泣きながら女性のメイクとはなんたるかを学ばされているイザークを、傍目に見ているキラも、のんきに構えてはいられない身であった。 「ねぇラクス…」 「はい?」 「何でまたお出かけの準備してるの?」 さっき外出は駄目だと言ったばかりではないか? 「それがキラに最も必要だからです。アスランから隠れるのに、隠れ蓑は不要ですか?」 隠れ蓑?ナンデスカそれは。 「いや、何でも良いから正直欲しいところだけど…」 「では行って参りますわ。出来るだけ急いで行ってきますのでわたくしが帰るまで、ここでキラはゆっくりしていって下さいね」 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第27話 キラ・ヅラ |
こういう時のラクスは無駄に迫力があっていけない。いつの間にこんなスキルを覚えたというのだろう? キラは不思議に思いながらも、ラクスの椅子に座って、鬼の講義を受けているイザークをぼんやり見つめていた。悪態を付きながらも必死に苦手な分野に挑戦していこうとするイザークが、本当に格好良く見えた。彼女の知る限り、アスランとは大違いのように思える。 キラは時間の経つのも忘れてじぃっとイザーク達を眺め続けていた。そうなると当然そこへ、 「そんなに見つめ続けるあなたを見ると、わたくしがジュール隊長に嫉妬してしまいそうですわね」 と、心にちくちく響く声が割り入ってきて、キラはハッと気が付いた。 「ラクス!!!……………ぅ………???」 「はい!」 「えと………嫌な予感がするんだけど、後ろの人たちが持ってるお買い物袋の中身とか、聞いても良い…かな?」 なんだかどっと冷や汗が出た。 「はいもちろんですわ!これがあなたの新たなるつるぎです」 執務机の上に広げられたソレは………。 「……………ヅラ………」 「ウィッグとエクステと仰っては頂けませんか?」 つまりはヅラです。 「キラの最大の特徴はその大地色の美しい髪です。けれど同時にそれは敵にとっての最大の目印。今は何が何でも隠し通さねばなりません!」 そんな…。 「威張って言うことじゃないと思う」 「わたくし考えに考え抜いた上での決断ですのよ!だって…だって!染めたら髪が傷んでしまいますものッ!それは……………出来ないのです」 だから、そこまでマジになる必要はない。 「僕切っても良いよ」 すると、 「「「駄目ですッ」」」 と3種類の声が見事にハモった。かくしてその理由は、 「髪は女の命ですもの」 だった。キラは3人の勢いに完全に伸されてしまった。そうするより、他に手段はなかったのだ(超真剣ナレーション)。 「というわけで早速明日っから、これらで完ッ璧に変装していただきますvふふw」 「最後の悪魔の微笑みだぁあ〜〜〜っ」 「気にしない(のですわv)俺は毛にしない(ですわッwww)」 「そ………ソレはッ幻のZAFT名言<気毛>!!!」 ※ACサークルJUICY共用語です。 「もぉ〜ッ!どうしてみんなそんなどうでも良いことにばっかり真剣になるんだよぉ」 キラの希望はただの一滴たりとも聞き入れられなかった。 その頃………。 「見つけた!アプリリウスだ。アプリリウスシティー銀行…」 ZAFT職員の給与の振込先でもあるこの銀行の、ATMのほんの僅かなプログラムの揺れから、敵はキラの匂いをかぎ取っていた。 |
いいわけ:サブタイトル全然悩まなかったというスカッとした思い出が(笑)
次回予告:灯台もと暗し…ということわざを知っているか!
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