う。その日、いくつかの重鎮の間で過去のいくつかが水に流されたという。もっぱらの噂だ。 四日後、全世界の根回しを終えたカガリは、公式にプラントへ立った。さらにその二日後、カガリは待ち合わせ場所の公園で、人相が変わったんじゃないかというほど激ヤセした知己と再会した。 「一体何があったんだ!お前ほどの者が………」 だが目の前の友人は、カガリの真剣な思いを一刀両断にぶった切ってくれた。 「腹………減った……」 「………え……」 「こんなことじゃ主夫失格だ…。食費もきちんと管理できないなんて…」 「主夫………?」 「誓ったんだ。キラと約束したんだ。俺が主夫をするから、世界史上記録に残るほど一生ラブラブな関係でいようって…」 ちなみにカガリは半分呆れ果てて、途中からアスランの独白など完全に無視し、近くの車の中から自分用の弁当を持ってこさせた。 「………良いから食え!キラを捜すんだろ!」 アスランは涙をぶわっと溢れさせて、感謝しながらその弁当を5分で食べきった。 「ああっもう!手間のかかる奴だな。オーブが取ってるホテルにもう一部屋追加してやるから、1週間そこで待機してろ」 「一週間!?何故だ!」 「アホかお前はっ!秘匿回線の私的流用見逃してやるから一週間点滴受けろ!ちったぁ役に立つ体力つけろって言ってるこの優しさがわかんないのか!このアホーディネイター!」 この条件にアスランは簡単に陥落した! |
いいわけ:TV本編にて。せっかくオーブ政府が無償で点滴を用意してくれているんだから、最後までもらっておけば良いのに…と思ってました。ケチかな?
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